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認知症患者が転倒、重い障害「転倒の恐れ予見できた」 県に532万円支払い命令 神戸地裁・・・という記事を読んで。

今週末は久しぶりの連休です。
のんびり過ごしていますが、やはりいろいろ創業に向けた準備が気になるので何かしていないと落ち着かないのですが、明日は事務所物件の契約で日帰り大移動(往復で約10時間/休憩含む)なので、ついでにどこか立ち寄って観光気分で少しでも楽しめるようにスケジューリングもしています。

北海道は広いのもあって、10年ほど住んでいますがまだまだ行った事のない地域が多く、いろいろ調べていると楽しいです。
まぁ、これまでがほとんどまとまった休みもなく遠出できなかったのもありますが、最北端の宗谷岬とか東の先(名前は知らない)とか行ってみたいですね。

函館(西の方)や襟裳岬(最南端)は、これまでの勤務地からもアクセスしやすかったので行ったことはありますが、不思議とまた行きたいんですよね。函館はもともと憧れの地だったのですが、襟裳岬なんて最初行った時は霧で何にも見えず、防風で飛ばされそうになり、風で体温を奪われて死ぬかと思うくらいの場所でしたが、海沿いの景色とか最高でした。
二度目に行った時は、綺麗に晴れていて、岩場で休憩しているアザラシを見る事もできました。

これからは仕事もプライベートも充実させる事も目的なので、北海道観光とかもしっかり楽しみながら自分自身の人生も満喫したいと思います。

そんな中、数日前に驚きの判決が出たニュースが飛び込んできたので記事にしようと思いました。

兵庫県立西宮病院で2016年、認知症患者の男性=当時(87)=が廊下で転倒して重い障害を負ったのは、看護師が転倒を防ぐ対応を怠ったためとして、男性の家族が兵庫県に約2575万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が1日、神戸地裁であった。高松宏之裁判長は「転倒する恐れが高いことは予見できた」などとして、約532万円の支払いを命じた。

神戸新聞

最近の事故かと思ってましたが、6年前の2016年に起こった事故のようです。

介護現場ので事故等については、防げる事故と防げない事故がある事は最近は当たり前になっていますが、一般の人の感覚はそうではない事も多いので、2~3年くらい前から契約時に徹底してリスクの説明と防げる事故と防げない事故がある事は説明した上で契約するようになっている事業所が多いのではないでしょうか。

しかし、そこまでやっていてもトラブルにはなります。

僕の経験でも、本人や家族は問題ないと言っているのに、別居している家族が納得されずに延々と苦情対応に忙殺されたり、政治家やマスコミを使って訴えるぞ、とか会社をつぶすぞ、とかいうような事を言ってくる家族の対応はしてきたので、本当に何か事故があった時に、どうなるのか本当にわからない状況です。

ですので、今回のような判決が出て、非常に不安です。

男性は16年4月2日早朝、看護師に付き添われトイレに入った。看護師は男性が用を足す間に、別室患者に呼び出されて排便介助に対応。男性はその間にトイレを出て廊下を1人で歩き、転倒して外傷性くも膜下出血と頭蓋骨骨折のけがを負った。男性は2年後、心不全で亡くなった。

神戸新聞

入院中のケースなので介護の現場とは状況が違うと思いますが、夜勤帯の病院ですので結構過酷だと思います。

トイレ誘導していたら、他の所でナースコールが鳴ってそちらに対応したらトイレ誘導していた方が転倒してしまっていた・・・という内容ですね。

あるあるな状況だと思います。

僕も同じような経験をした事があります。
夜勤の時に、1人の方をトイレ誘導して便座に座ってもらっていて、座位が不安定だったので付き添って体を支えていたのですが、他の利用者さんに呼ばれて、一人夜勤だったので全て一人で対応しないといけなかったので、危ないな、と思いつつ、その方に手すりをしっかりと掴んでもらって対応に向かいましたが、結局、トイレで転倒してしまいました。

夜勤中、僕もこの事故があったのは早朝ですが、結構判断力がおかしくなっているんですよね。
そして、静かな空間に響くナースコールや利用者さんの声・・・。
夜勤の明け方でそれでなくとも疲弊している精神状態の中で、そういう環境状況に置かれた時に、冷静に判断し行動できる人は少ないと思います。

この事故以降、僕はこの経験から学んで何があっても目の前の利用者さんが完全に安全な状況になるまでは別の対応をしないようにできるようになりました。

実際、二兎追う者は一兎を得ずといいますが、最悪の場合は、両方とも事故に発展する場合もありますので、確実に今見ている方の安全を確保しておく、というのは出来うる最善の方法だと思っています。

しかし、こういうのを研修とかでいくら説明しても類似の事故は発生します。
やはり、経験して自分で痛感してみないと実感として感じれないのかもしれません。

大なり小なりですが、このようなケースの事故はいっぱい発生しているはずです。

高松裁判長は判決で、認知症の男性から目を離せば、勝手にトイレを出て転倒する可能性が高いことが「十分に予見できた」と認定した。また、男性の状態と、別室患者がおむつに排便すれば問題がなかった状況などを比べ「優先しなければならなかったとは認められない」と指摘。男性は事故で寝たきりとなり、認知症が進んで両手足の機能全廃に至ったと認めた。

神戸新聞

この事故の看護師の行動は理解できますし、もしかしたら転倒した被害者もいつもは座って待っててくれたのかもしれません。
それに、コールが鳴ってすぐに対応するのは当然の事だし、オムツの中に排泄している事がわかっていて患者さんがコールを押したのであれば、それは気持ち悪くて一刻も早く何とかしてほしい、という思いがあったからですし、その想いに応えようとした行動だったと思います。

簡単に優先順位や、おむつの中で排泄させておけばよい、なんて事を”それでいい”と思ってないから、看護師や介護の仕事に就いているし資格を取って働いているわけで、判決の内容については納得しにくいな、と思いました。

それに、この判決で、オムツの中での排泄の対応は優先度が低いというのもあってはならないと思います。

病院や介護施設の夜勤が過酷なのが、こういう個人の尊厳を守るためにみんな必死に働いていて、これまでの実践を積み上げて少しずつよりよい看護や介護を提供できるようになってきているはずなのに、一気に逆行しそうな感じがしてすごく嫌な感じです。

介護保険法の目的には、以下の文言が明記されています。

 この法律は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により、要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療
養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を・・・(以下略)

介護保険法 第一章 総則 (目的) 第一条

僕らの仕事は、尊厳を保持した上で適切な介護サービスを提供しなければならないのです。

オムツの中に排泄させておけばいい、という事は、この法律に違反しますし、そもそもの日本国憲法が保障している基本的人権も守れなような気がします。

だからと言って、別の方が転倒して寝たきりになっていい事にはないませんが、では何が悪いのかというと、これはもう制度が悪いのだと思います。

夜間に少ない人員しか配置できない理由は様々ですが、そこに対して十分な負担軽減や十分な賃金的な補償もできないような医療制度や介護保険制度の仕組みが悪いのだと思います。
実際、最近の議論ではICT導入と活用により、この人員配置基準自体を緩和(より少ない配置でも認める)方向になりつつあります。

今回の事故のようなケースが頻発しますよ、大丈夫なんでしょうか。

この判例が出たのであれば、これからはこういう一人で複数の患者さん利用者さんに対応しないとならない状況下で発生した事故の賠償等については、全て制度設計をした国の責任にすべきです。

今回のニュースは、県立病院だったので県に損害賠償が請求されていますが、このような体制でしか運営できないような制度設計をした国に責任があると思います。


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