児相
児相に通っていた時期がある。児童相談所。
おそらく場面緘黙症というやつだったからだ。あんまりにも人前でしゃべらないもんだから、親が「こいつぁ頭おかしいんじゃねえか」と心配して連れて行ったのだと思う。
通っていた児相は、最寄り駅から1kmぐらい距離があった。小学2年生の足には遠くて遠くて、ランドセルを背負って歩くのがしんどかった。
担当の人がついた。お姉さん。30手前くらいだっただろうか。名前も忘れてしまったけれど、優しかった。でも、私はその人に対しても口を開かなかった。一度喋らないと決めた相手には絶対に喋らなかった。
ある日、そんな喋らない会の時間まで待合室で座っていた。待合室の本棚にはいろんな漫画雑誌が置いてあった。8歳の私は、あるレディースコミック雑誌を手に取った。当時の私は漫画家さんになりたいと思っており、漫画の描き方の勉強をしていたから、いろんな漫画に触れたいという気持ちがあった。
雑誌を開いた。目に飛び込んできたのは、全裸の女性。その雑誌は、いわゆるエッチなやつだったのだ。まだそんな意識もない私は夢中で読んだ。いつも読んでいるりぼんでは出てこない体の部位が堂々と露出している。すごいすごい。性的な気持ちは一切なく、ただ子供の純粋な好奇心だけでペラペラとページをめくった。
そして私の感想はひとつだった。
「乳首のトーンが…すごかった」
乳首にグラデーションのせるんだ!!と思ったんだよ。
(おわり)
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