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軽井沢(初日①)

天気予報通り、今日の軽井沢は雨のため、出発時間を遅らせ、9時32分東京発のはくたかに乗車した。車内は空いており、三人掛け席に家内と二人一席あけて座った。

大宮駅の手前で新幹線が急停車し「停電のため緊急停車した」旨のアナウンスが流れた。先を急ぐ旅でもないし少し暗い車内で新聞を読み続けた。

停電の原因はよくわからなかったが、幸いにも20分遅れで再開した。軽井沢駅からは信濃鉄道に乗り継いで中軽井沢まで行く予定だったが、この遅れだと10時50分発の電車にギリギリ間に合わない。空腹状態で次の電車まで40分も待たなければならないかと思っていた所、軽井沢駅到着前に「信濃鉄道長野行きの電車はお乗り継ぎのお客様をお待ちしての発車となります」との朗報あり、ほっとした。やるやん信濃鉄道。

軽井沢駅に到着するやいなや、急いで階段を昇り改札を通過して信濃鉄道の電車に乗り込んだ。席は十分にあいており、家内と二人並んで座れた。

中軽井沢まで4分の乗車。「間に合って良かったね、でも、やっぱり新幹線乗る時は、いつ閉じ込められるかわからないから、水と食料は少しでもリュックにいれておいたほうがいいね」と家内。「たしかにね、あれで4時間5時間も停車したままだったらきつかったよね、すごいね、ちゃんと次に活かすんだね」と感心していると「そうだよ、当たり前だよ、そのことを教えてくれるために今回停車してくれたんだから!」と言われた。あれっ、以前からそんな考えしてたっけ、と思ったが、素直にその通りだと思うことにした。

中軽井沢駅に到着すると霧のような小雨が降っていた。持参した折り畳み傘を広げて歩き、目的のお蕎麦やさん「かぎもとや」の暖簾をくぐった。

11時過ぎでまだ早かったからか、席はいくつも空いていた。「お好きな席にどうぞ」といわれたので、家内と迷いに迷い、一番奥のテーブル席に座ろうとすると「すみません、空いている席にお願いします」と言われた。その席はまだ片付けが終わっていなかったからだ。そりゃそうだよな、と恥ずかしさを顔に出したまま、違うテーブルに座った。

壁には有名人の写真やサイン入り色紙がいくつも貼ってあった。家内はけんちんざる、私はもみじセット(ざる蕎麦、天麩羅、けんちん汁)を注文した。ほどなくして、けんちん汁と天麩羅が運ばれてきた後、メインのざる蕎麦もテーブルに置かれた。

薬味のネギとわさびを蕎麦にのせ、つゆにさっとつけて口に運ぶと蕎麦そのものの味がじわっと広がる。「やっぱり、美味しいなあ」満足して呟くと、ほぼ同時に食べていた家内も「うん、めっちゃ美味しい!」と笑顔。ぶつ切りの野菜が沢山入ったけんちん汁も優しい味で体も暖まる。夢中で蕎麦をかき込んだ後、ゆっくり蕎麦湯を戴いた。

食べ終えた頃に席はすべて埋まっていた。後から入ってきて斜め前に座った客(若者)が、メニューを一瞥し、迷い無く「きつねうどん」を注文した。えっ、蕎麦屋に来て蕎麦を頼まないの?そんな人いるの?と家内と驚いていると「あっ、うどんって言ったか、すみません、てんざる、でお願いします」とすぐに注文を訂正していた。あの自信満々の注文はなんだったのか、こちらの話し声がきこえたかもと少し焦った。

メニューを再度見てみるときつねうどんは1000円で、かなり高価(ざる蕎麦の950円を上回っている)だが、老舗蕎麦屋がつくるきつねうどん、一度食べてみたいかもと興味が湧いてきた。しかしながら、次に来た時、蕎麦を頼まずきつねうどんを注文することが果たしてできるだろうか、たとえ出来たとしても後悔しないだろうか、などと思いを馳せながら店をでると、雨は止んでいた。

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