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この男の落ち着きっぷりを見たか【6/8 対ソフトバンク戦●】

また、タイガースの未来の扉が1つ開いた。
髙寺望夢(たかてらのぞむ)。
プロ2年目、まだ19歳の内野手が8番・セカンドで1軍デビューを果たした。

ここだけの話、初ヒットを打ったらその喜びを書いて残そうと思っていた。今日の高寺はノーヒット。けれど、予定を変えて今日は高寺のことを書こうと思う。

プロ初出場・プロ初スタメンとは思えない落ち着きっぷりが心に焼き付いて、消えてくれないのだ。

プロ初打席となる第一打席は3回表の攻撃で回ってきた。やや甘めに来た初球。高寺は強くスイングした。結果はセカンドゴロ。けれども、初球から準備ができているように思えた。とりあえず様子見、とならないところに彼の非凡さを感じた。
セカンドの守備でも何度か打球が飛んでくる場面が来たが、いずれも落ち着いて打球を捌いた。

高寺の見せ場は7回にやってきた。先発の西純矢が内野ゴロの間の1失点でしのいだおかげで、終盤も気の抜けない展開が続いた。2アウトから7番・糸井嘉男がレフトへのエンタイトルツーベースでチャンスメイク。逆境を切り開いてくれるのはいつだってこの男だ。一打同点の場面で高寺に打席が回ってきた。代打はない。

デビュー戦、ヒット1本で同点になる場面。これ以上ないチャンス。冷静になれという方が無理な話だろう。「チャンスの場面で打席に立てた」。これだけで十分だと思っていた。
ホークスのリリーフ・藤井皓哉は防御率0.39。被打率も0.85。まさに難攻不落と言って良いだろう。

藤井の初球は低めに外れた。続くストレートも少し外れた。高寺は振らない。打てる球を見極めているのだろうか。
藤井の3球目。ここで変化球を投げてきた。高寺は振らない。テレビの前で熱くなっている僕とは対象的に、高寺は冷静さを増しているようだった。
結局、藤井は高寺相手にストライクを1球も投げられなかった。高寺のプロ初出塁。ストレートのフォアボールでチャンスを拡大した。一塁に行った高寺がテレビの中継に一瞬だけ映った。表情は変わらなかった。

2軍のスタメンに高寺がいないことを知ってから1軍の試合が終わるまで、あっという間だった。高寺自身はもっと濃い時間を過ごしたに違いない。彼のことだから、これからもっと1軍で活躍する姿が見られるはずだけど、どんな選手もデビュー戦は1度しかない。そのデビュー戦を、じっくり見られて良かった。
そして彼の活躍を見るたび、デビュー戦で落ち着いてプレーし続けたその姿を、僕はきっと思い出すのだろう。

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