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眠れないクリスマス・イブの夜
目が覚めると枕元におもちゃが置かれている。
その期待と映像が頭の中を巡り続けているおかげで、布団に入っても眠れない。それがクリスマス・イブの夜だった。
まだテレビゲームなど無い時代、おもちゃと言っても大したものではない。それでも、無条件で手に入る1年に一回だけのチャンスには期待しない訳がない。一年越しの願いが叶う時だ。もっとも、いい子にしていたかと言われれば、不安が残る。だからこそ、下されたジャッジの結果が判明する朝が待ち遠しい。
何度も寝返りを打って眠れないでいると、それが理由でプレゼントを貰いそこねるのではないか。ちゃんと寝ない子にはあげませんと言われそうな気がしてくる。だからぎゅっと目を閉じて早く眠れと心のなかで唱える。
ハッと目が覚めてもまだ朝には程遠い。朝がこんなにも遠く待ち遠しいのはこの日だけだ。
願いが叶ったり期待どおりに事が運ぶ経験はそうはない。だからこそ、サンタクロースは手を抜けない。遅刻はもちろん誤配も許されない。幸いなことにサンタクロースのクリスマス・プレゼントはその昔から置き配だったから再配達は心配しなくて良い。ただし、姿を見られてはいけないからタイミングは重要だ。
冬の空が薄明に蒼く染まる頃、薄目を開けてみた枕もとにリボンの掛けられた包を見つけた時の歓喜は一生ものだ。
何故か薔薇の模様の包み紙だったのは子供にとってはどうでも良いことだった。
おわり
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