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【読後想】『コンビニ人間』★★★★★

夏休みの宿題で読書感想文が苦手だったけれど、感想でも書評でもなく、想ったことを勝手に書き留めるだけなら出来そうだということで記録する読後想。

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その昔、何でもかんでもマニュアル化しようとする事を残念がる大人たち、という構図があった。
その後、マニュアル化が浸透すると、マニュアルがない事を不審がられるようになった。

それは、どこに書いてあるんですか?


マニュアルに決められた事に従って、決められた判断基準のままに行動するのは、不自由でありながら極めて自由だ。自分の思いのままにならないという意味では不自由だが、悩む事からも、余計な事を考えることからも解放されるからだ。
がんじがらめのルールでも、それに浸り切ってしまえば、そこには自由で活き活きとした世界が広がっている。中途半端にルールに抵抗する方がかえって生きずらい。

今回読んだのはこれ。

村田沙耶香(著)、『コンビニ人間』 (文春文庫)

私にとって実に7か月ぶりの久々の小説だ。
これまでこんなにも間があいたことは無かった気がする。要因は様々だが、本屋をうろつくことが無くなって、新たなお気に入りの作家との出会いが減っているからだろう。

小説の場合、内容に触れるとネタばれになり易いので書き方が難しい。
主人公が普通の人でないことは事実だが、普通の人と普通でない人の線引きは何なのかとか、普通は何が普通なのかとか、そういうお話ではない。
普通でない人でも居場所は見つかる、というお話でもない。

まあ、私の理解が正解ということではなく、どう読むかは人それぞれの受け止めが正解なのが小説なのだから、ここで御託を並べる必要は無いのだ。
しかし自らの記録としてこれだけは書き留めておこうと思ったのが、主人公の見つけたコンビニという生き甲斐との関係性が、逆説的というか社会との関係で重層化しているというか、実は・・・だよねというようなことを暗に言っているように感じた。
(ネタばれを恐れるあまりに、上手く書けなさ過ぎる)

という訳で、私の評は★★★★★。
久々の小説だったが、私が読んできた小説たちとは違って新鮮な切り口で、その世界を思いのほか楽しめた。
ありそうで、なさそうで、ありそうなお話。
いや、きっとどこかにあるお話。
でもやっぱりここまでの人はいないだろう、というお話。
いや、・・・・・・どこかにいて欲しい。

この作者の小説は初めてだったが、他の作品も是非読んでみたいと思った。
また新たに好きな小説家を見つけてしまった気がした。

おわり

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