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家族と渡った日間賀島

「いつかみんなで旅行に行きたいね」

そうやって言うときの「いつか」は、永遠に来ないで幻となるのが常だと思っているのだけど、そんなジンクスを打ち破った。

実家の家族と私たち夫婦が日間賀島ひまかじまに渡る日がやってきた。

日間賀島というのは愛知県民ならばかならずと言っていいほど知っている三河湾に浮かぶ小さな島だ。

ぼうっとするにはもってこいの穏やかな時間が流れ、遠くに行くには疲れるけれど非日常を味わいたいときにピッタリ。

当日朝、快晴の光を感じながら大阪からのエアコンガンガンドライブを楽しみ、実家での挨拶もそこそこに全員そろって港へと出かけた。

車を指定の場所に止め、ひと足地面につけるとピルルルと頭の上の高いところでトンビが鳴いた。

「もう出て行きましたんで〜待っててくださいね〜」先ほど電話した宿の方の穏やかな声に癒されながら、港で待つこと数分。

おじさんが操縦する船がさっそうと到着。空と海がひと繋ぎになったようなこの景色、ワンピースはここにあったのか。どこを切り取ってもイイな。

程よい揺れを感じながら20分弱、海と縁のない生活をしているために「わぁ〜海だ〜」と呆けていれば酔うまでもないあっという間の船旅だ。

あぁ、この人の少なさがいい。コロナ前はもっと夏のピーク時は観光客で賑わっているイメージだったけど。

もしかしたら海辺の人の少なさは殺人的な暑さのせいもあるかもしれない。

宿に到着して窓から外を見ると、生活感のある街並み、帰ってくる船、夏を感じる雲。日が沈んでいくまでいつまでも見ていたい風景があった。

それはそれでいいけれど、やっぱり散策もしたいので夕食まで少し散策。

この日間賀島はタコをシンボルとしていて、いたるところでタコに出合える。

マンホールも
車にも
地面に突然

冬にはトラフグが絶品らしく「多幸(タコ)と福(フグ)の島」と縁起のいい呼び名もあったり。

日が沈んでゆく砂浜

程よくカロリーを消費したところで先にお風呂を済ませ、別部屋の家族と一緒にお待ちかねの食事タイムだ。

今回は初めての家族大集合ということで奮発メニューを選択したこともあり、期待に胸が躍る。

和室にテーブルって、なんか背徳感があるのは私だけだろうか。畳の上にベッドを置いている寝室とかもドキドキする。

日間賀島の宿で食事をするときに1つ覚悟しなければならないのは、マジで量が多いことだ。海の幸を1食でまるごと胃袋に収納する覚悟で挑むのだ。

味は文句なし。ひと口ごとに家族から「幸せ」「うまっ」と言葉がもれる。

伊勢海老!
絶対食べたい大アサリ

タコの島たるゆえん、この1匹まるごと提供されるタコは、セルフでハサミで切って食べるのだ。なんたるぜいたく。

ダメ押しのタイ

夫はカニが食べられないのだが、ここのカニは食べられると一心不乱にほじっていた。

最初こそ写真を撮って1つ1つこんなところがすごい、大きいなどと熱心に感想を共有していたファミリーも、次第に話すひまも飲むひまさえなくなっていった。

アジフライもたこめしもあったのに、写真がないところからもう余裕のなさが伺える。それぞれがお腹をさすりながら前傾姿勢で部屋に戻った。次回には胃袋レンタルを強く希望する。

さて、ここで旅行を締めくくってはもったいない。旅行の楽しみは部屋に戻ってからにあり。

父がこの日に持ってこようと買っておいてくれたお酒が登場。

豪華かよ〜

お酒も入り饒舌になった家族とのフリートークタイムはマシンガンだ。夫は初めて輪に入ったはずなのに初めてとは思えないほど不思議に溶け込んでいた。

距離的なこともあってなかなか会えないけれど、やっぱりリモートで会話をするのと実際に卓を囲んで笑い合うのでは距離が違う。

その日は県内で花火大会があって、BGM代わりに流すテレビ中継が会話に花を添えた。

花火大会や各地のお祭りもようやく通常通りに開催できるようになって、やっぱりこんな夏がいいよねなんてほろ酔いで語り合った。

覚悟はした通り、翌日は軽い頭痛とともに目覚め。昨晩あんなに食べたのでもう絶対に食べられない、絶対にだ。

おいしそうすぎますって。これぞ毎日食べたい日本の朝ごはん。食べました。姉にいたってはごはん3杯おかわりしていた。

夫は早朝から起きて島を散策してきたらしく、やけにさわやかな顔で「ここはドラマで見たところで」「ブランコがあった」なんて1枚1枚説明しながら写真を見せてくれた。

「一緒に行く?」と振り返る夫に寝ぼけまなこで「いってらっしゃい」と言ったあとの話だ。

優しく温かい宿の方達に別れを告げて、干物やお菓子などおみやげを買って港に向かう。

多幸まんじゅうというお菓子がお店のオススメで、焼きたてを買って店の外で食べた。

あんこが温かくておいしい

船に乗り、来たときとは少し違う気持ちで海を眺めながら島に別れを告げた。

駐車場に戻ると昨日と同じようにトンビが飛び回っていた。

とても短かかったような気も、長かったような気もする。

島の時間はゆったりと流れていて、島の方たちはあくまで自分たちのペースで過ごしている。

家族が初めてそろって顔を合わせるという場所には島の緊張感のなさがありがたかった。

車の入れないような細い道を縦横無尽に走り回るバイクも、観光客に穏やかに語りかける顔も彼らにとって日常で、私たちにとっては非日常というのはすごく不思議だ。

またみんなで行こうね。今度も幻にはしたくない。

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