ねじねじ録#1 悩めるマリオを読んで

「周りを見る余裕がなくて、綺麗な宝箱も景色も無視して、とにかく敵を倒すことしかしないマリオ」
この一文を読んだときわたしは涙を流しながら口の端を緩ませた。
高校卒業後ぐらぐらした精神状態のまま就職をした。数ヶ月前までは黒板に向かい授業を受けていたのにあれよあれよと慣れない環境にお邪魔し見事に体調を崩した。
迷惑をかけてはいけない頑張らないと...。頑張れば頑張るほど空回り、元からそうですよって顔を作り社交的なふりもした。右も左もわからない状態で毎日が不安との闘い。与えられた仕事をこなすことに精一杯でもう周りを見る余裕なんてなくなっていた。もうなにがわからないのかわかりませんを体験し考えすぎる性格と人見知りゆえ辛いと声を上げることすらしなかった。
心配してくれた人の手を振り払いキツく当たる姿はまさに敵を倒すマリオと化していた。「悩めるマリオ」には取り残されたままの18歳のわたしがいた。
「あまりの不器用っぷりに愛しさが込み上げてくる」さおりさんの言葉はふわふわな毛布のようで初めて自分のことを抱きしめてあげたいと思いました。

#ねじねじ録 #みんなの文藝春秋


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?