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伊勢詣

薄曇りの少し湿度の高い日、久しぶりに伊勢神宮を参拝した。節目節目でお詣りに来たくなる。前回は昨年10月だった。もちろん感謝を伝えるのが大目的であることは変わらないのだが、密かに伊勢うどんを食べるのを楽しみにしている自分がいる。正宮で厳かにお参りしたあとは、伊勢うどんの映像がちらつき、味がじわりじわりと口の中に蘇ってきて、足元もおぼつかなくなる。

昔はちっとも美味しいとは思わなかった。むしろ、不味くて、よくこんなものが続いてきたなぁと思ったものだった。ふくすけでたべるまでは。

四年前、家内が食べたいと言うので、いやいやながら、列に並んで食べた。そこから、私の見方は180度かわってしまった。めちゃめちゃうまいのだ。やわらかいうどん、濃い醤油の味が後を引き、心をとらえて離さない。

今日は平日で空いており、並ばずにすぐ席に着けた。店のおばちゃんが「10番さ〜ん」と呼ぶ。わたしは、念の為自分の持つ札の番号を確認し、「はい」と手を上げる。手渡された伊勢うどんをまじまじとながめ、待ち切れずに割り箸を割って、口に運ぶ。うん!これ、これ!と言いながら、幸せを噛みしめるのだ。そして思う、これが食べたいから、伊勢に来ているのかもしれないと。


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