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「給与を上げれば、社員は満足する」は本当か? 企業が知るべき“参照点依存性”のカラクリ・・・という記事の紹介です。

面白そうなタイトルだったので思わずクリックしました。
これまでいろいろ勉強してきて、処遇の改善はもちろん重要ですが、職員の働く環境全般の改善も従業員満足度に非常に高い効果がある事を学びましたが、お給料さえあげておけば大丈夫だろう・・・なんていう思いもなかったわけではないので、非常に興味のある内容でした。

それに、僕自身がお給料が他の介護職と比べて高い状態で自分で希望し異動して手取りで10万円以上低くなったり、徐々にまた評価を得て職位もあがってそれなりの年収をもらうようになってから起業を考えたりと、そういえば僕自身が仕事に対して満足できているかどうかは、手取りでは評価してなかったな・・・と思いました。

たとえば異動する前の部署では、僕が介護職として初めての採用だったので専門職のお給料を頂いていました。
その時の職場で専門職は看護師しかいませんでしたので、なんと経験ゼロの介護職が看護師と同じお給料をもらっていたわけです。

これはね、本当にこんなにもらえるんなら頑張ろう!となりますよ。
なので、お給料分人は頑張る、というのは僕自身の実感であります。

ただ、それにも限度があって、本当に自分のやりたい事が出来なかったり、過重労働や理不尽な言動には耐えられません。
看護師さんの離職率だって高いですから、単にお給料が一定額以上あれば職員は満足して定着する・・・なんてことも無い事も僕自身の実感です。

なので、一定水準以上のお給料と働きやすい職場づくりというのは、セットで効果が初めて現れるのではないかとも思っています。
そこで大事なのが、適切な評価ですね。

僕は幸いにも『こんなにお給料がもらえてうれしい、頑張らないと!』と思いましたが、人間もいろいろですので、楽してお給料もらえればいいや、とか、そういう向上心や自己研鑽の意識がなかったりする職員については、しっかりと評価した上で指導する必要がありますし、逆に頑張っている職員にもきちんと評価をして、その頑張りや成果に応じたお給料を支給するというのも重要だと思います。

そのあたりの評価基準が本当に難しいんですよね。
介護って生活そのものですから、何をしたら正解だ、というのはほとんどなくて、本人が希望する事を実現するのは当然あるんですが、それが本人のためにならない事だったら提供できなかったりするんですけど、それで本人が生きる意欲を失ったり人生がつまらなくなる事であれば、本当によくよく考えて悩んで本人ともいっぱいやり取りをした上で判断しないといけない事も多いので、その場その場での評価が出来ないケースが多いです。

ただ、個人的には利用者さんと一緒に居て笑顔にできる職員は評価したいと思っていますし、実際に評価しています。
人事やお給料を上げたりする権限がないので、言葉でしか評価できませんけど・・・。

給与を上げれば、従業員は満足する──。

一見、自明のことのように思えますが、行動経済学に詳しい博報堂コンサルティング 執行役員/HR Design Lab.代表の楠本和矢氏は、この認識では不十分だと言います。

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やはりこれだけでは不十分という事のようです。

「参照点依存性」という心理をご存じでしょうか。人間は常に何かを 「基準(参照点)」として、価値を測っているというものです。

経済的な豊かさを例に考えてみます。経済的に豊かになり、今までできなかったことが実現できたり、購入できなかったものが買えたりすれば、その瞬間の幸福度は上がるでしょう。しかし、それはすぐに本人にとっての当たり前の水準となります。幸福度は長く継続はせず、いずれ消失してしまいます。

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参照点依存症は初めて聞きました。
何かの基準と現状を観測して価値を判断しているという事のようです。

高額でなかなか買えないような商品を買えたら本当にうれしいですもんね。
お給料が増えたとしても、それが普通になってしまうと、その額で満足できなくなる、という事でしょうか。

という事は、どんどん昇給できる環境があれば満足し続けられるという事になりますね。

これって、昭和の雇用形態そのままじゃないですか・・・。
高度経済成長と合わせて、雇用形態もマッチしていたのでどんどん日本が元気になっていったのかもしれませんね。

そうであれば、この人口が減り続けていて、経済もなかなか上向きにならない真逆の状態の現在で何をどうすればよいのでしょう・・・。

報酬が増えれば、業務へのモチベーションや組織とのエンゲージメントが強化されるのでしょうか。筆者は前述した参照点依存性の観点から、そうではないと考えています。報酬の増加は、持続的に効果をもたらすものにはならならないでしょう。

人的資本経営とは、概要としては「人を企業にとっての資本として捉え、重要視する経営」のことですが、いくら(一時的に報酬を増やして)インセンティブを積んだとしても、それがそのまま「資本」としてチャージされるかといえば難しいと考えます。

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人的資本経営というのは最近よく目にするようになりました。
人財という言葉も昔からありましたし、僕自身、会議や研修で使う内容で人材と記載するときには、人財と記すようにしてきました。

経営の話をどうしてもしないといけない立場なので、人件費の話も出さなくてはなりませんが、人件費はただの経費ではなくてみんなに投資しているんだよ、という意図を伝えたいから使っています。

それが伝わっているかどうかは不明ですが、数十名に一人くらいはきちんとその投資に応えてくれるような働き方をしてくれているように思います。

記事でも指摘されているとおりですが、職員に投資したとしてもそれが会社の力になっているか、投資した以上の利益を出せているかは本当に微妙です。

特に、今僕が担当している拠点は結構な赤字ですので、単純に考えると赤字が出ている時点で投資を回収できていない状態です。
これをどう回収していくかの道筋を考えるのが経営者の役割かとは思っています。

そこで課題になるのが、スキルアップも自己研鑽もしていない、何なら身体が資本の介護現場の介護職が身体も鍛えていないという状況があります。

ノーリフトの政策が浸透しつつありますが、現状としてリフトの整備やリフトがあったとしても活用できない介護職、スライディングシートの活用や整備の遅れや、やはりそういう道具を活用する頭に切り替わっていない現場職員が一定数おりますので、この現状では自分の身体を守るためにも一定の運動や体幹を鍛える事が重要です。専門家なのですから。

少なくとも、1日1回でもいいのでプランクを3分とかするだけでも違ってくると思いますが、そういう提案をしても、10人中1人が継続できれば大成功な感じがします。(僕自身も毎日できてないので偉そうには言えませんけど・・・)

こういう現場職員の意識も含めて、いろいろと変えていかないといけない事は多々あるのですが、職員を会社の財産として見たときに、やはり資産価値を高めるには職員一人一人の質の向上は必須です。
それが出来るかできないかが死活問題になっているのではないかと思います。

その職を離れ「相場に基づく報酬」を目の当たりにしたときに、はじめて以前の経済的インセンティブの価値に気付くことになるのですが 、それを現職の社員に伝えても意味はないでしょう。

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これは本当によくあります。
特に転職して同業他社に移った職員からよく聞くのは、前の職場の方が働きやすかった・・・という意見です。

ただ、これは残念な事に、僕が所属しているこの会社が全体として”ぬるい”からだと思っています。
働きやすさも確かにありますが、個人的には社会人としてもっとこうあるべき、という基本の所に甘さというか緩さがあって、それを”ぬるい”と表現したのですが、そういうのが総じて会社全体で業績が悪化している原因の一つになっているのではないかと思います。

なので、転職してこっちの職場の方が良かった、と聞くたびに、こっちのほうが楽だった、としか聞こえないので、それが本当に良いのか悪いのか判断に苦しみます。

個人的に感じるのは、自己研鑽をしっかりしていて努力できて、もっと高いスキルを身につけたいと考えて行動して仕事ができている職員の多くが転職しています。
そして、そういう職員から、上記のような”愚痴”は聞きません。

ですので、やはりそういう事だよな・・・とは思っています。

「最低評価のボーナス200万円」と「最高評価の100万円」 どちらがモチベーションを上げるか
ここで、参照点依存性の話に戻します。「報酬」と「成果」の関係で、二つのケースを比較してみましょう。

評価が最下位と言われて、インセンティブ(ボーナス)が200万円
評価が最高位と言われて、インセンティブ(ボーナス)が100万円

さて、どちらのほうが幸福度を感じ、また持続的なモチベーションやエンゲージメントにつながるでしょうか。人は、得てして絶対評価が苦手であり、何かを「参照点」として価値を評価しようとすることは、先述した通りです。

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これ、僕自身の場合は、最高評価の100万円の方が心情的にはうれしいです。
ただ、最下位でも200万円は欲しいですよね。
いやぁ、実際にこんな高額のボーナスはもらった事がないので実感がわきませんが、100万円の差は介護職にとってはかなり大きいので、この例えだと多くの人が200万のほうが嬉しいと回答しそうですね。

このケースの場合、何が分かりやすい参照点になるかというと、間違いなく、相対的に位置付けられる「評価」でしょう。そしてボーナス額は、それの可視的な「証」として認識します。仮に、ボーナスの額だけ知らされても、参照点が曖昧なので、自分の中でその価値を評価しにくいのです。

評価だけで何も見返りがないと、いくら頑張っても、それを単に搾取されているという意識となり、組織に対する信頼が失われることは間違いありません。しかし誤解されがちなのは、「インセンティブがあるからモチベートされる」のではないということです。「正しく評価してくれている実感がもてるから、モチベートされる」という理解が正しいのです。

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お金だけじゃなくて、その根拠である評価もあってモチベーションが上がる、という内容と思います。
その通りと思いますが、やはり設定金額が介護職の感覚で見るとデカすぎるので、そうは言っても200万円のほうが嬉しいよな、とも思ってしまいます。

ただ、正しく評価されている実感が持てる、というのは非常に重要なポイントだと思います。

本人にちゃんと伝わっているかどうか。
こっちが評価を言葉で伝えたつもりではだめで、ちゃんと本人に伝わっていないとダメなんです。

ここまでできてないと、従業員満足度にまで繋がらないのだと思います。

コミュニケーションは、相手の中で発生しているので、こっちが発信しているだけではコミュニケーションとはいえず、相手の中で正しく理解されて初めてコミュニケーションが通じた事になります。

介護現場で報連相がうまくいかない原因の多くが、これがうまくいってないからですね。一方通行で相手に正しく伝わってないケースが本当に多いです。

もちろん、業界の平均賃金よりも大幅に下回るようなケースでは、いくら「あなたは最高評価です、ボーナス10万円です」と言われても、生活を脅かされている状況(つまり「安全欲求」が働いている状況)なので納得はできないでしょう。しかし、ある程度の給与水準になってくると、安全欲求から、徐々に「承認欲求」の割合が大きくなり、評価を求める上記のようなメカニズムが働き始めます。

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そうそう、介護業界は今はこのレベルですよね。
最高評価でボーナス10万円だよ、という感じです。
中にはボーナスが出ない会社もあると聞いていますので、当社に転職で中途採用された多くの職員がまず驚くのが、ボーナスが出る、という事ですね。

他の企業に比べると微々たるものですが、それでも出るのと出ないのではだいぶ違うみたいで、中途採用組はほぼ全員が喜んでいます。

介護業界も、給与水準が一定基準以上になれば、金額の内容よりも、評価の有無の方が重視されるようになるかもしれませんね。

「評価に対する納得度」そして「評価に対する報酬の納得度」が安定しているかどうかを指標化するべきです。

評価に対する納得度は、もちろん高いに越したことはありませんが、基本的に人は自己評価が高く、会社からの評価に不満を持ちやすいという傾向を踏まえると、基本はやや実態よりも下振れするでしょう。そして、パフォーマンスレベルの高さと、「評価に対する納得度」が逆相関になっていると、ハイパフォーマーが離脱する可能性が出てきます。

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どうでしょう、記事では自己評価の高い人が基本的に多いと書かれていますが、介護現場で結構な数の自己評価を聞いてきた感想としては、介護職員の自己評価は低め、だと思っています。

中にはびっくりするくらい自己評価が高い人がいますが、そういう人はほぼ100%、本人が言うほど出来てませんし、成長もしませんでしたね。
もう自分の中では完璧なので学ぶ必要がないのでしょう。
そして、残念な事になぜかそういうタイプの人たちは、総じて自分よりできないと決めつけた人のできない事ばかり見ています。

どれだけ暇なんだよ・・・と思いながら愚痴みたいな話を聞きますが、本当に仕事が出来て職場全体を見て動ける職員は、まず自分よりできない職員のできない部分など見ていませんし、チームワークの中でそれをフォローした上で彼ら彼女らが成長できるような助言やヒントを与えています。
そして、そういう職員が本当に見ているのは、自分たちより出来ると思っている先輩や後輩の仕事ぶりです。これは本当によく見ていて所作や動作を盗んでいます。

そして、そういう職員ほど自己評価が低いです。
ただ、ビックリするくらい低いわけではなく、本当に自信のある部分はちゃんと適切な評価をつけてきます。

こういう職員を守っていく、ちゃんと評価していく事が本当に重要だと思います。

同業との水準比較は、必ず人事部でウォッチしておくことが必要です。これが著しく劣後していると、当然ながら転職リスクが高くなるということには、留意しておかなければいけません。

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人手不足が深刻になる介護業界では、この業界水準がどうなのか、という分析は本当に重要ですよね。
特にまだまだ他産業から比べて低賃金状態ですので、まずは生活水準での満足度があがらない事にはどうにもなりません。
そこにきて物価高騰ですから、ほんとうに介護事業の経営は困難を極める状況になってきました。

良い人財を流出させないためには、賃金と評価の対応をしっかりしておく事が重要ですね。

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