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2020年3月8日 アン・フーンさん法話「コロナウイルスへの怖れにどう向き合うか」

月に1度全国のサンガが集まって「気づきの日」が開催されていますが、3月はコロナウィルスの感染拡大を防ぐために規模を縮小して開催しました。このような時にコロナウィルスへの怖れにどう向き合ったらいいかについてのお話をアン・フーンさんにお聞きしました。

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みなさん、まずは一緒に座って一つになって呼吸をしましょう。顔、首、背中の力を抜いて、自分がしっかりと大地に根づいていることを感じてください。鐘を3つ招きます。(鐘を招く)

ここにいてくれてありがとうございます。物理的に会うことができなくても、ズームを通してつながることができます。

私たちの息を吸って、息を吐くプラクティスは「Yes」というプラクティスです。自分の身体に、そして怖れやすべてのことに対して「Yes」というプラクティスです。

私たちには「No」と言ってしまう根強い癖があります。様々なことに対して、抵抗したり、苦しんだり、自分にとって嫌なことに対して「No」と言ってしまうのです。

でも、私たちのプラクティスは息を吸って、息を吐くときに「Yes」と肯定するプラクティスです。毎日毎日、入ってくる息、出ていく息に「Yes」と言うことができると、全身がリラックスして穏やかになり、心も安らいで、心が開かれていきます。闘おうとしていた心が開かれていくようになるのです。何が起こっているとしても、心の扉が開かれているということが大切です。そのことによって私たちはいのちの素晴らしさに出会うことができるからです。生きていると感じられること、生きる喜びが自分の中、そして周りにあることを心の扉が開かれていれば感じることができるのです。例えどんな困難なことが起こっていたとしても。

吸う息と吐く息に気づくことができれば、心と身体が一つになり、生きている喜びを感じることができます。その瞬間の「今ここ」がホームとなり、生きていることを感じ、自分自身が安定して揺るぎないものとなります。そしてネガティブなものに振り回されないようになります。

怖れや疑いや怒りなどのネガティブな感情は、吸う息、吐く息に気づくことができると徐々に安定して落ち着いてきます。それは素晴らしいギフトです。

私たちは2年前から計画していたワシントンでのリトリートがあって、それは3月19日から10日ほど行われる予定でした。しかし、このような状況なので、運営委員のメンバーが2日前にキャンセルすることを決めました。それに対して大多数の人は賛成でしたが、中には不満に思っている人もいました。でも、大事なことはこのような状況の中でもプラクティスを続けていくということなのです。2年前から計画していたリトリートをキャンセルした理由は、怖れではなく気づきです。参加者たちがウィルスに感染する可能性がありますから、彼らの安全のために中止することにしたのです。

このコロナウィルスの出来事は私たちに気づきを与えてきれています。私たち世界中の人が大きな家族の一員だと教えてくれています。ある国のある家族の苦しみが、他の国のある家族の苦しみとなるのです。

コロナウィルスは私たちにとって大きな「気づきの鐘」です。世界中に対して「気づきの鐘」を鳴らしています。それは、私たちのこれまでの習慣や、忘れやすさというのを止めてくれる力があります。私たちを目覚めさせてくれるのです。

何に目覚めさせてくれるか。それは、生きているという喜び、奇跡、そして私たちの命が無常である、ということです。

ここで私たちが疑問に感じるのは、このような大きな怖れや不安の中で、タイの教えやブッダの教えが助けになってくれるのか、ということだと思います。

ウィルスはとても小さなものですが、大きな破壊をもたらします。私たちの中の小さな怒りや不安もまた大きな破壊とつながる可能性があります。

私たちの意識の奥の倉庫には怖れや怒り、喜び、幸せ、嘆き、怒りなどの種が貯蔵されています。潜在意識の中にある怖れの種に水やりをすると、怖れが大きくなって芽を出します。そして意識の中に現れるのです。そしてウィルスへの怖れが大きくなって攻撃しようとすると、ウィルスが私たちへの怖れからさらに攻撃しようとするでしょう。

私たちはウィルスを怖れています。毎月の感染者の数などを統計で取っています。しかし、数字に表れる以上に「怖れ」のウィルスがもっと広がり、もっと感染者を増やしています。

我々はどんどん怖れに水やりをして、怖れを育てています。そして、自分の中にある喜びや幸せにふれることをしません。私たちがコロナウィルスを強くしているのです。

なぜそのようなことが起こるのでしょうか?私たちは自分たちが怖れることでさらに周りの生きものを怯えさせています。怖れを感じた人はパニックになっています。

ネガティブな種が強くなり、怖れが強くなると、免疫機能が弱っていきます。免疫機能がバランスを取れなくなりウィルスにはもっと感染しやすくなります。

5つのマインドフルネストレーニングは、このような時にも継続してプラクティスをすることができます。先月1つ目のトレーニングについての話を終えたところですが、その中心にあるのは「苦しみへの気づき」です。

自分の内側にあるコロナウィルスへの怖れに気づくことができた時に、自分の免疫が弱っているということにも気づくでしょう。それに気づくことができれば、どのようにしたらいいかが分かるはずです。

このマインドフルネストレーニングは「コロナウィルスにより自分の内側の怖れが大きくなることによる破壊に気づく」となります。自分の中の怖れが大きくなっていることに気づけば自分の免疫が弱っていることに気づきます。そうしたら、自分の免疫力を免疫を高めるためにバランスを取ることが大切だと分かるはずです。

マインドフルな呼吸に帰って、精進する決意をするということが大切です。それは自分の中の怖れや不安に気づいて、自分の怖れを和らげてゆるめるようにする、という決意です。

怖れや不安は泣いています。それをお母さんが小さな赤ちゃんを抱きしめるように抱きしめることができたら、その赤ちゃんは穏やかになって、さらに強大にはならなくなります。

そして、深いくつろぎの瞑想をやると決意します。早い時間に寝て、遅くまで起きていないようにします。なぜなら、睡眠によって免疫が活性化すると分かっているからです。

そしてマインドフルな動きをすると心に決めます。そのことによって気やエネルギーの循環を促します。

そしてマインドフルに歩くことを決意します。新鮮な空気を吸って酸素をもっと取り入れます。そのことによって、怖れや不安をなだめて、喜びや平和を自分の中で育むことを助けてくれます。

そしてマインドフルに食べることを心に決めます。マインドフルに食べれば、自分が何を食べているのかに気づきます。このような時には消化するのが難しくなります。自分の健康に良いものを選んで食べて、自分の健康にいい食べ方をできるようになります。自分の身体が心地よい状態になり身体がリラックスすれば、怖れは和らぎます。

そして、マインドフルな消費をしようと心します。自分を不安にさせるものにさらさないようにして、喜びや平和や安定をもたらしてくれるものを消費するようにします。例えば、怖れや絶望を拡大させるようなニュースやゲーム、おしゃべりなどは避けます。

そして大きなグループでは集まらないようにします。なぜなら大きなグループだと感染を拡大させてしまう危険性があるからです。

そして、手を洗うことを心します。自分が触るものに対して意識的になり、ドアに触る時には布や紙で手を覆ったり、そのあとすぐに手を洗うようにします。そのようにマインドフルネスのプラクティスを通して教育することができます。自分がそのようにプラクティスをしていれば、周りの人たちもそれを見て真似するようになるでしょう。

そして、砂糖を取ると免疫機能が低下することに気づいて砂糖を避けるようにします。炭酸飲料や氷の入った冷たい飲み物もさけます。

マインドフルネストレーニングは方向を示してくれます。

怖れや不安な気持ちがあれば、コロナウィルスになる前に病気になってしまいます。怖れの炎が自分の中で拡大して、それによって死んでしまいます。

でも、マインドフルネスのプラクティスによってそれを抱きしめることができれば、私たちは方向を変えることが可能なのです。そうすれば、平和や調和、幸せを自分と周りにもたらすことができます。それはこのようなコロナウィルスの騒ぎの時にも可能なのです。大事なことは、怖れや絶望、怒りなどを強くさせないということです。

ワシントンのサンガではいつもは抱きしめる瞑想(ハギングメディテーション)を集まった後にはみんなでやっていました。抱きしめる瞑想は癒しの瞑想です。でも、このようなことになって私たちは「抱きしめない瞑想」もやっています。それは、気づきの瞑想です。

ハグをする代わりにサンガの仲間と一緒に手を胸に当てて深くつながります。一緒に呼吸を楽しみ、お互いを見つめて、そこに生きていること、その人が安全・安心していられること、守られていることの喜びを感じながら深く呼吸をします。これが新しいマインドフルネス・トレーニングです。こんな時でも、平和と穏やかさ、喜びをもたらすことができます。自分自身と世界に対して、安定と喜びをこのような時でももたらすことができるのです。

それでは、一緒に座ってしばらくの間、呼吸をしましょう。吸う息、吐く息に気づきを向けてください。

何かシェアしたいことや、質問したいことなどありますか?

<質問者より>
いつもは20数か所でズームでつながっているわけですが、今日はこのように家から多くの人とつながることができて感謝しています。ここ数週間、人と物理的に会うことは少なくなりました。一人暮らしを何十年としているので慣れているはずなのですが、このような状況の中で近くに家族や親せきもおらず、東京にはたくさんの人がいるのに、気軽に話せる人がいません。家に一人でいて、強い孤独を感じます。今日のお話の中でマインドフルに暮らすことが免疫力を高めるというお話がありました。ワシントンでは「抱きしめない瞑想」をやっているというお話でしたが、それは実際に会うからできるプラクティスかと思います。このような会うことが難しい状況の中で、直接会わなくても繋がっていることを感じさせてくれるプラクティスがもし何かあったら紹介してもらえませんか?

<アン・フーンさんより>
写真を使ったプラクティスができます。サンガのみんなと写っている写真を使ってください。もし、なかったら今は心の中に思い浮かべるようにして、コロナウィルの騒動が収まったら一緒に写真を撮ってください。

自分の呼吸に帰り、テーブルの上などに写真を置いて瞑想をします。物理的にはサンガの仲間が目の前にいなくても、その前に座って呼吸をしたときに、サンガがいることを感じられるでしょう。サンガはあなたの中にいるのです。

今日、家の中で静かに一人で座ってください。呼吸に帰って、平和を感じてください。そして「気づきの日」にサンガの仲間たちと過ごした瞬間、1日を思いだしてください。あなたがサンガのことを思いながら息を吸って息を吐いたとき、とれは自分だけの呼吸でなく、サンガの呼吸です。あなたが息を吸った時に、サンガも息を吸っています。あなたが息を吐いたときに、サンガも息を吐いています。

あなたはサンガの子どもです。これまでサンガの中で多くの時間や日をすごしてきました。あなたの中にある喜びや幸せ、愛の種を育んできたのです。息を吸って息を吐いて微笑んだ時、サンガがあなたの中にいることを感じることができるでしょう。サンガはあなたの中にいます。そして写真を目の前にすれば、より感じやすくなるでしょう。

最初はこの出来事を悲しいと感じるかもしれません。サンガに会うことができなくて寂しさを感じて孤独だと思うかもしれません。まずは、自分の中にあるそのような気持ちに「Yes」と言ってあげてください。

そして、涙があふれるかもしれません。それは幸せの涙なのです。それだけ大切なサンガというものがあなたにはある、ということ。どれだけサンガが大切かを分かることができます。涙が出てきそうになったら、どうぞ涙を流して下さい。

マインドフルな呼吸や歩く瞑想を家の中で続けてください。サンガも共に呼吸し、共に歩いています。あなたはそれを感じることができるはずです。なぜならそこにはマインドフルなエネルギーが強く存在しているからです。サンガというのは一つの身体で、あなたたちは一つ一つの細胞です。

最初は小さな子どものように感じても、呼吸や歩く瞑想のプラクティスをすれば、あなたの中のサンガが強くなります。あなたの家の中にサンガが共に暮らしていることを感じることができるでしょう。

タイの写真があれば、サンガの写真と共に呼吸をしたようにタイの写真に向かって「こんにちは。私と一緒に呼吸をして歩いてください。」とお願いしたら、タイがあなたと一緒になって呼吸してくれていること、歩いてくれていることを感じることができるでしょう。

マインドフルネスのプラクティスによって得られるのは、人と人とのつながりです。それは温かい毛布のように、孤独の寒さを温めてくれます。一人の時にサンガを思い描いて「サンガよ、私は寂しさを感じています。助けてください。」と語りかけたら、サンガが一緒に呼吸をして助けてくれます。

サンガと一緒に過ごした美しい記憶、喜び、平和がそこにはあります。それは自分の内側に存在し続けているのです。だから静かに坐ったり、横たわったりして、胸に手をあてて、その記憶を呼び起こしてください。

サンガやタイを思い描いて「ここにいてほしい」と願うことで、幸せな瞬間が蘇り、過去の記憶が今ここにいる自分を温かい気持ちにさせてくれます。

例えば、私の家にはたまきさんが描いてくれた何年も前のリトリートの名札があります。ここには富士山があって、お花があります。私はこれを部屋において見えるようにしていて、私が大好きなリトリートの楽しい思い出を思いだしています。何年も前の記憶が今私を助けてくれます。

このようにしてサンガを味わうことができます。サンガを思い浮かべれば良い気持ちになります。距離があるからといって私たちを切り離すことはできません。

「気づきの日」というのは宝石のようなものです。一日一日がキラキラと輝く宝石です。今日という日をそのバスケットに入れる宝石としましょう。今日という日は決して繰り返すことができない大切な一日なのです。

(ここで、サンガの仲間のお子さんが自分の描いた絵を見せたいと見せてくれた。ブッダがハートのプレゼントをくれる絵、お内裏様とお雛様の絵、雲とパイナップルとポケモンの絵)

今日は家で、自分の中の子どもを呼んで、絵を描くのも良いですね。それをみなさんの宿題としたいと思います。それに加えて上田さんは俳句も書いてくださいね。

そして今日は1日、この後も「気づきの日」です。もし、自分の怖れが起こってきたらそれもシェアしてください。一人で抱える必要はありません。サンガの仲間とシェアしてください。みんなで抱きしめることができれば、それが強い支えとなります。今ではシェアのための様々な方法があります。メールをしたり、メッセージで送ったりできますね。

悲しみを感じていたり、不安があったら素直にシェアしてください。それを共有しながら共に呼吸をしてください。返事を出す必要はありません。シェアをして、それをサンガの仲間に受けとめてもらうだけで十分なのです。

自分の想いをサンガの大きなゆりかごにそっと置いてください。解答や話し合いはいりませんし、アドバイスもいるません。もしくは、言葉にすることが難しい場合には「私の心の中には今雲がある」「鳥が飛んでいる」「雨が通り過ぎている」などの例えを使ってもいいかもしれません。

今日というこの日を活かして、サンガのゆりかごに自分を預けてください。集合的なエネルギーによって抱きしめられることがとても大切です。

それではどうぞこれからマインドフルな食事を楽しんでください。3つ鐘を招きますので、呼吸に戻ってください。(鐘の音)

(翻訳・書き起こし:Kumiko Jin)

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ティク・ナット・ハン「マインドフルネスの教え」
HP: https://www.tnhjapan.org/
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