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ぼぉーっと生きている

 オンラインツールが定着した事で移動の必要性や、対面での会議・交渉が減り、ラクになって良かったと思っている人がいたとしたら少し考え直した方が良さそうだ。
 研究によれば、オンライン会議時の脳の状態は一人でぼぉーっとしている時と同じで、コミュニケーション態勢になっていないばかりか、対面なら観察される相手との脳の活動の同期が見られないというのだ。

 つまりオンラインでは、会議であなたが伝えようとしたことは相手に伝わっていないし、相手の言いたいことの殆どをあなたは理解出来ていないということになる。それでもオンラインでの会議や交渉を続けるとしたら、別の方法で済ませられる要件伝達程度のことに余計な時間を費やしていることになる。本来望むべきコミュニケーションはそこでは行われていないのだ。

 道具は何でも使い方次第ではあるので、オンラインの全てが無用ということではない。対面での対話に代わるものではないというだけのことだ。
 だから例えば、メールや電話で済ませられるような要件であればオンラインで十分だし、わざわざ会いに行く必要は無い。

 ところが、メール、電話、オンライン会議、対面には順番がある。どういう順番かと言えば、言葉での表現能力が要求される順だ。
 メールで使用出来るのは基本的には文字だけだから、言葉での表現が足りないと伝わらない。要件が明確に相手に伝わる形で書かれていなければならないのだが、文字は細かな要件を伝えるのには不向きだ。特にネガティブな内容の場合、送り手が思っている以上にネガティブに受け止められると思っておいた方が良い。

 言葉の表現力が要求されるのは電話もそうだが、双方向のやり取りをその場で連続して繰り返す事で言葉の欠落を埋めることが出来る。伝わっていないと思ったら言い直せるのだ。だから、文字による言葉よりも融通がきく。それでも行き違いは起こるし、電話だと妙に強気になる人がいるから厄介だったりする。
 オンライン会議の場合、資料を表示することが出来る点で言葉への依存度が低下する。それが電話よりも良い点だが、しかしこれも、資料の作り方次第ではある。

 ここで冒頭の話に戻ると、どんなにオンラインで分かり易い資料が提示出来たとしても、実質的に相手がぼーっとしてるのだとしたら何の意味もない。悪いことに、本当にぼーっとしているように見えることはなく、真剣に聞いてちゃんと理解している様に見えるのに何も残らないのだというから怖い。私たちがこれまでやってきたオンラインのウェブ会議は殆ど無意味だったことになる。
 確かに、その時は分かったつもりでも記憶に残りにくい印象はあった。それが脳科学的にも裏付けられているというのだ。

 私たちがぼーっと生きない為には、何よりも先にオンライン会議をやめるべきなのだ。仕事をちゃんと進めたければ、最小限の伝達事項のやり取りだけで済むような極めてビジネスライクな仕組みを採用するか、今すぐ会いに行くことだ。

おわり

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