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社員に楽をさせる会社は駄目な会社か

 DXだ業務改革だと言ったときに、社員に楽をさせるために使うお金はない、という発想をする経営者がいる。
 業務効率化=社員が楽をする、という短絡的な思考がさもしい限りだが、そのような経営者が多いのが実態ではないか。

「社員」は会社が金を稼ぐための道具だ、と思えば社員が楽をするためにお金を使うような無駄遣いは厳禁だと言うことだろうか。
 大量生産製品の製造工場であれば、人件費よりも機械にお金を掛けるだろう。だからといって、労働者に楽をさせるために機械を導入している訳ではない。生産効率を高めるためだ。
 工場以外の職場やサービス業では、工場での機械の代わりにITやDXと呼ばれるような、いわゆるデジタル化の導入が検討される。
 機械の導入であれば、その分の人件費が浮きますよ、という風に効果が見えやすい。その反面デジタル化では業務のやり方を改革するという視点が欠落していると、そんなの導入しても社員が楽をするだけじゃないか、となる。

 問題はそんな経営者側だけにあるということでもない。
 問題の一端は日本のデジタル化業者の価格が高すぎることにある。価格そのものが高いのではなく、技術が価格に追いついていない。大した技術もないのに一人前の値段がついている。
 そうなっている原因は2つあって、一つは日本国民がデジタル化について余りにも無知であること、もう一つの理由は日本企業の新卒採用だ。

 デジタル化についての無知というのは、技術的な知識のことではなく、デジタル化アレルギー的なこと。デジタル化をどんな風に活用出来そうかと考える以前に、やる前から苦手意識を持つ人が多い。
 その根っこは間違うことの許容度が低いことにあると考えている。どうしてこうなったのか、人間のやることや機械のやることに完璧さを求める傾向は異常なくらいだ。新たなものの導入には試行錯誤が必要だが、間違うことを許容しない限り試行錯誤は出来ない。

 もうひとつの理由である日本企業の新卒採用は、使い方を決めずに確保した労働力に対し、入社してから教育するやり方だ。
 このやり方には様々なメリットもあると言われているが、デジタル開発人材を作るにはあまり適していない。
 入社してから学ぶのでは遅すぎるし、デジタル化のセンスを身につけるより先に日本企業の仕来りを覚えてしまう。ここで言う日本企業の仕来りとは、社内の上下関係や新人に課せられる雑用、やたら決済者や承認者が多かったり、紙で出力しないと始まらないようなアンチデジタルなもののことだ。
 大きな企業になるほど社内のあれこれは多くなる。そういった旧来の仕組みからの脱却を目指さなければならないデジタル化を作る会社がそれでは、クライアント企業のDXが達成されるはずもない。

 最近ではリスキリングなどと言って無理やりデジタルについて学ばせようという会社があるとも聞くが、それはそれとして、いくらデジタルの技術を学んだところで、業務そのものを改変していこうという経営者の野望とビジョンが無ければデジタルを活用するには至らない。
 それでいてデジタル化を伴う業務改変は、経営者だけが考えていてもダメで、全員が現在の業務を疑問視しながら、業務の新しいありかたについて練らなければならない。
 デジタル化によって楽に稼げる仕組みが構築出来た企業だけが生き残れる未来があるように思えてならない。

おわり



 
 

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