中学校の国語の授業 説明文編③ 評論の論証構造

同じく中学校第二学年の国語科では、「C読むこと」領域の言語活動例においてはじめて「評論」という文言が用いられています。
『解説』では、この「評論」について「物事の善し悪しや価値等について書き手の考えを述べた文章」と定義をしています。
「物事の善し悪しや価値等」について自己の「考えを述べ」るには、自己の中での判断基準がなければなりません。つまり、「評論」とは自己の判断基準(自己の中の物差し)で対象を評価する表現であると言えるでしょう。
そこでは、当然のこととしてその判断基準となる「理由づけ」を省略することはできません(中学校第二学年以前ではこれが省略されていました。皆が知る常識が「理由づけ」であったからです)。
この判断基準が、数学の合同証明における「理由づけ」(合同条件。数学分野において公理・定理となるもの)いうことになります。数学において「理由づけ」の存在、そしてその重要性を理解できたからこそ、この「評論」の指導が可能となるのです。

中学校第二学年国語科「C読むこと」の指導事項イは「文章全体と部分との関係、例示や描写の効果、登場人物の言動の意味などを考え、内容の理解に役立てること」となります。
『中学校学習指導要領解説・国語編』では、この指導事項の説明的な文章の読解に関する「文章全体と部分との関係」を考えさせる指導について、「各段落が文章全体の中で果たす役割についてとらえ」ることの重要性が示されています。
この文言を論証という観点で分析してみると、「各段落が文章全体の中で果たす役割についてとらえる」とは論証の構成要素(「データ」「理由づけ」「主張」)のどれに関連するものであるのかを把握するということになります。
「評論」における「書き手の考え」とは「主張」を述べる段落に表出します。「評論」を①で示した日常生活における論証指導に活用していくのであれば、まずはこの「主張」を支える「データ」「理由づけ」を述べる段落を確実にとらえさせていくことが大切になります。
そして、そのとらえた「データ」「理由づけ」が蓋然性の低いものであったなら、蓋然性を高めていくための段落(例:「データ」を支える根拠となる具体例などを述べる段落)をもとらえさせていくことになります。そのような指導を通して「評論」の「文章全体と部分との関係」がとらえられることになります。

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