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2018年8月11日Wake Upリトリート シスターランニェムの法話

2018年のフランスプラムビレッジ(アッパーハムレット)で開催されたWAKE UPリトリートでのシスターランニェムの法話です。

今日のテーマは「私たちの心を理解する」ということです。ここでの「理解」は愛の文脈での理解を指しています。

BTSというKポップスターがいますね。すごい人気でフランスでも人気があります。彼らの新しいアルバムのタイトルが「Love Yourself」なんです。どういうことを歌っているのかとても興味があります。

自分を愛せなかったら他人を愛することはできません。歌詞の中に「生涯かけて自分を愛することを探したい」とあったのが印象的でした。それは一生をかけてやるようなことなのです。その歌を作った人はタイの本を読んだんじゃないかな?と思います。

愛するということは理解なしには存在しません。理解をすることができなかったら愛することはできません。愛とは理解なのです。

でも、人を愛する前に、まずは自分のことを理解しているでしょうか?

私たちは私たちの身体のことをどれぐらい理解しているでしょうか?自分の身体に気づく、自分の呼吸に気づくということは自分を愛することの一歩なのです。

私たちの中には「顕在意識」と「潜在意識」がある。仏教心理学の中では潜在意識(store consciousness)の中にはあらゆる感情の種(mental formation 心の形成物)が植わっていると考えます。それは51種類あると私たちは考えています。

私たちの五感を通して種に水が注がれます。瞑想をしていたら自分の中の平和の種が育っていきます。でも怒りの種に水を与えていたらそれが表面にも現れてくるのです。そして表に現れている時間が長ければ長いほど、その種と回路は強くなっていくのです。

同じことが起こっても、それに対して強く反応する人もいれば何とも思わない人もいます。私たちの心の形成物は使えば使うほど強くなっていきます。怒りの種に水を与えなければ怒りはだんだんと弱くなっていきます。

自分はそのことを個人的に知っています。昔は何かを言われるとすぐに怒っていました。何か言われると反射的にに反応していたのです。

今は「怒りよ、こんにちは」と言うようにしています。そして呼吸をします。「息を吸って、自分が怒っていることを知っている。息を吐いて、そこに怒りがあることを知っている。」とプラクティスします。

意識というのは常に「何かに対する意識」なのです。マインドフルネスも、呼吸や歩みやお茶を飲むことに対してなど、何かに対してのマインドフルネスになります。「怒り」もそうです。何に対して怒っているのか?それを見つめる必要があります。ただ「怒っている」ではなく、何に対して怒っているのかを見つめることが大切なのです。

あなたがどんな環境にいるのかということはあなたが何を感じるのか、ということに影響します。あなたがいる周りに敵意があれば、それはあなたの中にもあります。あなたのいる環境が平和だったらあなたの中にも平和があります。何について悲しいのか、怒っているのか、何を恐れているのか、それはどこから来ているのか?それを知る必要があります。

意識というのは個人的な意識と集合的な意識があって、私たちの中にはその両方があります。切り離すことはできません。自分が何かを好きだと思っていてもそれは周りから影響されているものなのです。

例えば自分には6歳の甥がいるのですが。ある時にみんなが外で掃除をしていた時に、彼には台所でバケツを洗う仕事を頼みました。そうしたらしばらくした後で「ねえ、何で僕だけが働かなきゃいけないの?」と言ってきたました。それを見て、自分の母親にそっくりだと思いました。母親もよく「私だけが家のことをやらされてる。なんで私だけがやらなくてはいけないの?」と不満を言っていました。だから、彼の中にもそれが受け継がれていたのです。祖母とすごす時間が多い子だったからです。その子がそう言ったのを聞いて「お母さん、こんにちは」とその子の中の私の母に挨拶しました。

お茶を飲む時には「タイ、こんにちは」と語りかけます。私は彼からどうやってお茶を飲むか、ということを教わったからです。私は彼とお茶を飲んでいた時、何かスマートなことを言わなければいけないと思って緊張していました。でも、彼はただそこにいて、ただお茶を飲むということを楽しんでいたのです。だから彼から「ただお茶を飲む」ということを教わりました。

私たちの中には様々な種があります。それは使えば強くなっていくし、使わなければ弱くなっていきます。種も食べ物がなければ生きていきていくことはできません。種の中には健やかな種と健やかでない種がありますが、健やかな種を呼んで長く滞在できるようにすることが大切です。それがより健全な生き方につながるからです。

何に水を与えるのかを選択することが大切です。私たちがやるのは「選択的水やり」です。ネガティブな種が自分の表に現れてなかったら、それには水を与えないようにします。

どんなものが種に栄養を与えるのでしょうか?

4つの食べ物があります。

1つは実際に食べられる食べ物です。どんなものを食べるのか、何を食べているのか、どこからきたどうやって育てられたものなのか、ということが私たちに影響します。

2つ目は五感を通して得られるもの。現代はたくさんの情報がありすぎて、感覚情報を取り込みすぎてしまいます。私たちの気を引こうとするものがたくさんありすぎて、自分を守ることが難しくなっています。学ばなきゃいけないことがあるけれど、ケータイが気になって集中できない、ということがよくあります。

3つ目は望みです。自分の深い望み。自分のやりたいこと、何になりたいのかということが自分に栄養を与えます。ある人は「お金持ちになりたい」「有名になりたい」と願う。でも「自分を愛する人になりたい」「幸せになりたい」と望むこともできる。その望みがあなたをある方向へと導いていきます。あなたが語ることやあなたの行動もそれによって変化していきます。

4つ目が意識です。集合的な意識と個人の意識があります。「人生の目的を見つけることが大切」などは集合的な意識として作られてそれが個人に影響しますね。それ自体が悪いわけではないけれど「そうしなきゃいけない」となった時にプレッシャーになることもあります。

自分をよく見た時に、何を自分自身の栄養としているのかを見ていく必要があります。それが自分自身を知るということにつながります。そして、それが自分を愛することへの一歩となるのです。

(翻訳・書き起こし:Kumiko Jin)
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ティク・ナット・ハン「マインドフルネスの教え」
HP: https://www.tnhjapan.org/
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