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ひたむきな師匠とがむしゃらな一番弟子【6/5 対日ハム戦○】

かつて甲子園を大いに湧かせたファイターズ・吉田輝星が投じたインコースのストレートに反応した。ベンチも、観客も、打った本人も入ったと確信した大山悠輔のホームラン。おとといは3ホーマー、昨日は3安打、そしてこの日は追加点となる3ラン。この1週間でホームランを5本打った。スーパーモードに入ったと言っていいだろう。タイガースの選手で打って嬉しくない選手なんて誰もいないけれど、大山が打つと何倍も嬉しい。

理由を説明したくても、上手く言葉が出てこない。とにかく、ひたむきにプレーしている大山が結果という形で報われるのが、嬉しくてたまらないのだ。

大山がチームメイトからも慕われているのは、スポーツ紙のいろんな記事で書かれている。ベンチの後輩たちはこの日のホームランを頼もしく見ていたに違いない。

小野寺暖も大山のことを慕っている選手のひとりだ。大商大から育成ドラフト1位で入団した3年目の外野手である。長打力が魅力の選手だ。去年は2軍で打ちまくったことが評価され、シーズン途中に支配下登録を勝ち取った。9月30日にはバックスクリーン横にプロ初本塁打を放っている。タイガースが育成ドラフトで指名した選手がホームランを打ったのは、この小野寺が初めてであった。この年、小野寺は2軍の首位打者に輝いている。

大山と小野寺はキャンプ前の自主トレを一緒にした仲だ。「大山さん、大山さん」と常に後ろを付いてくるような関係らしい。チームの右打者で誰よりも飛ばす大山は、小野寺にとって全てが手本になる存在なのだろう。自主トレ中は薬局で健康食品などを買い込む大山の姿に感銘を受けた。

大山が1軍に定着し始めた頃、チーム内に大山より年下の選手はあまりいなかった。大山にとって初めての師弟関係とも言えるかもしれない。謙虚で物静かなイメージの強い大山だが、自主トレを共にした小野寺はお互いをイジり合う関係だ。おもしろおかしく互いの頭を叩くシーンも目撃されている。僕が見に行った試合前の練習でも笑い合う姿が印象的だった。

小野寺が大山のことを手本にしている一方で、大山もまた小野寺のがむしゃらさに刺激を受けている。
「ガムシャラさ、泥臭さはチームの誰よりもあると思っているので、自分も忘れてはいけないなと(小野寺と)接していて思います」
年下の選手と対等に接して、自分も学ぼうという姿勢を忘れない。こういう姿が、多くの人を惹きつけてやまないのだと、僕は思う。

試合前にファーストの守備を練習する大山(右)と小野寺(左)

師匠の大山が試合の序盤にホームランを打った。弟子の小野寺に出番が回ってきたのは8回の代打。2アウトながら満塁のチャンスだ。序盤に4点あったリードはわずか1点になっていた。ダメ押し点を取りに行くべく、ベンチは小野寺の打力に託した。
1ストライク1ボールからの3球目。大山同様、インコースに入ってきたボールにバットを出した。打球は右方向へ。小野寺のこの方向の打球は伸びる。ずっと磨きをかけてきた打球だ。白球は右中間に落ちた。ランナー3人がホームを踏んだ。サードランナーの大山が手を叩いて喜んでいる。もしこの一打がなくて無得点に終わっていたら、最終回は岩崎優がマウンドに行っていたはず。2連投中の岩崎を休ませる一打にもなった。

試合後のヒーローインタビュー。ついに師匠と弟子の共演が実現した。いつもはお立ち台でもあまりしゃべらない大山だが、小野寺の話になると顔がほころんだ。皆の前で口にはしないだろうけど、内心はきっと嬉しかったはず。

「大山さんの前で打てたのでよかった」
小野寺の混じり気のないコメントに心が暖かくなった。

大山と小野寺の活躍で、チームは5連勝を飾った。交流戦も残り6試合だ。相手次第ではあるけれども、まだ交流戦優勝の可能性だって残されている。残りの試合はDH制が採用されるから小野寺が出場できるチャンスも大いにあるだろう。
師弟の絆をもっと見せてほしい。ふたりがチームを勝利に導いてくれる試合が、もっと見たい。

頑張れ大山、頑張れ小野寺!


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