中咽頭がんに対する放射線治療 ー 強度変調陽子線治療(IMPT) vs. 強度変調放射線治療(IMRT)ー

Youssef I et al. JAMA Netw Open. 2022;5:e2241538. PMID: 36367724

中咽頭がんに対する強度変調陽子線治療(IMPT) vs. 強度変調放射線治療(IMRT)

<背景>
・中咽頭がん(OPC, oropharyngeal cancer)に対する放射線治療では、強度変調放射線治療(IMRT, intensity-modulated radiation therpay)のような高精度治療でも治療関連毒性がしばしば認められる。
・強度変調陽子線治療(IMPT, intensity-modulated proton therapy)では、強度変調放射線治療(IMRT)と比較しても周囲の危険臓器(OAR, organ at risk)への照射線量を低減できるというアドバンテージが存在する可能性がある。
・しかしながら強度変調陽子線治療(IMPT)に関する臨床データは依然として乏しい。


<目的>
・遠隔転移のない中咽頭がん(OPC)に対する(化学)放射線治療における、強度変調陽子線治療(IMPT)と強度変調放射線治療(IMRT)の有害事象と治療成績を比較検討する。


<対象と方法>
・単施設、後ろ向きコホート研究(米国)。
・対象:18歳以上、新規に診断された遠隔転移を有さない中咽頭がん(OPC)に対し根治的放射線治療施行例(2018年1月-2021年12月)。
・介入治療:強度変調陽子線治療(IMPT) または 強度変調放射線治療(IMRT)(± 化学療法)。


<評価項目>
・主要評価項目:急性期および晩期(6ヶ月以降)の治療関連有害事象、局所領域再発(LRR, locoregional recurrence)、無増悪生存(PFS, progression-free survival)および 全生存(OS, overall survival)。


<結果>
・合計292例の中咽頭がん患者を組み入れ解析を行った。
・272例(93%)はヒトパピローマウイルス(HPV)陽性腫瘍であった。
・男性 254例(87%)、年齢の中央値 64歳(IQR 58-71)。
・58例(20%)は強度変調陽子線治療(IMPT)、234例(80%)は強度変調放射線治療(IMRT)により治療が行われていた。
・経過観察期間の中央値:26ヶ月(IQR 17-36ヶ月)。
・大半(97%)の患者では原発巣に対して70 Gyの照射が行われていた。
・強度変調陽子線治療群(IMPT)の98%、強度変調放射線治療群(IMRT)の92%がHPV-p16-陽性腫瘍であった。
・3年全生存率に両群間に有意差を認めなかった(IMPT群 97%、IMRT群 91%, p=0.18)。
・3年無増悪生存率(IMPT群 82%、IMRT群 85%, p=0.62)や3年局所領域再発率(IMPT群 5%、IMRT群 4%, p=0.59)にも有意差を認めなかった。
・強度変調陽子線治療群(IMPT)と比較して、強度変調放射線治療群(IMRT)で急性期毒性の発生率が高かった。
 <強度変調陽子線治療(IMPT) vs. 強度変調放射線治療(IMRT)>
  口の中の疼痛(Grade 2以上):72% vs. 93% (p<0.001)
  口腔乾燥(Grade 2以上):21% vs. 29% (p<0.001)
  味覚障害(Grade 2以上):28% vs. 57% (p<0.001)
  粘膜炎(Grade 3以上):53% vs. 70%(p=0.003)
  嘔気(Grade 2以上):0% vs. 8% (p=0.04)
  体重減少(Grade 2以上):37% vs. 59% (p<0.001)
・晩期のグレード3以上の治療関連毒性には両群間に明らかな差異を認めなかった。
・晩期の口腔乾燥症(Grade 2以上)は強度変調陽子線治療群(IMPT)で少なかった(11% vs. 10%, p<0.001)。
・6ヶ月以上に渡り胃瘻の留置が必要であった患者は、強度変調放射線治療群(IMRT)2%、強度変調陽子線治療群(IMPT)0。


<結論>
・遠隔転移を有さない中咽頭がん(OPC)に対する根治的(化学)放射線療法において、強度変調放射線治療(IMRT)と比較して強度変調陽子線治療(IMPT)では急性期毒性が有意に少なかった。
・晩期の(慢性的な)毒性も強度変調陽子線治療(IMPT)で少なく、治療成績も良好で、2年局所領域再発率は5%であった。




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