バズる実家|ショートショート|402字
実家がバズった。正確には実家の写真だが。
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父がデザイン・建築した実家はアートとも言うべき外観をしていた。
SNSなどが存在しない子供時代においては、近所の話題程度にしかならなかったが、旅行者が物珍しさから撮影した写真がSNSにアップされると、それは瞬く間に話題に……つまりバズった。
このことがキッカケで、アーティストとして活動していた父はちょっとした有名人となったが、ある日に書き込まれた「○○のパクリではないか?」という投稿によって事態は一転、炎上の一途を辿ることになる。
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数週間後、家は全焼した。警察によれば放火とのことだった。
父に電話すると「本当に炎上するとはな」などと冗談を飛ばしていた。たぶん父は知っていたのだろう。
嫉妬という小さな火種は父の作品を燃やし尽くし、帰る場所を失った私は罪悪感という業火に焼かれ続けた。
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現在、私は実家の再建を進めている。
それが父の作品のようにならないと理解しつつも。
あとがき
皆様は『イヤミス』って言葉をご存知でしょうか。
私は湊かなえ氏の『告白』を読んだことがありますが、まぁ後味が良い作品とはとても言えなかったように記憶しています。
しかし、そのような読後感にも関わらず、何か考えさせられるようなストーリー・描写は私の心を引きつけるものがあり、私はこの作品を読んでよかったという感想を抱いたのを今でも覚えています。
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では、ショートショートで後味の悪い読後感の作品を書いてみたらどうなるだろう、というのが本作の試みでした。
すごく後味悪いですよね……いつものくだらない面白いショートショートっぽいものを期待されて読んで下さった方には本当に申し訳ありません。
もし今後、同じようなテイストの作品を書くことがあれば、その時はタイトルなどで分かるようにしたいと思っています。
Special Thanks!
爪毛さんのキーワードの組み合わせから頂きました(こんな作品で本当にすみません)。
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