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<極北カナダ>犬といく夏の山キャンプ

先週末、妻と愛犬テンシと共に夏の山キャンプを行った。極北カナダのユーコン準州から車を走らせること4時間ほど。隣のブリティッシュ・コロンビア州北部のアトリンという集落へ到着した。

アトリンはゴールドラッシュで開拓された街であるが、今は人口500人前後の小さな街で、巨大なアトリン湖の麓にある。アトリンの周辺には氷河で削られた山々がそびえており、街の郊外からは遠くにローウェリン氷河も見ることができる。この氷河の向こうは南東アラスカと繋がっており、山を超えると太平洋と温帯雨林の世界が広がっている。

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一日目は夜に到着したため、直接郊外のキャンプ場に向かった。街のボランティアによって運営されているキャンプ場で、手作り感がある簡素なキャンプ場だ。もちろん水場や電気などはない。ただテントを張るか、RVなどのキャンパーで泊まって楽しむシンプルな森のキャンプ場だ。今年も蚊が多い夏のため、蚊除けスクリーンの中にテントを張り、蚊に悩まされることなくゆっくりと一晩を過ごすことができた。

翌日は早速山へ向かうため、トレイルの入り口まで移動した。今回登るのはモナークマウンテンと言われる山で、日帰りハイキングにはちょうど良い山である。今回僕たちが試したかったのは、愛犬テンシが自分で犬用のバッグを持って歩くことができるかということだった。

テンシはアラスカン・マラミュート の血が多く入っている。マラミュート は寒い極北で育った犬種で、古くから荷物を背負って運んだり、時にはソリを引いたりして人間と暮らしてきた犬である。テンシもソリ犬としてはデビュー済みだが、まだ荷物運びのパック犬としての可能性は未知数であった。

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早速犬のパックをテンシに取り付け、犬用の餌や人間のスナックなどをパックの中に入れていった。嫌がるそぶりも見せず、そのまま立ち上がって出発。1泊2日の山旅の始まりだ。トレイルはアスペンやトウヒが混ざった森から始まる。ちょうど夏の花が綺麗な時期で、ウサギギクが美しく咲いている。高度をあげていくにつれ、巨大なアトリン湖が見えてきた。アトリン湖は791平方キロもある湖で、先住民のクリンギット族の言葉で「大きな湖」を意味している。

(↑今回の旅の短い動画です。ご覧ください。)

先週はカナダで熱波が発生したこともあり、この時もその余波で通常よりも暑い気温であった。極北ユーコン周辺の夏は、平均最高気温が20度前後である。だがこの時は日中は30度ほどまで上がり、寒い気温に慣れている極北の人にとっては暑すぎるぐらいであった。

極寒に強いテンシにとっても、この気温はなかなか大変なようで、いつも以上に暑そうだ。(テンシは冬はマイナス20度でも、外で小屋なしで平気に寝ます。)ましてや今回は荷物も背負っているので、尚更であっただろう。ハイキングは頻繁に休憩をとり、テンシを休ませることにした。

森を抜け、木のないアルパインツンドラに出ると、景色は一気に広がってくる。ワスレナグサやコケマンテマといった小さな高山の花が現れ、その小さくも華麗な姿に息を呑んだ。極北カナダは絶景と大自然が売りであるが、このような小さな花の存在が心をホッとさせてくれる。

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体力のあるテンシは寄り道をしながらも先に歩き、妻と僕は後からついていく形となってしまった。先を行くテンシが急に走り出したかと思うと、その先には残雪があった。雪の上まで走っていき、雪を食べたり、雪の上で転がったりしながら体を冷やしていた。さすがは冬に強い極北犬である。

稜線を歩きながら、今日の野営地を探していった。頂上付近には小さな湖が見えたので、そのほとりでテントを張ることにした。山の上ではキャンプ場の施設がないため、特別な規制がない限りはどこでもテントを張って良いのだ。広大な極北カナダは、大地のほとんどが原野である。人がほぼいないか、全く見かけることがない場所で野営をする自由が存在する。

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https://arai-tent.co.jp/lineup/tent/doma-ms.html

襲ってくる蚊と戦いながら、テントを張り終え、夕食をさっと食べてテントの中に入り込んだ。外にいると常に蚊が襲ってくるため、テントの中でゆっくりするのが一番である。前回の帰国中にアライテントのドマドームのメッシュ版を買っていたのだが、このような蚊が多い時には多いに役立つテントだ。(このテントは前室が土間のような役割をしており、またメッシュ版は虫が入ってこれないようになっているため、テンシが前室スペースで蚊の心配なしに寝ることができる。)パックを背負って疲れたのか、テンシはすぐに横になり、寝息をたてながらすぐに眠りに落ちた。

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我々人間はすぐには寝付かず、白夜の夕焼けをテント内から眺めたり、本を読んだりしてゆっくりとした。カナダの僻地に住んでいても、そして自然の中に住んでいても、やはり普段の生活は忙しくて慌ただしい。こうして自然の中に出てこないと、ホッとするひと時はなかなか過ごせないものである。

翌日はテントを撤収し、軽くなったパックをテンシに着けて山を降った。トレイルの入り口の駐車場についた時には、テンシはどこか誇らしげであった。荷物を運ぶということは、マラミュート犬にとってはごく自然なことなのだと思う。荷物を運べることを証明したテンシを、もっと積極的に原野のキャンプに連れて行こうと思う。極北カナダには、一生かかっても歩ききれないぐらいの、広大な原野が広がっているのだから。



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