『借金って素晴らしい』

 20代、30代と、なんとなく歳を重ねて行って先日36回目の誕生日が来た。

社会人に成り立ての頃は30代にもなればお金にも余裕ができて、仕事でも怒られることがなくて何の心配も無く好きな事を好きなだけしてるんだろうなんて夢のような事を考えて…
いや、明らかに無計画な夢を見ていた。

でもそんなに人生は甘くない。いざ蓋を開けて見ればお金の心配をしない日は無いし、なんやかんやのローンの支払いに追われて生きている。

そんな時いつも思い出すエピソードがある。昔理学療法士としてリハビリを担当した80代の男性の話だ。

「借金っていいよな。借金してる人生の方が素晴らしいと思うんだ。」

と、唐突に言われた事がある。

どう考えても借りなくて済むなら借りない方がいいじゃないかと思いつつも、

「そうですね。お金が借りれるという事は信用があるって事ですからね!」

とりあえずその時に思いついた精一杯の返答をしてみた。

「そういう事じゃないんだよ。死ぬ時の話だよ。」その方はその言葉の意味を教えてくれた。

「例えば100万円貯金して死んだとしよう。真面目に働いてせっかく貯めたとしても使わずに死んだら100万円分タダ働きになるだろ?でも逆に100万円借金して死んだら、本来持っていないはずの100万円を好き勝手に使えたってことだ。最後にちょっと得した気分になる。」

「つまり、人間いつ死ぬか分からないんだから、常に借金しているぐらいの人生の方がいいんじゃないかってこと!わかる?」

そのやりとりから10年は経ったと思う。

僕がお金に困ってそうで元気付けてくれたのか、若者は大抵お金無いんだから気にするなと励ましてくれていたのか真意はわからない。

でもこんな事を言ってくれる人生の大先輩に偶然出会えたおかげで、お金に困っても悪い人生だと思った事は一度もない。

何がきっかけでこの話になったかは全く覚えてないけど本当にいい話をしてくれたもんだ。おかげで今でも僕は楽しく生きていけてる。





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