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ベトナムでの「歴史問題」

 先日、日本語教師をしている高齢の日本人女性から相談を受けた。ベトナム人学生に「1945年9月、ベトナムは日本から独立した」と教えたら、学生から、「先生それは違う、ベトナムはフランスから独立したんだ」といいはって聞かない、ホーチミンのベトナム独立宣言の日本語版が手に入らないか?自分も勉強しなおしたい、というものだった。

 1945年9月2日、ホーチミンが読み上げた「独立宣言」には次のようにある。「1940年の秋からわが国は日本の領土となり、もはやフランスの領土ではない。日本が連合国に降伏したとき、全国のわが民族は立ち上がり政権を奪取し、ベトナム民主共和国を築いた。実際に、私たち民族は、フランスの手からではなく日本の手からベトナム国を取り戻した」

 歴史の教科書にも200万人餓死の問題やベトナムが日本から独立したことははっきりと書かれている。しかし、今時のベトナム人学生の頭の中では、抗仏・抗米戦争ですらあやしく、ましてや第二次世界大戦時に日本軍が進駐したなどという話などは信じられないようだ。むしろ昨今の南シナ海での中国の「侵出」の方が現実で、対中国警戒論や強硬論に傾き、中国の脅威に対抗して米国や日本と関係を重視する意見すらある。

 学校教育で日本の侵略を強調する中国のとなりで、実学重視で歴史教育がおざなりになっているベトナム。日本の歴史教育と共にベトナムにおいても歴史教育は再検討が必要なようだ。

日本ベトナム友好協会東京都連ニュース「ハノイからの手紙」2019年9月号掲載

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