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頼りにしてしまうのは

夕食後すぐに走ろうと思っていたが、やはり無理だった。
走り出しだのが22時過ぎ、なぜだか今夜はパトカーをよく見た。年末警戒か?

走っている間、携帯もテレビも見ないので、かなり集中して思考することができるように感じる。今日は。ついさっき起こったことについて、ずっと考えていた。

次男が、なぜ心を傷つけられたのか、だ。
お調子者で、私と一緒にいろいろ失敗してきた中学1年の長男や、我が家の最年少、いつまでも、そしてこれからもかわいさだけでなんでも許されようとする小学2年の三男と違って、小学4年の次男は真面目で誠実だ。
その次男が寝室に上がっていく前、なんとも言えない、困惑した表情で悲しんでいた。
その原因は、別居中の夫からのメッセージだった。

4月に夫が我が家を出て行ってから、約8か月。その間、夫が三兄弟に出会ったのはたった1回だ。8月の下旬、夏休み最後の日曜日だった。
それから4か月、夫と子どもたちのやりとりはなく、子どもたちもどうやって連絡をとればいいのか、彼らなりに悩んでいた。

そして今日、義理の母や姉家族、つまり夫の母や姉家族に私たち4人が出会ってきた。その写真を送って、そこから冬休みの予定を連絡してみよう、という流れになった。
夫とLINEでつながっていた長男のiPadは、長らく成績不振による使用禁止期間になっているため、次男のメッセージ機能でやりとりすることになっている。
意を決して、次男は冬休みの予定を提案した。
夜勤あり、曜日や祝日に関わらず仕事をしている夫は、12月の勤務シフトなら出ているだろう、という私からの情報をもとに、年末の平日の3日間くらいを伝えた。

すると、夫から、
冬休みに会う気がない、
と返信があったのだ。

えっ?どうしたらいいの?
なんて返事すればいいの?
次男は、悩んだ。さすがの私も、別の話題を伝えるように指示し、なんとかやりとりを終えさせた。

夫からの最後のメッセージは

おばあちゃんや△△くん(姉の子ども)に、いろいろしてくれてありがとう(2人が誕生日だったので、会いに行ったことについて)。

返事、どうしよう?
春休みに会えたら……って書いたらいいのかな?
と、次男が相談してきたので、
いや、もういいよ、返さなくても、
と私が言った。

やりとりを終えた後、次男は悲しんでいた。
涙を流すわけでもなく、愚痴を言うわけでもないが、とにかくしょんぼりしていた。
あなたが悪いわけではないのよ、
と次男に伝えた。
それでも。
次男は10歳なりに、より良い方法を模索する人だ。自分なりにベストを尽くして連絡をとり、冬休みに会う計画が立てられることを目標にしていたのに、それが実現しなかったのは、自分の伝え方が悪かったのか、と彼は反省していた。

お兄ちゃんは困っている僕に何もしてくれないし、弟は遊んでばっかりだし、僕はどうすればよかったのか……
次男に今の気持ちをたずねてみると、こう答えた。

別居中の私の夫にとって、子育てや子どもたち、という存在そのものの比重が軽いことは、安易に想像できる。
別居しても、今のところあまり生活に支障がない。子どもたちの方も、父親がいなくなったことで、困っている様子もない。

しかし、会いたい、という子どもたちからのリクエストに応えないほどなのかな、と落胆している私がいる。
私を怒らせたいからか?
単に人手の多い年末年始に出歩きたくないからか?
まさか病気か?
そうだったとしても、子どもたちへのメッセージに配慮もないことに怒りを感じる。
もちろん、子どもたちを矢面に立たせている私が怒る筋合いはないのかもしれないが。

そうこうしている間に、路上で転倒した。
左膝、左肩、そして左の頬がアスファルトに接したことがわかった。両手もついたようだが、先生からもらった手袋で痛みはない。
左膝と左肩は、ウェアの下でジンジン痛みを感じる。
心配なのは左の頬だ。素手でさわっても、ベタベタした感じはない。
流血してるようではないが、擦り傷にはなっているだろう。立ち上がって走り出すが、スピードは上がらない。
まあそれでも、自宅を目指さなければ。
そこには長男が起きて待ってくれているだろう。

今、私が頼りにしているのは、やはり子どもたちだ。
しっかり者で傷つきやすい、真面目な次男、
ぴょんぴょん飛び跳ねるように歩く、かわいい三男、
いい加減だが、母としての私の初めての場面で、いつもそばにいてくれた、長男。
もちろん実質的なことは自分でやるしかない。実家や友達、職場の仲間、様々な人たちの力を借りて、問題に向き合っていかなければいけない。
先生(職場の上司の1人。博識、研究肌)の存在も大きいが、恋愛ごとは、あくまで余暇だ……いや、その余暇も時には重要なのだが。

そんなことを思いながら、自宅に帰る。リビングにつながる扉を開けながら、長男に
えーん、痛かったよ〜、
と、演技がかった声を出している自分は、幸せだな、と思った。

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