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隠したい2人のこれまで

前回、職場の、我々ではない男女2人の人間関係について書いた。
恋愛感情があるのかないのか、よくわからない2人は、かなりオープンに自分たちの親密さを表に出していた。
私と、不倫関係にある先生(研究好き、読書好きなので、この呼び方。既婚者、勤務地が自宅から遠方のため別居中)が、一生懸命隠しているのに、と比較するために書いたのだが、自分たちのことを書ききる気力がなく、途中で切り上げてしまった。

今回は日記というより、ちょっと前のことを振り返ります。テーマは「職場恋愛してると周りで噂になりませんか」という問いに対する回答です。

私の職場に先生がやってきたのは、3年前の春だった。今振り返っても、その時の距離が一番近かった。
席が隣、仕事中に一番長くいる部屋も隣、割り振られた仕事も主要なものは同じ。
ただ、向こうは市外から来た人、知り合いもなく、経歴も人柄もわからないことだらけだった。

最初の連絡は携帯電話番号からのメッセージだった。
休日出勤してみたものの、使いたい部屋の鍵が見つからない……
というような内容だった。

その後も、先生からは些細な頼み事が、その返信として、私からはそれらをフォローするだけでなく、他の仕事の進捗状況や、先生にとって仕事にミスがないように、必要そうな情報を伝えた。

仕事場では、先生の仕事部屋に招かれたり、先生が私の仕事場に入り浸ったり、今から考えても、やり過ぎている部分が多かったように思う。

その背景として、その頃の職場は、今よりずっと人間関係が悪かった。若手、というより先生のようなベテランも含めて、「新入り」に対するあたりがきつかったり、そこここで、密談が蔓延していた。
だから、私が先生に対して必要な情報を先回りして伝えておかないと、先生が失敗するまで誰も教えてあげないことが予想された(私のことや先生との仲を心配してくれていて、先生も頼りにしている優しい女性同僚は、その頃別の職場と掛け持ちで、とにかく時間がなかった)。
コロナ禍も手伝って、みんなそれぞれの個室で仕事をすることが多く、お互いの部屋で話し込んでいたとしても、あまり差し障りがなかった。

ある日曜日の午後、ぐうたら昼寝をしていると、当時まだ、かわいい小学生だった長男が私を起こしに来た。
お母さん、起きて!大変だよ、〇〇さん(先生)が、鍵のことで困ってるって!

鍵は、よくある困りごとなので、さして驚かなかったが、寝起きの私の頭の中に疑問符が出たのは、
なぜ息子が先生の状況を知っているのか、
ということだった。

その頃、初めて長男に学習用にとiPadを持たせたのだが、接続の仕方がわからず、私の携帯と同期する形で使い始めた。その関係で、メッセージの通知も、内容もすべて共有されていたのだ。
他の人とのやり取りは、8割方LINEだったので、全然気づかなかったのだが、さすがにその事実を知った時には、特に問題ないとはいえ、焦った(この頃は、まだ夫と同居していたし、メッセージの内容も、基本的には同僚、としてのものだったのだが)。

次の日、経緯を話して、先生とLINE交換をすると、
そこを、きっかけに、かどうかはわからないが、やり取りの内容が、一気に広がった。
スタンプ機能、おすすめの音楽や動画、子どもたち向けのイベントなど、仕事だけでない情報が多くなった。

ただ、ずっと仲が良かった訳ではない。
以前にも書いたが、先生の機嫌を損ねて、口もきかない、なんて時期も、よくあった。
私も恋愛感情というより、年上だし、尊敬できるが、世話のやける同僚、という感じだった。

秋になり、今回のテーマである「噂」について、大きな出来事が起こる。
噂どころではなく、上司からの指導、という形で表面化したのである。

なぜ指導が入ったのか。
先生が異動してきて、半年が経ち、先生の才能というか、働きぶりや影響力の大きさに悪意……嫉妬が1番近いと思うのだが、そういった負の感情を抱く者が、行動に出たのだ。
私より一つ年下の、何かとネガティブな発言の多い、男性の同僚である。よく発熱(流行していた病ではなく)し、お腹をすぐ壊す。そして、病気で休む日の前には、大きな声で自分の体調不良をアピールするのである(腹が立つのは、仕事に対してやる気がないのに、軽めの管理職試験だけは受験して、あっさり受かり、なんなら私たちより、ちょっと多めの収入を得ているのである)。
彼の担当していた仕事を、先生が引き継いだのだが、そのおかげで、みんなにとって仕事がやりやすくなり、革新的にできることが増えた。

素直に勉強させてください!と言える人柄なら、この事態にも対応できたかもしれないが、
普通に考えて、嫉妬する状況だ。
彼から先生に向けてのちょっとしてイジワルは、すでに日常化しており、不条理なことも多かったのだが、
別にいいですよ、
と暖簾に腕押しな先生の態度に、業を煮やした彼は、ついに私たちが仲良いことを知り、上司に相談という名の告げ口をしたのである。
(私の仲良し女性同僚に言わせれば、
「やっと気づいたの!?2人が仲良いのなんて、ずっと前からじゃないですか!!あの人(嫉妬する男性同僚)って、仕事もできなけりゃ、アンテナも低いわ!」
と、今更感満載なタイミングだったようだ)

たしかに、指導を受けたときはショックだったが、それによって、先生との「同志感」は深まった。
何にもないのに、なんでこんなことされなきゃいけないんだ!という怒りを共有し、なんなら、もっと仲良くしてやろうか!?と、面白がった。
さらに、私は先に述べた「軽めの管理職試験」に合格し、嫉妬に塗れた男性同僚の異動させることに成功したのである(ま、これは言い過ぎです。私の合格がなくても、彼は異動してたはず)。

とにかく、もう私たちがいかがわしい仲じゃないの!?と、何もない間に疑われたおかげで、
私たち、不倫関係なんです、
というのが、ネタにできるようになった。
先生も徐々に人間関係を広げ、私以外の同僚とも仲良くなれることができた。先生は今、若手の男性陣と遊びに行くようにもなり、私とは基本的に普通の同僚として接している。

「ダブル・ジョパディ」だったか、昔見た映画にあったように、一度疑われ、判決の出た事柄は、再度審理されることはない。
もちろん、まずい状況を見られればアウトだが、すでに私たちの親密さに判決は出ている。

……と、私は自分にとって良いように解釈している。とにかく、職場でも、家庭でも、何もないときに疑われ、それらが鎮静化した後で始まった不倫である(実際の行動として)。
心は、と言われると、いつから本当に好きになったのかは、自分でもわからない。いや、わかりたくないのかもしれない。

自分を正当化したい、あるいは、自分たちはちゃんと隠せてる、と、己に甘いだけなのかもしれない。その分、因果応報、どんな結果になっても、きちんと罪を認めたり、今の幸せを失ったりすることも含めて、最悪の事態も想定して行動しなくては、と思っています(別居や離婚、今のワンオペ育児で償ったことにしたいけど)。


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