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続・介護サービスの生産性向上について(内閣府規制改革推進会議 第11回 医療・介護WG の資料・議事録を閲覧しての個人的な感想)

今回は、2021年4月13日(火)に開催された、内閣府規制改革推進会議第11回医療・介護ワーキング・グループの資料と議事録を読んでの感想なり意見なりを書いてみたいと思います。

同じ内容(介護サービスの生産性向上)で、2021年2月10日(水)に同会議で議論もされていまして、そちらも昨日の記事にしていましたが、今回の議論はその続きの内容ですね。

前回の議論が2月だったので、すでに介護保険改正が行われた後の4月のタイミングでの続きの議論なので、いろいろとどんな展開になったのかは気になるところで読み進めましたが、前半の歯科技工士の話が相当盛り上がっていた印象です。

さて、介護サービスの生産性向上については、前回の会議で河野大臣から指摘があった、いつまでになにをやるのか示しなさい、という事についての回答という形で厚労省の担当者から説明がありました。

・・・文書の半減については、行政に提出する文書について、これまでの取り組みの効果を都道府県アンケート等により推計し、約25%の削減の到達と思う・・・

との事で、その他の内容については、これから調査する、準備していく等の回答でした。

このあたりまでは行政側の文書業務量の話なので、あまり介護の現場がどうなるというような内容ではないのですが、気になったのがアンケートを取って集計してその結果が削減率25%でした、という部分です。まだまだ半減にはなっておらず、その後どうすれば半減までもっていけるか、という部分が読み取れない内容でしたし、その後の説明によると、どうやらこの文書量の半減を目指す内容というのは、事業所の新規申請に係る書類の事のようです・・・。添付資料を見ると、そこには以下の内容が示されていました。

【平成28年度】
〇介護老人福祉施設
 新規申請書類 平均 190枚
〇通所介護事業所
 新規申請書類 平均 79枚

【令和2年度】
〇介護老人福祉施設
 新規申請書類 平均 142枚(△25%)
〇通所介護事業所
 新規申請書類 平均 59枚(△25%)

・・・これってなんの調査なんですか・・・というのが正直な感想ですが、もしかして文書量半減って、新規申請書類のみの事を指していたとすると、こんな最初に1回だけ提出する書類を半減したところで書類業務は減らないんですけど・・・という文句しか浮かばない状態でした。
そんなはずはないと思って読み進めますと、後の方でウェブ申請・電子申請の仕組みをつくるとかの報告がありました。これについては、2021年度中に整備をして2022年度より運用を開始するとの事。
まぁ、指定申請の業務なので既存の事業者には関係ないですが、もしかしたら更新申請もこういった電子化されるかもしれませんね。
一度打ち込んだデータがあれば更新も楽かもしれませんが、結局途中から取り組む場合は、最初に入力作業は必要なので、手間はかかりますよね。
行政で代行してくれませんでしょうか・・・。

次に介護現場の文書量の削減対策として報告されたのが、法改正で実施された利用者同意の押印以外にも電子メールや電子署名の活用が認められた事や記録の保存について紙ではなく電子的記録を可能とすることを明確化した、これによって文書量削減が見込めるというような内容でした。
また、ケアプランデータの連携システムについては、2021年度中にシステム構築をして、2022年以降に利活用を推進する、という報告がありました。

前段の押印や電子的記録のところは、これって本当に文書量の削減になるんだろうか、というのが正直なところですが、少しは効果はあるとは思いますけど、もっとこうすごく業務量が減った実感が欲しいです。
昨日の記事にも書きましたが、結局新しい加算に関わる事務手続きや書類が増えて減少するどころか現場での書類作成業務は増えています。

ケアプランデータの連携システムについては、どんどん進めてほしいですが、報告の仕方が”2022年以降”に”推進する”という事ですので、これは資金力やICT化が進んでいる一部の体力のある会社ならどんどん使えるような内容になりそうな感じです。
国としてはあくまで推進するだけで、絶対にそうせよ、という事ではないので、補助金などを申請できないような会社や、そもそもそういう事をしらない会社は活用できないままだという事でしょう。
後段で調査報告の内容もありましたが、現状で紙媒体でのケアプランは全体の約90%との事。これをケアプランデータ連携システムを構築することでなくすことができる、と示されていました。

これって、ケアマネだけがそのシステムを使っていても、僕らのような各事業所が紙媒体だとあまり意味がないので、たとえば請求に関わるサービス提供票の予定・実績などは完全にデータ化するという事なんでしょうか。
そうなると毎月月末に提供票の実績をFAXしたり郵送したり持って行ったりしていた手間が省けるので助かります。
こういう作業って、こうやって書くとそんなに業務量がなさそうですが、各居宅毎に提供票を仕分けて、FAXや郵送で使用する送り状をつけて送付するという手間があり、中には居宅のケアマネ毎に仕分けてよこせという事業所もあるので、そうなるとさらに手間が増えます。
逆にケアマネ側も、送られてくる紙媒体の提供票を各担当ごとに仕分けて配分して給付管理を行うという手間があるので、データでクリックするだけでこれらの手間が省けるのは良いことだと思います。

次がローカルルールの部分ですが、運営規定等で介護職員の員数の記載の方法について、何人と正確に記載することを求める自治体と、何人以上と記載しても差し支えないとしている自治体があって、これを員数が変更になるたびに変更届を提出する手間をなくすために何人以上という表記でも差し支えないとした(介護保険改正で)という報告がありました。

これは僕は以前は何人以上でよいとされていた自治体にいたんですが、異動でそれを認めない自治体に配置になったときに困りました。
ですので、こういう事が統一化される事はよいと思いますが、もっと他にもいろんなローカルルールがあるので、こんなのは厚労省のトップダウンで各自治体の担当者に勝手な解釈や運用をさせないようにするだけなので、さっさと全ての内容で統一してほしいです。

ICT導入の成果についても報告がありましたが、タブレットシステムなどの導入によるケア記録等の削減効果については、アンケート結果をもとに判断しているんですけど、これって正確かどうか微妙だと思いました。

介護ソフトやタブレットを導入しても、それを使いこなせる介護職は結構限られたりしますし、個人の理解度や力量で大きく変わりそうな内容だなぁと思いましたが、報告では、間接業務時間削減や文書量削減、転記誤り削減が期待できる。利用者1人あたりの業務時間が25.7%削減できたという報告内容でした。

面白かったのが資料にあったICT導入支援の実態という項目で、平成30年は1153件、令和元年は1813件、令和2年が2574件、という数字です。
これって全国の数字だと思うので、全体からするとまだまだ一握りというか小粒程度の数だなぁと思いました。
そりゃうちの法人もICT導入なんて進めないか・・・と納得してしまったり。

厚労省の担当からも、なかなかICTの導入が進まない、という意見もあり、その中で現場の理解が得られない、という要因があるとの事でした。

このあたりはもっと厚労省には頑張ってほしいところです。
ベテラン勢の介護職はスマホやタブレットには馴染んでませんし、当然経営層もそういう集団だと思いますが、これからの世代はスマホやタブレットを片手に育ってきた世代です。
介護業界がスマホやタブレットや、若い世代がびっくりするような便利なシステムが導入される事で業界の魅力にもつながります。

なので既存のシステムを転用するという発想ではなく、介護現場のスマートシステムを創造する、という意識でシステム構築や導入をしてほしいと思います。
僕ももう古い世代なので発想に限界はありますが、すでにスマートウォッチなどは一般にもポピュラーになってきていますし、そういうもので手軽に簡単に記録などできるような、というか記録自体も自動化できるようなシステムを新しい発想で作り出してほしいと思いました。

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