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加治屋蓮さえいれば大丈夫だ【5/29 対ロッテ戦●】

交流戦はちょっと憂鬱な季節だ。

2005年から始まったセ・パ交流戦も2022年で17度目の開催になる。去年はセ・リーグが久しぶりに勝ち越したが、1年くらいの結果では長年染み付いた苦手意識はそう簡単に消えやしない。長いシーズンたったの18試合。そのはずなのにとてつもなく長い時間に感じる。特に福岡ソフトバンクホークス戦は気が重い。とにかく強い。この日もホームゲームでカープを迎えて、3試合で挙げた得点は7、11、8。しかも失点は2試合目に1点だけだという。

確かにホークスは怖い。けれども、それでも今年は対戦するのが楽しみだ。

なぜなら、今年は加治屋蓮が絶好調だから。

当時ホークスに在籍していた加治屋は2018年にリーグ最多の72試合に登板して31ホールドを記録している。オールスターにも出場した。高身長で角度のある良いボールを投げているなと思った。だが2年後の2020年はわずか6試合のみ登板の登板に終わった。
加治屋は、ホークスから戦力外通告を受けた。ドラフト1位の選手が活躍してからわずか2年でクビ。恐ろしい世界だと思った。

トライアウトが終わって戦力外通告を受けた選手が獲得できるようになってからわずか数日後に、タイガースが加治屋を獲得した(加治屋自身はトライアウト不参加)。

2022年、加治屋は開幕を2軍で迎えた。だが、転機はいつも突然に訪れるもの。チーム内で新型コロナウイルスの感染者が複数人出たことで、急きょ1軍に呼ばれた。4月13日の対ドラゴンズ戦では0対0で迎えた9回にリリーフで登板。ここで加治屋は三者連続三振の好投を見せた。この日のピッチングが評価されて、今はリリーフ陣の一角を担っている。

この日も先発・伊藤将司の後を受けて2番手で登板した。3点ビハインドとはいえ、ここで失点したら勝ちはかなり遠のくであろう展開だった。

打順は1番・荻野貴司から。初球はボールと宣告されたが、続いて投じたカットボールをうまく引っかけさせた。サードゴロ。
2番の角中勝也には落差の大きいフォークボールで空振り三振を奪った。3番の中村奨吾にはファウルでかわされるも、最後はカットボールを投げ込んだ。中村のバットが空を切った。外低めに投じられたナイスボール。全く心配いらなかった。以前見たときと比べて、表情にも自信のようなものが感じられた。
今日の登板を経て、加治屋の防御率は0.79になった。5月はまだ失点がない。その他の数字も、ホークスで良かった頃と比較しても良化しているものばかりだ。

正直に言って、タイガースファンはまだ加治屋と思い出をあまり共有できていない。強いて言うなら、昨年の開幕戦でJ.サンズの決勝弾を呼び込んだナイスリリーフだろうか。彼に抑えられた、彼を打ったみたいな話はタイガースファンよりホークスをはじめとするパ・リーグのチームのファンのほうがたくさん持っているはず。
そんなパ・リーグのファンが、今の加治屋を見たらどう思うだろうか。
驚くだろうか、ホークスファンは喜んでくれるだろうか、それとも悔しがるのだろうか。想像するだけでワクワクしてしまう。

ホークスとタイガースが対戦するのは6月7日~9日の3日間(PayPayドーム)。このまま順調にいけばこれまで通り加治屋はブルペンでスタンバイするだろう。同じくホークスから移籍した渡邊雄大も出番があるかもしれない。

戦力外通告を受けた選手は実力がない烙印を押されたわけじゃない。たまたまそのチームで輝ける場がなかった、たまたまそのチームで戦力になれるチャンスがなかった。ただそれだけのことだと思っている。だって、加治屋は今タイガースでチームに欠かせない戦力となっているのだから。

昨年の交流戦のときは2軍にいて出番はなかった。けれども今年は違う。
さあ最高に輝いているところ、パ・リーグのみんなに見せてやろうぜ。


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