⑥ 学生の表現ⅱ

記事④⑤で示した講義で「会議」「話し合い」における説得力の高め方を理解した学生に対して、最初に書いてもらった表現(記事①に掲載)の説得力を高める(「むすび」を強くする)講義を行いました。

まずは記事④の講義内容である「なか」を多種多様にしていく
 (ルービックキューブの小さい四角を増やし色を濃くしていく=アリの目になる)ことを応用させて、「なか③」を加えさせました。
学生は以下のような「なか③」(強調文字で示したところ)を書き加えていました。この学生は、これを加えたことによって「まとめ」が強くなったことを実感していました。

次に、記事⑤の講義内容である「むすび」に導く「まとめ」を複数にしていく(ルービックキューブの複数の色が見えるようにする=トリの目になる)ことを応用させて、もうひとつの「まとめ」とその根拠るなる具体例である「なか」を加えさせました。
学生は以下のような「まとめ」と「なか」(強調文字で示したところ)を書き加えていました。学生は、これらを加えたことによって「むすび」が強くなったことを実感していました。

 * 二つの観点で書き加えた学生の表現
「はじめ」私は先日3年生の先輩方の看護研究発表会に参加しました。
「なか①」ある先輩は、なかなか心を開いてくれない患者さんに対して、ただひたすらに話しかけるのではなく、相手の行動をよく観察し「時間に正確な方だ」と性格を把握したら、朝にその日の詳細な計画を書いて渡したということでした。そしてその後はよい人間関係が築けたそうです。
「なか②」またある先輩は、患者さんが安心して入院生活をおくれるように、何度も何度も看護計画を練り直したそうです。その結果、その患者さんは笑顔が増え安心して入院生活をおくることができたということでした。
「なか③」さらに、その先輩はカンファレンスの時に看護計画の中の自分の気づきを細かく伝えるようにしたところ、チームとしての計画も軌道が修正されてより患者さんのためになっていったということでした。
「まとめ」看護研究会に参加して、看護には単に知識や技術だけでなく、実際にその場に応じた観察力や判断力が大切なのだということがわかりました。
「なか①」先輩方の発表の内容はとても大変そうなものばかりでした。しかし、先輩方の発表する姿はみな笑顔でした。自分のがんばりで患者さんが笑顔で安心してすごせることは、きっと大きなやりがいにつながるのでしょう。
「なか②」また、患者さんが退院するときなどはとても喜んで心からの感謝を伝えてくれるということでした。一生懸命に考えた看護が患者さんにも伝わり、心と心がつながったといえるでしょう。
「まとめ」看護には知識・技術、観察力・判断力と多くのものが求められます。それを身につけるのは大変な努力が必要です。しかし、大きなやりがいがありとても楽しい仕事だと思いました。

「むすび」これからは、ここで学んだことを生かして一人前の看護ができるように努力していきたいと思います。
(新たに組み入れたものは強調文字にしました)

学生の表現はどのように変わったのでしょうか。
まず、「なか③」を新たに入れたことによって、「まとめ」で述べている「観察力や判断力」が患者との関係性だけでなく医療チーム全体にとっても大切なのだということに広がりました。
そして、「まとめ」に新たなものを組み入れたことによって「むすび」がより強くなって説得力があるものとなっています。
具体的に言えば、最初の「むすび」である「ここで学んだことを生かして一人前の看護ができるように努力していきたい」という表現はその「努力」が消極的なものであると言えるでしょう。現在学校で学んでいる「知識や技能」の他にも「判断力」等の求められるものがあるから「努力しなければならない」ということになります。これに対して再構成したものは積極的な「努力」と言えるものでしょう。「やりがい」とは職業選択における重要な観点であり、その仕事に対する幸福度を示す指標です。つまりこの「努力」は自身が幸せになるためのものであり、そのために積極的に取り組むものになったと言えるのです。

このように、論理についてその内容面を理解(特にルービックキューブを用いた論理内容に関する理解)したことによって、学生たちは「より広く」そして「より深く」自分を見つめることができたのです。

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