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花の雫

1.
君がいなくなった日に飲んだ
初めてのドリップコーヒー

ぽちゃり ぽちゃり
花の雫が落ちる放課後
酸っぱい匂いのチョークの粉に
瞳を閉じてくしゃみをした

廊下の手すりや グラウンド
図書室 プール 食堂も
すべて過去になったように思える
君がいなくなった日に飲んだ
初めてのドリップコーヒーは
いつまでも舌の上を湿らせた

ぽちゃり ぽちゃり
まるで僕だけの時を刻むように
黒く滴る ドリップコーヒー

2.
この日の味を忘れないよう
すうーと一息で飲み干した

ぽちゃり ぽちゃり
雨上がりの帰り道
日光の下に並んだ紫陽花が
普段より綺麗に見えたりして

思い出になんて出来ないほど
花の雫が彩る時間も
すべて誰かの空想に思える
感情が染みこみ 流れるほど
初めて味わった「それ」は
いつまでも頬の底を温めた

ぽちゃり ぽちゃり
まるで君の代わりを埋めてくように
黒く滴る ドリップコーヒー


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