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タイガース流 次の1点の取り方【5/28 対ロッテ戦○】

「先制・中押し・ダメ押し」という言葉がある。野球において試合展開を有利に進めていくには序盤の先制点、中盤の中押し点、終盤のダメ押し点が重要であることを意味している。これは両チームが点の取り合いになったときに限った話ではない。
先発が好投しているときのダメ押しは、投げているピッチャーに勇気を与える1点になり得る。1点もやれない状況で投げ続けるのと、多少余裕を持ちながら投げられるのではかかるプレッシャーも異なるだろう。だからこそ、終盤で勝っていたとしても次の1点を取りに行く。

タイガースの場合、次の得点を狙いに行ったときに頼りにするのは「足」だ。
近本光司や中野拓夢のようなレギュラー陣に対して積極的な仕掛けを敢行するのはもちろん、場合によっては「代走の切り札」を投入する。

植田海。
タイガースが何が何でも次の点を取りたいとき、彼の名前がコールされる。背番号62がベンチから颯爽と飛び出してきた。

9回表 代走に起用される植田

チーム随一の俊足に加えて、警戒されながらも確実に決める盗塁技術。行けると分かれば迷わずホームベースを狙う積極性。1番応援している選手だから贔屓目なのは否定しないが、チーム内で彼に適う選手はいないと思う。ほかにも脚の速い選手はいるが、勝負所で起用されるのは植田であるところに、チーム内の信頼の高さがうかがえる。

この日は最終回の攻撃で代走に起用された。1アウト満塁でのセカンドランナー。前の塁が詰まっているため盗塁は仕掛けられないが、1ヒットで一気に2点を狙う作戦だ。

2塁走者・大山悠輔(右)とタッチを交わす植田(左)

満塁のチャンスでバッターは糸井嘉男。得点圏打率は3割5分を超えている。チャンスの場面でこれ以上ない打者にまわってきた。
糸井は相手投手がストライクを取りに来た球を見逃さなかった。糸井は三遊間を抜けるヒットを放った。サードランナーの生還は間違いない。
だがマリーンズのレフト・荻野貴司は定位置より前に守っている。1点はやむなしでも、2塁ランナーの生還は阻止する守備だ。荻野は打球に対して猛チャージをかけてきた。2点目を阻止したい場面で、まさに想定していたような打球が来た。さあ、どうする。藤本敦士コーチは躊躇なく腕を回した。

ホーム突入を試みる植田

植田が力強く三塁ベースを踏む。ベースを蹴るようにして踏むと、そのスピードがより一層増したように見えた。植田の足はホームベースに向かっている。そのまま滑り込んだ。

あし が はやい

ボールはホームベースまで戻ってこなかった。足が速すぎてバックホームできなかった。先発する青柳晃洋を後押しする6点目が入った。
植田はそのままセカンドの守備に就き、ゲームセットの瞬間をグラウンドで迎えた。

試合の勝敗を決めるプレーではなかったけれど、勝ちを大きく引き寄せた走塁だったことは間違いない。矢野燿大監督が何度も口にしていた足を使った野球が見られて嬉しかったし、その攻撃に植田が絡んだことが、何より誇らしかった。

試合に勝利し、内野陣とタッチを交わす


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