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労働基準法について。

どの介護現場でも労働基準法は守っているとは思いますが、僕がいつも気になるのは、加算要件や運営要件についてはちゃんと赤本や青本など法令を読み込んで理解して、きっちりと法令順守をする意識はあるのに、なぜか労働基準法に対しては同じような姿勢で向き合ってない管理者やリーダーが多いのです。(あくまで個人的な実体験に基づく感想です)

集団指導でも労働基準法違反になりやすい項目については時間を割いて行政職員さんが丁寧に説明してくれています(中には資料をただ読むだけの朗読会も多かったですが)が、ちゃんと聞いて対応していればこんな事になってるはずがない、という現実がどこの事業所に配属になってもあるんです。

これって何なんだろう、と不思議に思ってましたが、そもそも管理者やリーダー層が労働基準法に対する法令順守の意識の低さもあるかもしれませんが、一番の原因は『いままで問題なかったから』『会社がうるさく言わないから』みたいな所が多いのではないかと思います。

教えると、初めて聞きました、という反応も多いですし、多くのリーダー層は、そんなのどこもやってません、そんなことしてたら現場が回りません、というような反発をしてくる人も中にはいます。

もう介護保険制度が始まって20年以上が経過している中、介護職の処遇改にも焦点があてられる中で、労働者を雇用する場合に前提として知っておかなくてはならない法令を現場のリーダー層が知らない、読んだことがない、という事については、本当に危険だなぁと思います。

介護保険の運営指導(旧実地指導)は定期的に実際の書類を確認しに来て悪質な運営違反があれば指定取り消しや報酬返還が求められ、事業所側のペナルティ感が半端ないので、そうならないように意識するようになっていると思いますので、介護現場で労働基準法をしっかり守らせるには、このような定期的な労働基準局による実地指導は必要なのではないか、もっと突っ込めば違反に足して強制力のあるペナルティを科す権限があった方がよいのではないかと思います。
ただ、これからの人手不足(全産業で)の状況の中で、労働基準法すら守れない事業所については、淘汰されて当たり前なので、それはそれで自然淘汰されていけばよいかとは思いますが、偉そうにこんな事を書いている僕も、じゃあ完璧に法令を理解しているんだな、と言われると自信がありません。

やはりそこは、介護保険法の内容の理解よりも法令を読み込んでいる回数や質や量がやはり少ないのでそこまで自信が持てない状況です。

特にこのような労働問題については、問題が起こってから対処して対処法やそもそもの法令を理解する、というケースが多いように思います。

最近複数の現任管理者から、『ユニフォームの着替えの時間って業務なんですか?』『残業って1分単位につけるんですか?』という質問を受けたので、自分自身の認識の更新も兼ねて改めて介護現場で問題になりやすい労働基準法違反について調べてみました。

まず、ユニフォームへの着替えの時間については、そのユニフォームが業務で着用を義務付けられているユニフォームなら着替えの時間は業務になりますので、その時間込みで就業開始となります。
着替えの時間については中には本当にびっくりするくらい遅い職員もいますので、職員全員が着替えに要する時間の平均的な時間をみんなで出し合ってみんなで着替えの時間を決めて、着替えの時間込みでの就業開始のタイミングなどは検討してきた事はあります。

残業の1分単位申告については、1分単位で申告させる必要があったはずです(ちょっと自信ない)。監督者の管理下で残業は行うものですが、監督者が指示をした時間で仕事を切り上げて上がりなさい、等の指示命令をしていない場合で黙認しているような環境の場合は、そういう時間も時間外労働として認められたはずなので。

そんなわけで、まずは1分単位からの労働時間の計上について。

「アルバイト先で、毎回、15分未満の労働時間が切り捨てられている」

Lega-Life Lab

僕が初めてアルバイトしたバイト先も、初めて入職した介護事業所もこのルールだったので、これが普通だと思っていましたが実は違法でした。
初めて管理者になるときに労基法について調べていて初めて知ったのでびっくりしましたし、当時の上司に労基法ではこうなんですけど実態はこうなってませんけど、どうしたらよいですか?と聞いたら、今まで通りの運用でいい、と言われたのでそれ以来その事業所ではこの問題には触れないようにしていましたが、転勤先の自分が管理する事業所では勤務時間については1分単位で計算するように指導してきました。

労働時間は、1分単位で計算するのが原則です。
労働時間を切り捨てることは、労働基準法第24条の「賃金全額払いの原則」に違反します。
したがって、労働時間を15分単位や30分単位などで切り捨てることは原則として違法です。
就業規則にそのような切り捨ての記載されている場合、原則として就業規則の当該記載部分は労働契約としての効力がなく、切り捨ては無効です。

Lega-Life Lab

就業規則が労働基準法の基準を満たしていない場合は無効になる、という事も労働基準法について調べるようになってから知りました。
ただ、会社のルールが強い場合が多いですよね。言えなかったりします。

1か月における時間外労働、休日労働および深夜業の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げること

労働時間の端数計算で、常に切り捨てで計算することは、切り捨てられた時間分の賃金が未払となるため認められません(労働基準法第37条)。

Lega-Life Lab

偉い人に多いのがここの勘違いをしているケースです、単純に日々の残業でも30分未満切り捨てができると思っている人がいるので要注意です。
正しい法令を示しても逆に怒られたりしたので、部下から上司にこのようなケースを指摘する際は自分の精神も守りつつ無理はしないようにしてください。

安全・衛生上、指定された制服や作業服等に着替えなければならない場合、その時間は労働時間に該当する可能性があります。

残業代申請弁護士ガイド

もともとインフルエンザ等の感染対策で着替えがルールかされている事業所は多いと思いますので、ほとんどの介護事業所が該当すると思います。

着替える場所を指定の更衣室等に限定されている場合、「②社内でせざるを得ない」と見なせるでしょう。そのため、その着替えは労働時間に該当する可能性があります。

「指揮命令下に置かれている」とはどのような状態なのでしょうか。

記事の判例では、「
会社から行うように命令されている」あるいは「②社内でせざるを得ない」のどちらかの場合、「指揮命令下の置かれている」としています。

残業代申請弁護士ガイド

だいたい更衣室はありますよね。
僕は転勤が多かったのと、男性なので女性の更衣室はあるけど男性の更衣室はない、という事業所が多く、よく事業所内のトイレとかで着替えたりしていました。
いずれにせよ、会社からの命令や指揮命令下に置かれているかが重要なポイントになります。

タイムカードを押してから着替えるよう指定され、仕事を開始した時間からを労働時間と見なしているケースがあります。その場合、着替えの時間は労働時間に該当する可能性がります。
というのも、タイムカードを押してから着替えるよう指定されていることで、事実上「②社内でせざるを得ない」に該当する可能性があるためです。

残業代申請弁護士ガイド

タイムカードってだいたい職員玄関にありますから、これもほどんどの事業所が該当しますよね。

その他、よく質問を受ける会議や研修について。

https://www.mhlw.go.jp/content/000556972.pdf

上記URLは、労働時間の考え方:「研修・教育訓練」等の取扱い(厚労省)です。

労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいいます。

使用者の明示または黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は、労働時間に該当します。

厚労省

これが判断基準ですので、会議や研修も、指示命令があったかどうかが重要です。
個人的には、参加者名を記録するような会議や研修は全て業務と判断しています。
参加者を記録する事で、それによって、どこどこの事業所は参加者が多くてどこどこは少ない、みたいな事になると、命令はなくても管理者としては参加者を増やしたくなるものなので、暗黙の強制力が発生します。

労働時間に該当する事例
労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいいます。
使用者の明示または黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は、労働
時間に該当します。

①終業後の夜間に行うため、弁当の提供はしているものの、参加の強制はせず、また、参加しないことについて不利益な取扱いもしない勉強会。
②労働者が、会社の設備を無償で使用することの許可をとった上で、自ら申し出て、一人でまたは先輩社員に依頼し、使用者からの指揮命令を受けることなく勤務時間外に行う訓練。
③会社が外国人講師を呼んで開催している任意参加の英会話講習。なお、英会話は業務とは関連性がない。

厚労省

このへんの不利益な扱いが難しいんですが、チームメンバーから何であなた出ないの?とか言われたら厳しいですよね。同調圧力強めの業界なので。

労働時間に該当する事例

①使用者が指定する社外研修について、休日に参加するよう指示され、後日レポートの提出も課されるなど、実質的な業務指示で参加する研修。
②自らが担当する業務について、あらかじめ先輩社員がその業務に従事しているところを見学しなければ実際の業務に就くことができないとされている場合の業務見学。

厚労省

感想文やレポート提出が要求されるような研修は労働時間に該当しますね。
これ社外研修も該当してたのは見落としてました。

最後に厚労省からのアドバイス。

会社での「研修・教育訓練」の取扱いについて


労働時間に該当しないとする場合には、上司がその「研修・教育訓練」を行うよう指示しておらず、かつ、その「研修・教育訓練」を開始する時点において本来業務や本来業務に不可欠な準備・後処理は終了しており、労働者はそれらの業務から離れてよいことについて、あらかじめ労使で確認しておきましょう。

具体的には、「研修・教育訓練」について、通常の勤務場所とは異なる場所を設けて行うことや、通常
勤務でないことが外形的に明確に見分けられる服装により行うことなどを定め、こうした取扱いの実施
手続を書面により明確化することが望ましいと考えられます。

厚労省

毎年作成を会社から要求される事例報告とかもこう考えると業務に該当しますよね。
ほとんどの職員が持ち帰って作ってたりしてるし、会社側も自己研鑽のための事例検討会だから時間外は認めないとアナウンスしてた気がするんですけど。

あとは行事とかレクリエーションの準備とか、いろいろありますよね。

切れ目のないケアの中でシフト制や交代制での仕事ですから、本来ならこういう線引きはキチンとされておくべきなんですが、なあなあになってる職場が多くて問題が大きくなってきているんだと思います。

厚労省も労働基準法の遵守には力を入れてきてますので、指示命令を出すリーダー層にはきちんと正しい法令理解をしてもらうような指導も必要ですね。

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