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ビジネスケアラーが介護者の4割、2030年試算 経済損失は9兆円・・・という記事の紹介です。

ビジネスケアラーによる経済損失が約9兆円になる、という試算はしばらく前から出ていたので、ここにきて数字が変わっていないのを見るとほぼほぼ間違いない額なんだろうと思うのですが、その原因が介護によるモノであるという事は非常に深刻ですね。

恐らく在宅で介護と仕事を両立している方の事だと思うのですが、それを支える訪問介護については今年度の報酬改定で基本報酬が引き下げられてしまったので経営体力が低下しており、更に5月最新の統計では過去最高の事業倒産件数を更新しているという状況です。
また、以前から訪問介護の職員に平均年齢は業界トップでして・・・

去年の記事の引用ですが、2022年の集計結果でこの状態ですので、この数字から更に2歳ほど引きあがっているのが現状と思います。

訪問介護のホームヘルパーの平均年齢は、各職種の中で最も高い54.4歳。前回調査より0.3ポイント上がっていた。ヘルパーは60歳以上が37.6%。この割合は前回調査から更に0.6ポイント高まった。依然として高齢化が進んでいることが改めて浮き彫りになった形だ。

ヘルパーの年齢層をみると、「60歳以上65歳未満」が13.2%で最多。次いで「55歳以上60歳未満」が12.3%と多く、「70歳以上」も12.2%を占めていた。今後、年齢を重ねてリタイアするヘルパーが一段と増えていくとみられる。

この調査は昨年の10月に実施されたもので、全国1万8000の介護施設・事業所が対象。8809の介護施設・事業所から有効な回答を得ている。

■ ケアマネは4人に1人が60歳以上

平均年齢がヘルパーの次に高いのは、52.7歳のケアマネジャー。51.8歳だった前回調査より0.9ポイント上がっていた。ケアマネのうち60歳以上は25.5%。22.3%だった前回から3.2ポイント上がって4人に1人となっており、こちらも高齢化が進んでいることが分かった。

JOINT
進むヘルパーの高齢化 4割弱が60歳以上 平均年齢は54.4歳に 最新調査 / 2022年8月25日

もうそろそろ平均年齢で60歳に届きそうな訪問介護の業界ですが、内訳をみるとかなりヤバい状況だというのがわかります。

2年前の段階で60歳以上の割合が37.6%です。ほぼ4割の方が60歳以上。
既に2年が経過していますので、業界全体の4割のヘルパーが5年以内で定年退職を迎えるという事です。65歳以上を高齢者という呼び方をするのであれば、現状のヘルパー業界の約4割の方が5年以内に高齢者になる、という事です。

在宅介護の現場を支えるヘルパーの状況がこういう状況の上で、更に問題なのがケアマネジャーの平均年齢も高いという事です。
ケアマネさんも4人に一人が60歳以上という事で、この5年以内に定年を迎え高齢者と呼ばれるようになるケアマネさんが4人に一人は居ますよ、という事です。

ケアマネさんがいないとサービスに繋がりませんので、介護を受けたくても受けられない人が増えます。それは介護難民が増える=日本の経済をささえる現役世代がビジネスケアラーになる、という事だと思います。

現状で約9兆円の損失が予測されていますが、この急激な事業所と職員が減っていく状況を考えると、かなり厳しい状況になるのではないかと思います。

ヤングケアラーの記事でも書きましたが、誰もが自分の人生の選択を優先していいはずなので、それが可能にできるためにも、本当ならこれから高齢者が増えていくこの時期に、訪問介護やケアマネジャーという職種の職員が増えていくような流れになっていないとダメだと思うのですが、日本の政治は介護保険制度が出来る前から社会保障費用の削減を掲げて走ってきた上にずっと経済は停滞してきたわけで、どんどんと社会保障に関する施策やサービスについては後回しというか手を付けないで来たような感じです。

結局、あれもダメこれもダメで問題を先延ばしにしてきた結果、まわりまわって本当なら経済を伸ばしたいのに働き手が社会保障制度の穴を埋める羽目になって万度に経済を回せなくなってしまうという状況です。

損失が9兆円みこまれるのであれば、1兆円でも在宅介護が充実して介護が原因のビジネスケアラーが生まれないように投資すればいいと思うのですが・・・。

さて、遅くなりましたが本題の記事はこちらです。

働きながら介護する「ビジネスケアラー」が増えるなか、仕事と介護の両立が課題になっている。経済産業省の試算では、家族を介護する人は2020年の678万人から30年には833万人まで増え、そのうち約4割の318万人がビジネスケアラーだと予測する。

朝日新聞デジタル

家族を介護する人は、この10年で150万人くらい増えるという事ですね。
このうちの4割の方が仕事と介護を両立している方という事になります。

介護保険制度って最初の導入の時期は、介護の社会化、とか言ってませんでしたっけ?

全然そうなってないからビジネスケアラーが増えているという事ですよね。

“介護の社会化”と“自立支援”を指針にして

介護サービス提供体制の構築にあたり、2つの指針を掲げました。介護を社会化する(社会的に介護を支える)ことと、自立支援です。経済的な背景など関係なく誰もが要介護になる可能性があるということを前提にして、介護サービスは普遍的なものとして提供されなければいけない。家族が要介護になったとしても、本人や家族がそれまでの生活を継続できるようにしなければならない。その意味で、介護とは医療と同じように“人の生活を支えるもの”であり、本人ができるだけ自立した生活を送れるような支援が必要だと考えました。

必要なときに必要な介護サービスを受けられるよう制度的に保障するために、措置制度ではなく、国民自らが拠出した財源を元に権利として介護サービスを受けられる社会保障としての介護保険制度が必要ということになったのです。

慢性期.com

”介護サービスは普遍的なものとして提供されなければいけない。家族が要介護になったとしても、本人や家族がそれまでの生活を継続できるようにしなければならない。”

”必要なときに必要な介護サービスを受けられるよう制度的に保障するために、措置制度ではなく、国民自らが拠出した財源を元に権利として介護サービスを受けられる社会保障としての介護保険制度が必要ということになったのです。”

もしかしたら措置制度の方が必要な時に必要なサービスを受けれたかもしれませんね。現状ではお金がないと介護サービスは受けれません。1割負担であっても支払えないからサービスを使用したくても使用できない方もおられます。
要介護になっても本人や家族がそれまでの生活を継続できるようにしなければならない、といった介護保険制度の制度設計はどこにいったのか。
根本的な矛盾が発生していて、それが現実に大きな問題として横たわっている。政治的にも経済的にも避けて通れないはずの問題なのにこれまで放置されてきた事は大きな問題だと思います。

両立が困難になれば、従業員の業務効率の低下や介護離職につながり、経済損失は大きい。30年の損失額は約9・2兆円に上り、その8割強が労働生産性の損失によるものだ。

朝日新聞デジタル

これもそうなんですけど、今になって分かって来た事じゃなくて、ずっと前から分かってた事なんですよね。
こんなに大事な事なのに何で放置できるのか。
他に政治的に大事な事があるのでしょうけど、みすみす9兆円もの損失があるのを放置できるような他の課題ってなんなのかと思うのと、この問題は経済損失というレベルの話だけではなくて、何百万人もの日本国民の人生の質に直結している内容なので、本当なら最優先で検討が必要な課題だったと思うんですけどね。

同省は対策に乗り出し、有識者会議の議論を踏まえて今年3月、仕事と介護の両立推進に向けた経営者向けの指針を公表した。これまで政府は、育児・介護休業法に基づく支援をしてきたが、指針では経営者に両立しやすい環境づくりを促している。

朝日新聞デジタル

ようやく動き出したと思ったら経営者に何とかしてね、という事なので、何で?と思ってしまいましたが、本気でズレてるのかなぁと思いました。

ビジネスケアラーによる経済損失って、そのビジネスマンが家族の介護などで疲弊して効率が悪くなったり最悪離職したりして労働生産性を高められないから発生する損失だと思うんですけど、介護休業とかの制度を拡充したとして労働生産性って上がるもんですかね。
結局、家族の介護で疲弊してしまって再起不能になる可能性だったありますし、介護が終わったとおもったら自分も高齢者でした、みたいな状況だってあるはずです。

介護期間は平均5年1カ月

介護を行った期間(現在介護を行っている人は、介護を始めてからの経過期間)は平均61.1カ月(5年1カ月)になりました。4年を超えて介護した人も約5割となっています。

生命保険文化センター

平均ですが介護を行う期間は約5年です。
この期間を、介護が必要になっても今まで通り仕事に行けるし今まで通りやりたい事ができる人生を送れるようにするために出来たのが介護保険制度ではなかったのか・・・。

狙いは、介護離職など事業運営のリスク管理を行う観点から、両立問題を人材戦略の一部として取り組む重要性を共有することなどがある。指針では、両立支援にあたる担当役員の設置など経営陣の積極的な関与▽全社調査といった実態の把握や目標設定▽研修の実施や相談窓口の明示による情報発信――などの対応を企業に求めている。(片田貴也)

朝日新聞デジタル

両立支援は大いに結構ですが、両立できるには利用できるサービスがないと両立できないわけで、その辺りのマネジメントって大丈夫なんでしょうか。

介護って目の前で人が困っていて、場合によっては命の危険が予想される事だってあるわけで、サービスがないから・対応できる人がいないからしばらくは無理ですね・・・で済まされないケースが多いんですよ。だからビジネスケアラーが増えてるんじゃないでしょうか、だから介護離職が増えてるんじゃないでしょうか。

こんなんじゃ経済損失は9兆円どころの話じゃないなぁ・・・なんて思ってしまった内容でした。

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