⑨ 日常生活における論証2

⑧で述べてきたことをまとまてみますと、日常生活における論証とは人文・社会現象を扱うものであり、「データ」や「理由づけ」が蓋然的になりがちになるため「主張」の説得力が高いとは言えないものとなります。だから、説得力を高めるために、「データ」や「理由づけ」の根拠となる具体的な事実を複数位置づけて、そこから帰納的に「データ」や「理由づけ」が導かれたようにしていく工夫が一般的に用いられています。
ここで「データ」「理由づけ」の蓋然的になる理由を「判断されたことや考察されたこと」(=思ったことや考えたことなどの目の前に具体的に示せないこと)とすると、日常生活における論証の一般的な構造は以下のようになります。

    根拠となる具体的な事実
        ↓ *帰納
     判断・考察(データ)
        ↓     根拠となる具体的な事実
        ↓        ↓ *帰納
        ↓ ←←←← 判断・考察(理由づけ)
        ↓ *演繹
       主 張           

このように、日常生活における論証の構造は、帰納的思考と演繹的思考を駆使する重層的な構造であると言えるのです。よく、日常生活の作文や人文・社会系列の論文などを「序論・本論・結論」という構成で表現せよなどと言われていますが、そのような平面的な構成では決して表現できるものではありません。
以降は、「序論・本論・結論」という構成と日常生活における論証の構造の関係性について考えていきます。

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