燃える雨雲|ショートショート|408字
その夜、森は燃え広がり続けていた。
大地に落下した隕石によって起きた火種はぐんぐんと成長し、いまや森の生物をすべて焼き払わんという勢いにまで成長していた。
その上空に浮かぶ1つの雨雲。
その雨雲から滴る雨は、森に生ける生物達の糧となっていたが、燃え広がる炎の勢いを止めるほどの力は無いように思われた。事実、火は燃え広がるばかりだ。
しかし、その雨雲が雷鳴を発すると、それが合図であったかのように遠くにある雨雲がどんどんと集まってきた。
それらは徐々に1つの雨雲へと成長し、森全体を影で覆い尽くさんばかりの大きさとなって、滝のような大量の雨を大地へと降らし続けた。
そして、しばらくのせめぎあいの末、燃え広がる炎は完全に消え去った。
*
翌朝、森の生物たちが目を覚ます頃、あれほど巨大であった雨雲はなくなっていた。
代わりに、ぽつりと浮かぶ小さな白い雲。
朝の日差しが照らす大地に、一時の柔らかな雨を降らした後、その雲は静かに消え去った。
Special Thanks.
爪毛さんのお題を頂きました。
Inspired.
あとがき
こういう作品はあとがきを書きづらいですね……J.D.サリンジャーが解説を書きたがらない気持ちが少しだけ分かったような気がします。
『白夜行』は”ノワール”としてよく知られていますが、登場人物の心理描写がほとんど無いというのも非常に特徴的な作品です。はい。
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