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アニメ映画「天気の子」の背景を描いたナムハイアート

2019年公開の新海誠監督のアニメ「天気の子」。エンドロールを観て驚いた。ベトナム人と思われるアニメーターの名前が延々と続いていたのだ。日本のアニメは古くから海外への下請け、孫請けで作られてきた。かつては中国や韓国が下請けの中心だった。今や中国や韓国では独自のアニメが作られるようになり、日本のアニメと競合しつつある。

ベトナムには日本のアニメ制作子会社や下請け会社が何社かある。その中の一つがナムハイアートだ。同社は2D日本アニメの背景を描く専門会社。この10年にわたり日本のアニメの背景を提供し続けている。「名探偵コナン」「ドラえもん」「進撃の巨人」など著名な作品ばかりだ。

同社スタジオ・マネージャーのグエン・クォックはセーラームーン、ドラえもん、ドラゴンボールといった日本のアニメが大好きで、そのマンガを真似して描くような少年だった。長じてもアニメーターの道を捨てきれなかったが、両親は「画家」では食べていけないと心配し、大学では建築学科を選んだ。だが日本語の勉強のためと称して日本にも留学する。

クォックはその日本でナムハイアートの創設者と出会い、同社のインターンとして勤めはじめ、以来十二年間同社で働いている。

日本の元請けから送られてくるスクリプトとラフスケッチをもとにベトナムのアニメーターは自らの才能と直観で背景を描いていく。元請け会社のイメージ通りのものを描き出す。

 同社はアニメ映画の大作である「天気の子」の背景を任された。彼が最も苦心したのはアニメのヒロインが自らの力を使って曇り空から日差しが現れ空が明るくなるシーンだった。彼らは監督・新海誠の過去作を研究することで、意図された背景を描き上げた。新海監督はその仕上がりに満足し、同社に次回作への参加を求めたという。

今は下請けだが、やがてベトナム人アニメーターたちがベトナム独自のアニメを作る日がやがてくるだろうと期待したい。

日本ベトナム友好協会機関紙「日本とベトナム」2021年9月号掲載

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