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自転車の乗り方の教え方は難しい

 あなたが自転車に乗れる人だとしよう。自転車に乗れない人に乗り方を教える時、どうやって教えるだろうか。自転車乗り方マニュアルを作って渡すだろうか。それとも乗れるようになるまで付き合うだろうか。
 ちなみに、世にある自転車乗り方マニュアルは、ブレーキのかけ方など道具としての自転車の使い方を記したものか、交通ルールを記載したものであって、それを読んでも乗れるようにはならない。

 恐らく実際にあなたが出来るのは、自転車の乗り方そのものを教えることではなく、乗り方の練習方法を教えることだろう。この練習を続ければいつか乗れるようになると。
 このようなことは何も自転車だけではなく、野球のバッティングも、サッカーのボールコントロールも、ピアノの演奏も同じだ。手順書を読んでも出来るようにはならない。練習方法の是非はあれども、とにかく練習することが習得への近道なのだ。

 仕事でも同じ側面がある。手順さえ教えれば出来るものと、練習法を教えることしか出来ず本人が繰り返し練習しなければ出来るようにならないものがある。
 これを混同してしまうと、何故教えたのに出来ないんだ、何で丁寧に教えてくれないの? という不満を抱くようになる。つまり、そもそもの教え方・教わり方が間違っている場合が多い。練習法を教えなければならないような仕事なのに個別の手順を教えても、応用が効くようにはならない。練習しなければ身に付かないことなのに、手順を覚えさえすれば直ぐに出来るようになると思い込んでいたら、いつまでも習得出来ない。

 世に言われる暗黙知の類も、方法論を学ぶだけでは修得できない、練習が必要な部類のものだ。いわゆる経験が物を言うというのは事実なのだ。説明はどうでもいいから、正解のやり方を教えてよという空気を感じることがあるが、それは無理なことなのだ。自分で実践の中から学ぶ姿勢が無ければ出来るようにはならない。
 仕事はそんなには簡単ではないのだ。

 さて、話は振り出しに戻る。ひとたび自転車に乗れるようになると、人に教えるのが容易になるだろうか。正解の体の動かし方が分かっているのだから、それを人に伝承するのは簡単そうに思えるかも知れないが、難しいことはお分かりだろう。
 自転車の乗り方は簡単だけど案外難しいものなのだ。

おわり


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