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過去のレコ評(2017-2)

(2017年「SOUND DESIGNER」誌に寄稿)

「Q」女王蜂
Sony Music Associated Records
AICL-3291

四つ打ちに轟音ギターと華やかなストリングス、女王蜂ってこんなアーティストだったっけ?と思いながら聴き進める。ヨナ抜きのメロディを聴いていると、むしろラッドやバンプなどの今時のバンドも思い出すほどだ。2曲目は直近のシングル「金星」を Feat.DAOKO として再構築したもの。シンセ使いやピアノのEQ処理など、よりダンサブルになっていて個人的にはかなり好みだ。3曲目からは岡村靖幸にも通じるファンクネスを感じたが、個人的には4曲目がツボだ。普通なら「しゅーらしゅしゅしゅー」というリフレインがもっと高い音域で合唱出来るところなのに、低い音域で歌うことでシュールさが勝るものとなっているのが彼ららしい。

「REBORN」清木場俊介
SPEED STAR RECORDS
VICL-64763

REBORNという意味深なタイトル、骨太なアメリカンロック。にも関わらず、氷室京介の系譜とでも言うべき至極日本的な歌唱法。これは西城秀樹から続くものだと言えるが、大瀧詠一によれば「平尾昌晃がポールアンカのの歌唱法を換骨奪胎した」ものだと言うほどの伝統がある。個人的には80’sっぽい歌詞に注目したい。昨今、これほど赤裸々な歌詞があるだろうか。もちろん作詞は清木場本人であり、彼のパーソナリティをそこに重ねるのは容易である。それ以上に、彼のやりたいことを邪魔することなくバックアップしているスピードスターというレーベルの懐の深さに敬服する。曲に染谷俊のウェットな要素が加わると尾崎豊になるのも興味深い。

「Automation」ジャミロクワイ
UICW-1011
ユニバーサルミュージック

彼ら「らしい」アルバムだ。小気味の良い曲調、ストリングスのグリスダウン、そしてジェイケイのスピード感ある歌声。キーボーディストとジェイの共同プロデュースということは、それぞれがトラックメイカーとトップライナーという関係だろうか。歌が到底乗らなさそうなひねりのあるコード進行に絶妙な歌が乗るのが彼ららしさだとすれば、今回の和声のひねりは少しおとなしめに感じる。昔から不思議だったのは、初期のCDはラジオで聴くとちょうどよく派手に聴こえることだ。マスタリングエンジニアとその話をしたところ「TDデータからマスタリングで音圧を上げようとしてもなかなか派手にならなかった」という奇妙なミックスだったらしい。今回はそれに比べれば分かりやすく良い音だ。なので大音量で聴くのがお勧めです。

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