見出し画像

キャッシュレスと言ったって

日本は現金主義が未だに蔓っていると言われ、キャッシュレス決済サービスが急に林立し激戦となっている。

私もスーパーでの日々の買い物にクレジットカードを利用することが当たり前のようになった。
コンビニでは何とかペイも使う。と言うか、キャッシュレス対応していない一部の飲食店を除き、暫く現金を使った記憶がない。
電車の乗り降りは交通系ICカードだし、都会では現金でなければならない店を探す方が難しいかも知れない。

だから財布の現金は減らない。
増えもしないが。

その代わり、当たり前だが、口座からはきちんと着実に引かれている。
お金を使っていないのに物やサービスを手に入れ、使った感覚が無いままに銀行口座残高は減っていく。

昔、毎月の給料を封筒に入れて配られた時代を通った先輩が、口座振込じゃあ給料を貰った実感が湧かないし、家族だって父ちゃんの有難みを感じないだろうというようなことを言っていた。そんなこともあるものかと聞いていた覚えがある。

確かに、月に一度現金を持って帰ってくる父親を見るのと、月に一度勝手に口座残高が増えているのとでは、子供たちが受ける印象は違うだろう。
父ちゃんが稼いだ証の現ナマはそれ相当の説得力があるはずだ。口座振込では札の厚みを見る事すらかなわない。

私の父の時代も給与は振込だったから、私だって父親が札束を持ち帰るのは見たことがない。
その頃から給与は現金では無く、通帳に印字されるただの数字になっていたということだ。
つまり日常で使っているお金の殆どが形のないコンピューター上の数字の記録に過ぎず、その意味で世の中のお金の多くはとっくにキャッシュレス化なのだ。

では、いまキャッシュレスで実現しようとしているのは何だろうか。
現金のような隠れ資産を炙り出すことだろうか。生活の中にあるムダを省くことだろうか。
お金の流動性を上げることだろうか。
人間がお金に縛られた価値観を捨てることだろうか。

キャッシュレスになることは個人にとってどんなメリットがあるか。
キャッシュレスになると経済はどう変わるのだろうか。

財布が無くても生活出来る。
財布からお金を取り出す時間が節約出来る。
財布にお金が無かった時に銀行やコンビニに下ろしに行く手間と時間が省ける。

キャッシュレスになると誰か特をするだろうか。
キャッシュレス決済を運営している企業は手数料が入って儲かる。
気軽に買い物してくれるようになるので店は儲かる(?)。
手元にお金が無くても買ってくれるので店は助かる。

でも。

キャッシュレス手数料分だけ物の値段は上がる。
すぐには上がらないだろうけれど、じわじわと上がる。
つまり、手数料分の約3%は見た目の物価が上がっていくことになる。

ということは。

キャッシュレスを普及させることで、経済を回し少しのインフレを作り、結果好循環となって皆が得をするということだろうか。

でもキャッシュレス普及に伴って賃金が上がらないと、生活は知らぬ間に苦しくなるということだろうか。

物々交換による取引から、物と交換出来る価値を持っているという信用に裏付けられた紙や金属(紙幣や硬貨)による取引になったことによって登場したお金。
スマホのバーコードを提示してレジで読み取られたとき、私は物を得たのと引き換えに、いったい何を差し出しているのだろうか。
私達の気づいていない大切な何かと引き換えにしているのだとしたら空恐ろしい。

おわり

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?