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場所になじむ

大阪に住み始めて1年半くらい経った。

まったく知らない土地で住むのは初めてのことで、最初のうちは毎日散歩をしたり出歩いてみたり、どこか他人事のような気持ちを持ちながらの暮らし。

そのうちに用意してきたお金が底を尽き、飲食店でアルバイトを開始。そこで働き始めてから、ようやく大阪という場所に住んでる実感が湧いてきた。

「そこにサラ置いてんけどな」

━━━ サラってのは皿じゃなくて新品のことか、そうか。

「これおいしそうやな。これいこか」

━━━ 大阪の人って行くという意味じゃなく「いこか」「いける?」みたいな言い回し、よくするよなぁ。

人と話し始めてようやく私の大阪の生活が回り始めた気がする。場所は、人なんだな。

「語学留学に行くときには人と一緒じゃなくて1人で行った方が早く身につく」って、そういえば何かで見たことがある。

大阪弁を習得したいわけではないけど、自分の周りにコミュニティができたりその地の人と会話をすることで、場所が自分に入り、自分がその場所に入るのかもしれない。

「あ、そういう意味ですか!私もまだまだですね」

そうやってヘラヘラ返すとき、たまにつられてイントネーションがにわか関西弁になる。なんて、そんな記事を書いていたら、降りるはずの駅を通り過ぎた。

「まだまだやな」

バイト先のお姉様の声が聞こえた気がした。

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