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自由診療との「絶対に負けない」戦い方

 がんの領域に限らないことだが、医療には「標準治療」と「非標準治療」と呼ばれるものがある。
「標準治療」とは、世界的な研究でその効果が認められ、ガイドラインなどでも広く推奨される治療である。
 一方で、「非標準治療」と呼ばれるものはその逆で、研究などでの成果が認められていないもの。それは、抗がん剤のような薬を使用する場合もあれば、漢方薬やビタミン剤などを駆使するもの、さらには医薬品ではないものを利用したりする場合もある。そして、その実施者も医師とは限らず、薬剤師や栄養士、さらには占い師といった非医療者が提供するものまである。
 当然、こういった治療法には医療保険は効かないことが多く、その治療費は全額が自費になる。よって、「非標準治療」はときに「自由診療」などと呼ばれたりする。

 僕ら標準治療を推奨する医師は、これまで長い間、こういった「自由診療」との戦いを繰り広げてきた。
 これまで聞いたことのないような奇想天外な治療法に、多くの患者さんが騙され、多額のお金をむしり取られ、さらには身も心もボロボロになった状態でクリニックから放り出される・・・。そんな事例を山のように経験してきた。
 SNSでそんな事例を見つけては注意喚起をし、その元凶となるクリニックなどの発言を見つければそれを叩き、患者さんや家族に「目を覚ましてほしい」「そのクリニックについていった先にあるのは絶望の未来だけ」と伝えたり啓発・教育をしてきたつもりである。

 しかし、それでも自由診療に騙される患者さんは後を絶たない。そして、クリニックだって、無くなるどころか年々数を増やしていっているような印象すら受ける。
 そんな戦いを5年くらい続けた結果として僕が思ったことは、
「ああ、これは戦い方を間違ったな」
 ということであった。
 そして、それからは戦い方を変え、そしてようやく「絶対に負けない戦い方」を編み出したのである。

自由診療に「勝つ」とはどういうことか

 そもそも、自由診療に「勝つ」とは何を意味しているのだろうか。
 どういう状態になったら、僕らは自由診療に「勝った」といえるのだろうか。
 騙される患者がゼロになったら?
 自由診療クリニックが全て潰れたら?

 違う。

 僕らの勝利とは、

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