ファイト•クラブは反西洋思想

とても面白いポッドキャストで、ファイト•クラブを人生のバイブルにしている人はちょっと…(ここは濁している。良心故か)という発言があった。

とても尊敬している人故に、看過できない感覚を持ち、大雑把にファイト•クラブが意図していることを列記してみる。
表面的に誤解を生みやすいエンタメ作品であること、というか、ガチンコ•ファイトクラブのせいだろうけど漢•衝動みたいなところにフォーカスされすぎることに誤解があることを主張したい。

1、冒頭 消費社会への批判
主人公はダイソンやIKEAなどの高価な品に囲まれているものの、満足できない。自分にとっての価値が分かっておらず、マーケティングで創り出された価値を信奉してしまっているから。
そして、反消費社会として、すべて爆破する。

2、エピソード1 不眠症の原因 身体性の欠如
主人公は生きる意味、痛さを求めている。痛みを感じるためにケアグループに出入りする。自分より辛い人々を間近に感じることで癒される。
そして、痛みを直接的に感じることができる暴力にハマる。

3、エピソード2ブルシットジョブ 無意味な労働
主人公は損害保険の仕事をしており、資本主義社会においてはいわゆる勝ち組。しかし、まったく働きがいを感じられておらず、損得で判断しているだけで、命については軽んじている。
そして、上司に暴力(自傷行為だけど)をふるい、クビになる。

4、エピソード3資本主義の事故増殖てき醜さ
主人公は資本主義社会でお金を稼ぐ。たとえば、脂肪吸引された脂肪を盗んで、高級石鹸として販売する。たとえ…あと何かあったけど忘れてしまった…
そして、資金を得てテロを遂行する。

5、エピソード4官僚主義•ファシズム
主人公はケア階級の若者を組織して、軍隊をつくる。ケア階級は上流階級に仕えたフリをしながら反抗する。(給仕に排泄物をまぜる)
そして、資本主義の象徴であるビルを爆破する。

6、ラスト9.11の予言
主人公が組織したテロリスト集団はクレジットカード会社の入居する高層ビルを爆破する。明らかに資本主義への象徴的暴力。
そして、ピクシーズのウェアーイズマイマインドが流れ、マーラ(欲望•ガールフレンド)と手を繋ぐ。

他にも、ポスト構造主義のヒーローである、ドゥルーズ•ガタリが引用されていたり、古典的にフロイトの思想が差し込まれていたり、都市の均一さ(グローバリズムの悪いところ)が描かれている。

切り口が多様であり、単純にエンタメとして楽しめるのがこの映画のよいところ。ブラピとエドワードノートンはそれぞれかっこいい。

反西洋思想は、西洋に触れた者の近親憎悪。東洋からはこんなに攻撃性のある憎悪は生まれない。
ウサマビンラディン(確か西洋文明に触れたエリート階級)は西洋から生まれた反西洋思想(オクシデンタリズム)の化け物だった。

ファイト•クラブは、西洋思想•資本主義•消費社会•個人主義•官僚主義って何かおかしくない?っていう問題提起の映画として読める。
ハヤカワで復刻されたパラニュークの原作を読むともうすこし解像度が上がるかも(読んだけど記憶薄)

プラダを着た悪魔と同列にするのはどうかなと思ったけど、プラダを着た悪魔をみたことがないから観てみようと思った。

感謝(驚)