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得意なことに全力を尽くせるような組織作りを始めた

こんにちは。DeployGateの藤﨑です。記事見出し画像はChatGPTにこの記事を読んで描いてもらいました。

11月が終わり、デプロイゲート社の8期目が終わります。今月は、会社の経営チームで「得意なことで全力を尽くせるような組織作り」を目指し始めたので、その背景を書いてみようと思います。

我々の経営チームは、今年8月に「いいプロダクトを継続的に作る」という方針を立て、10月に合宿で現状理解を深め、そこからこれまでのプレイングマネージャ的な動きではなく、経営者として俯瞰的に物事を捉えて動いていく体制への変化を始めました。

経営者が「火消し」を続けてはいけない

私たちデプロイゲート社の経営チームは3人です。3人とも手を動かすことができ、それ自体も好きでやっていることだったので、会社として独立してからここまで、日々浮かび上がる課題に対してリアクティブに全部対処していく、いわゆる火消し(firefighting)スタイルが続いていました。特に最初のうちはそれで上手くいくし、むしろそうするしかない。時折、未来を描くということをやり、各々の役割が変化していくこともありましたが、それでも基本の居場所は日々の現場。そんな動き方でした。

一方で、組織もプロダクトも、それぞれの成長のフェーズで経営者という役割に求められるものが大きく変化することは想像に難しくありません。立ち上げたばかりのスタートアップと、上場している大企業で、経営者が同じことをやっているわけがありません。当たり前だ、と分かっていながらも、今の自分達がどのフェーズにいるのか、ということに意識的でいることはとても難しいです。ましてや、現場の状況をすべて把握している状態では、経営として合理的な判断をする必要がある場面においても、目の前の課題や制約が暗黙の前提として入ってしまい、判断がどんどんと複雑化していきます。

昨年から今年にかけ、私自身が現場で手を動かすことが減り、冷静に物事を考えられる余白ができたことで、ようやくこれまで我々が重ねてきた失敗の根幹にあるものが見えるようになってきました。

現場に溢れているタスクを、自分が拾うしかないと思って拾う。それはプレイヤーとしては正しいけど、リーダーやマネージャとしては正しくない。どんなタスクも、「やらなければならないからやる」人よりも「言われなくても好きでやっている」人に任せたほうが圧倒的に生産性は高く、効率が良い。ともすれば、溢れたタスクを拾い続けた結果、自分が拾わざるを得ない状態が固定化され、本来の「自分以外に代替できない役割」に割くべき時間がなくなる本末転倒な状態になってしまう。

文字にすれば当たり前なのに、その状況で一歩引いて見るということは難しい。それでも、リーダーやマネージャーは常に意識的に俯瞰している必要がある。ましてや、経営者として予算執行ができ人事権も持っている人が、「いま適切な人がいないから」と自ら手を動かすことを続けてはいけなかった。ワンショットで終わらないなら、組織として漏れている機能を明確にして、自分の手以外で解決される状態を作る、もしそれを阻害する要因があるならそれを取り除いて回る状況を作るのが、本来担うべき役割のはず。

この先、自分だけではなく、「経営チーム」の全員が「経営者」の役割に意図的に時間を投下できる状態にならないと、この状況を抜け出すことはできない——そんな危機感を感じることができました。経営チームは、常に未来を見て、的確なWhatとそれを支えるWhyをクリアにすることに注力する。これまでのプレーヤー経験がたくさんある故に、無意識にHowを考えられてしまうが、経営者としての我々は一切Howを考えてはいけない、ぐらいの振り切った考え方へのシフトを試みる必要がありそうでした。

さてその一方で、もしそうだとするならば、我々自身のやりたいことや得意なことはなんだろうか。「得意なことを全力でやれる組織」にしたい我々経営者自身がやりたいことが「手を動かすこと」だとすると、詰んでしまいます。幸いにも、3人とも手を動かすよりもむしろ手放したい、その先にやりたいことがありました。そして、いまこの場面においても、それぞれやってみたいことがありました。

この理解を持って、我々はこれまでの火消しスタイルから抜け出すべく、これからの役割についての意志決定をしました。代表の自分は、プロダクトの全体の方針と得意とする体験作りに専念します。経営については、方針のみ関わることとし、その後の戦略やオペレーションはhentekoとkazutoに一任します。

とにかく、ワンプロダクトであるこの会社ではプロダクトビジョンがすべての計画に影響します。それにもかかわらず、その明確化はこれまで中途半端にしか行われてきませんでした。ミクロに見れば、うまく計画に落としきれないという私個人の課題でありつつ、これが会社経営上のボトルネックとなっている以上、経営の判断としてはこれこそ最大の優先順位で得意な人に頼っていくべきだ、ということがスムーズに決まりました。とにかく日常的にマイルストーンのアップデートを重ねながら、戦略の中心に据えられる状態を作る必要があります。

その結果、方針を握った後は「この先のプロセスの具体化はこっちでやるんで、raiさんはこの先の議論は入らずさっさとプロダクトビジョンを作りに行ってください」と議論から追い出されました。これまでにはなかった動き方で、「得意を活かす」を優先するいい流れです。

それぞれの強みを理解する

傍目にはちょっとびっくりな「代表を経営戦略の議論から追い出す」提案をすんなり受け入れられたのには、少し追加の背景があります。

議論も途中のある日、「クリフトンストレングスの認定ストレングスコーチがいるので、一緒にコーチング受けてみない?」という提案を妻からもらいました。それを受けて「得意なこと全力を尽くせる状態を作ろうとしているんだから、確かに自分の強みの理解を深めておくのは大事そうだし、渡りに船だな」とすぐにWebで診断を受けてみました。そこで出た結果が、自身の資質についての理解に大きく繋がりました。

私の一番強い資質は「適応性」で、これはまさに火消しに一番向いた素質です。「回復志向」と相まって、課題を解消するプロダクトを作るのには打って付けの資質でありつつ、組織として火消しから抜け出せなかったという理由もここにあり、実際に「成功の妨げとなりうる」と書かれている部分がここに至るまでの課題を見事に言い表しています。

リーダー向け「適応性」解説の一番最初でここ数年の課題をすべて言い当てられてしまった

また、自分自身の理解と同等かそれ以上に、他の人の行動についての理解に繋がったことは大きな収穫でした。

日常において、他人の行動に「何故こうしないのか」と不満や不安を感じることが時々あります。例えば「この人が求めていることは明らかにそれではないのに、なんでチグハグな反応を返しているんだ」と感じるとき、それは、一般的には気付けないことを自分だけが持つ資質によって自然に認識できてしまっている状況、という指摘は目から鱗でした。自分が持つ資質の影響で「当たり前」という認知フレームを持ってしまっているものは、他人にとっては当たり前ではないのにも関わらず、気付かずに無意識に求めてしまっています。ここは明確に言語化しないといつまで経っても伝わらない部分であり、これも振り返ると思い当たることがたくさんありました。

その翌日、会社でkazutoとhentekoにも紹介し、それぞれ診断を受けたところ、経営チームの3人が揃いも揃って全員「人間関係構築力」が強み、という面白い結果になりました。結果は社内のKibelaにも載せていて、それぞれの傾向や強みがより理解しやすくなり、判断がしやすくなりました。

共通の認識ができたことで、「弱みをカバーしてもらうこと」に申し訳なさを感じる必要がなくなりました。「責任感」の強さからか、目標策定や計画も自分が当事者としてやらなければならないと感じてきました。しかし私の強みとしての「目標志向」は14位、「達成欲」に至っては28位で、組織目標や計画の策定を推し進める部分はかなり労力が必要です。

これらは「達成欲」や「目標思考」や「アレンジ」を強みに持つhentekoやkazutoに任せて、あるべきプロダクトの未来を描くという自分にしかできない仕事に向き合って欲しい、が経営チームとしての総意になり、最終的に任せる形になりました。なおクリフトンストレングスでも、強みでない部分は臆せず他の人に頼りながら自分は強みを活かして成果を出していきましょう、ということが推奨されています。

ここまでの流れを経て、自分自身がエネルギーを注ぎ込むべき行動にフォーカスを絞ることができている感触があります。直近プロダクトオーナーとして、ロードマップ作りやバックログ化も一人では進みが悪かったので、PMOとして活躍されている方に業務委託で入っていただきリードしてもらう形になりました。

また、私自身がプロダクトに集中することは、究極的には今後の経営的判断の精度を上げることにも繋がっています。書籍「世界標準の経営理論」の中では、「不確実性の高い環境では、直感的な意思決定の方が優れた意思決定をできる」「ヒューリスティック・直感は、意思決定のスピードを速めるだけでなく、状況によって論理思考よりも正確な将来予測を可能にする」という研究成果が紹介されており、その重要な条件として「その直感・ヒューリスティックが、その人の様々な経験に裏打ちされたものでなくてはならない」とされています。私自身の強みとなっている適応性×戦略性は、まさに経験によって構築されたものであることから、自身がプロダクトの体験作りに集中しながら、ヒアリングや対話を通じて現実の課題解決の試行を重ねて経験を得ることは、この先の予測の精度を高めることに寄与するはずです。

と、ここまで風呂敷を広げてきましたが、今の時点では経営チームとそれぞれ経営メンバーのフォーカスが明確になったよ、という話に過ぎません。結果はこの後の動き次第です。がんばっていきたい。

得意なことに全力を尽くす

時間は前後して、10月の経営合宿を終えた後の話。「得意だったり、やりたいと思うことだけに注力していける状態を作るには、どうすればいいんだろう」ということを考えていた頃、ふとKiyo Kobayashiさんのインタビュー記事の紹介をするさっそさんのFacebook投稿が目に入りました。

「得意なことで全力を尽くした上で、それでもほとんどが失敗する世界。苦手を直したところで武器になんてならないし時間の無駄だよ」

起業直後、全部自分でやろうとしていた時にもらった最初のアドバイスです。その後も何度もピンチの時にはキヨさんのアドバイスに救われました。

Satoru Sasozaki - メンターのキヨさんについての記事がサンフランシスコのメディアから出ました。... | Facebook

そうだよな、勢いのある組織は、得意なことを全力で尽くす、をやっているんだよな。そういう状態になっていきたいな、と思ったのでした。

ひとりではなくチームである今は特に、マイナスをゼロにすることよりもプラスを伸ばしていくことの有意義さを感じます。我々が現状やっていることは、彼らのようなサンフランシスコ・ベイエリアのスタートアップでも、ユニコーン作りでもないけど、とにかく強さを活かせる場作りをやっていきたい。

そこから2ヶ月を経て、実際にそのトライが始まった。そんなデプロイゲート社の第8期の締めでした。いいプロダクトを作るのと同時に、いいプロダクトを作る組織を作る。9期目はダイナミックにやっていくぞ。

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