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若者はすぐ会社を辞める?

 私が就職した頃には、同じ会社で長く勤めることが半ば暗黙の前提だった。今ではその逆で、長く勤めるつもりは元々無いらしい。何となくそうかとは思っていたが、そうは言ってもそうそう転職は出来ないから現実を知らない学生が考えるたわごとだと心の底で思っている人が企業側には多いのではないか。
 だから社員が辞めていくのを目にすると、今の若者は飽きっぽいだとか、就活時のミスマッチがいけないのだとか、様々な理由を付けて片付けている。

 しかし実際のところは、飽きっぽい訳でも採用活動がいけないのでも無く、辞める時期が来たから辞めているに過ぎない。
 だから、時間を掛けて新人を育てようというのはそれこそ新人の感覚とはアンマッチで、辞めるまで間がないのだから早いとこ仕事が出来るように育ててよと思っている人もいるという訳だ。
 それじゃあ何のために仕事を教えるのか分からない、ようやく使えるようになったらさようならだなんてたまったもんじゃない、と、そう思うのは若者からしたら時代遅れも甚だしいことになる。

 ところが難しいのは、若者は一つに括れないことだ。若い世代の考え方は、みんな横並びだった世代には想像がつかないほど実に多様化している。早く辞めて転職したいと考える人が多い反面で、長く勤めたいからゆっくりじっくり教えて欲しいという人も多くいる。つまり個人個人で考え方や生き方がバラバラなのだ。
 別の個人だから考え方が違って当たり前だろうと思うのは当然のことなのだが、少し上の世代の人たちはその辺が分かっていない。なぜなら、価値観を同じくして生きて来たからだ。

 学生起業がそれなりに一般化して、物凄く特殊な感じがしなくなった辺りからだろうか、通り一遍の生き方以外の道が普通の人にも微かに見えるようになったのは。あなたはあなたのままでいいと家庭でも学校でも言われて育ったかは定かでないが、それぞれの個性を尊重する傾向は、間違いなく上の世代の時代には無かった。

 とはいえ、これまたややこしいのは、他のみんなの動向が気になるのは未だに変わらない点だ。個性一点張りではない。SNSなどでは目立ちたいけど悪目立ちはしたくない。個性的ではありたいけれど、人と余りにも違うのは嫌だ。そんなアンビバレントな世界に生きている。
 要するに簡単では無いのだ。今の若い人はこんな傾向とステレオタイプを押し付けると見誤る。

 仕事感も人生観も、年代によって皆違う。若い人たちと中年、初老、老年で皆違う。違うということはいつの時代でも同じなのだが、みんなが同じ方を見ていた時代と今とでは、その違いが違う。
 今は、違いを認めることから始める必要がある。若い人たちと括るのではなく、個別の彼や彼女と向き合うことが何よりも大切だ。こんなことは、違うことが前提の世界であれば当たり前のことなのだが、日本では同じという意識が先行しがちだった。だから強いて個を観る癖を付けないと、若い奴らは分からない、となってしまう。

 さて、今の若者はすぐに会社を辞めるだろうか。この質問自体がナンセンスだと気付いたあなたは、結構いい線行っている。ですよね?

おわり


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