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フン(雄)王命日におもうベトナム建国神話

 今年は南部解放記念日である4月30日、メーデーの5月1日に加え、毎年旧暦3月10日のフン(雄)王命日が4月29日であったため、土日の振替休日を含めてベトナムでは珍しい5連休となった。

 ベトナムの独立記念日は1945年にホー・チ・ミンが独立宣言を読み上げた9月2日。ただベトナム民族の始祖はベトナム民族初の国家であるヴァンラン(文郎)国のキンズオン(涇陽​​)王から数えて18代におよぶフン王であるとされている。旧暦3月10日はフン王最後の18代目の命日であると阮朝カイディン(啓定)帝が1917年に定めたとされ、2007年には現在の共産党政権のもとであらためて「国民の休日」となった。

 日本の「建国記念の日」は日本の初代天皇、神武天皇がグレゴリオ暦で紀元前660年2月11日とされたことから明治6年に明治政府が定めた紀元節をもとに戦後1967年から国民の休日となった。

 フン王も神武天皇も建国神話中の人物であり、実在そのものが危ぶまれる。また、その治世の期間が150年を超えるなど、およそ実際の歴史上の人物とするには問題があろう。ただ近代国家の成立には、自民族をひとつに束ね、民族国家を成立させる上で多少無理のある建国神話でも必要とされる。

 ベトナムの場合、キンズオン王は漢族の信ずる中国古代神話と共通の炎帝神農氏の末裔とされ、「反中」ベトナム人にとってはちょっと不都合な真実も含まれているのだが。

日本ベトナム友好協会東京都連ニュース「ハノイからの手紙」2023年5月号掲載


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