仮面ライダーリバイス総括

はじめに

 仮面ライダーリバイスが最終回を迎えたので、仮面ライダーリバイスという作品を私なりに総括してみた。

非常にアクの強い作品

 結論から言うと、仮面ライダーリバイスは個人的には非常にアクの強い作品だったと思う。前作の仮面ライダーセイバーは昭和要素を盛り込んで平成ライダーファンから拒絶反応を起こされてはいたが、作品の構成自体はものすごくシンプルで素直な作品だったように思える。それに対して仮面ライダーリバイスは、その反動か以下に述べる3点からアクの強さが出ていたと思う。

話の構成要素が多いため、各構成要素の描写があっさり気味

 前作との比較で恐縮だが、組織がメギドとソードオブロゴスぐらいしかなかった仮面ライダーセイバーに対し、仮面ライダーリバイスはしあわせ湯、デッドマンズ、フェニックス、ウィークエンドと組織が多かった感がある。組織に所属する登場人物たちも、本編に登場する分だけでも
 しあわせ湯8名(五十嵐家5名+悪魔3名)
 デッドマンズ8名(首領1名+大幹部3名+幹部3名+新組織側近1名)
 フェニックス6名(ジョ狩、ヒロミ、若林司令官、赤石、朱美、ベイル)
 ウイークエンド5名(牛島家、真澄さん、ブーさん)
と、合計27名の大所帯である。
 ファイナルライブツアーの千秋楽のゲストどうすんだ
ってぐらい人が多い。この27名がしあわせ湯を中心に群像劇を繰り広げていくわけだから、それぞれのドラマがあっさり目だったという印象があった。例としては以下3点である。
【空手道場に潜入したフリオの正体バレ】
 序盤でデッドマンズのフリオ(=玉置)は五十嵐さくらの動向を探るため、さくらの通う空手道場に潜入捜査した。普通なら空手道場の人々をフリオが悪魔化するとかいう過程でフリオが正体バレしそうなものだと思っていた。しかし、温泉回で旅館のスタッフに変装してさくらにも気づかれなかったフリオが他の三人と一緒に「グラシアス、デッドマンズ!」と叫んで正体バレしていて、個人的には「え?」って思った。個人的には科学戦隊ダイナマンの第4話でダイナマンは正体を隠さなければならないと描写した次の回で堂々と正体バレしていたレベルの衝撃だった。
 とはいえその後の展開を見てると、描写するドラマの量が半端なかったので、フリオの正体バレについては泣く泣く簡略化したのだろうと思った。

【ジャックリバイスのときのバイスの暴走】
 平成・令和ライダーシリーズ恒例の1号ライダー暴走イベントして、ローリングバイスタンプの副作用でバイスが一輝を乗っ取ってしまうという話があった。ここでいつもの平成・令和ライダーなら2~3話ぐらい暴走して元の鞘に戻ることが多いのに対し、本作ではバイスが太鼓の達人とかやりたい放題やりまくった・・・と思いきや実は周りから一輝を守るためにバイスが逃亡したという話でたった1話で解決した。後にギフの影響によりバイスが不可抗力で暴走した時も、前後編だけで解決している。
 このように本来なら時間をかけてじっくり描写する暴走をあっさり描写しているところが本作っぽいと思った。

【大二VSカゲロウの決着】
 大二と彼の悪魔であるカゲロウは、仮面ライダーホーリーライブになるためにどちらかが消滅しなければならず、決着をつけることになる。これと似た状況で前作の仮面ライダーセイバーではデザストと蓮の決着を数話かけてじっくり描写していた。それに対して本作では、大二とカゲロウの決着をたった1話で描写しており、あっさり目だったという感触があった。
 しかし大二とカゲロウの決着についてはこの後で物語が繰り広げられることになる。このことについては後述する。

 以上のように本作では構成要素も登場人物も多かったため、それぞれのドラマが良くも悪くもあっさり目だったという印象があった。

基本的に1~3話完結だが中盤で連続編になるシリーズ構成

 基本的に1話完結だった昭和ライダー、2話完結だった平成ライダー初中期、前半1話完結で後半がずっとラスボス戦だった平成ライダー後期に対し、本作では基本的に1~3話完結で、非常に見やすかった感がある。
 中盤までは1~3話完結だっただけでなく、牛島夫妻退場編第39,40話、ベイル決着編第41,42話、大二復帰編第43,44話、ラスボス戦のあったラブコフ脱皮編第45,46話や、ジョ狩闇落ち編第47,48話、最終章第49,50話といった終盤ですら2話完結というスタイルを貫いており、非常に興味深い。
 しかし、第34話から第38話にかけては連続編だったという印象が個人的には強かった。第34話で朱美さん救出というミッションが掲げられたので、今までの展開を考えると第35話で朱美さんが救出されるかと思いきや、第35話でフェニックスベースが陥落して次回へ続くという流れだった。結局朱美さんも第37話で救出されるかと思いきや赤石に殺害されてミッション失敗に。続く第38話でアルティメットリバイ・バイスという最終フォームが誕生するも、赤石は倒されず大二も闇落ち状態を維持しており、最終フォーム誕生編特有のスッキリ感が感じられなかった。鬱展開に至っては第42話で牛島太助が退場するまで続くって感じだった。長さ的には仮面ライダークウガのジャラジ編からジャーザ編までの9週間とほぼ同じだが、個人的には本作の鬱展開のほうが長く感じた。
 東映HP

リバイス 第45話:「終わらぬ悪夢、守る者と守られる者」 | 仮面ライダーWEB【公式】|東映 (kamen-rider-official.com)

 によると、当初はエビリティライブの登場予定はなく、大二とカゲロウの扱いについては企画チームで相当悩んでらしたとのことだった。長かった鬱展開はおそらく大二とカゲロウの着地点を考えるまでの時間稼ぎだったんじゃないかと邪推している。

結末まで見ると納得がいくけど、途中までしか見ないと疑問符のつく展開

 大二とカゲロウの着地点もそうだが、本作では結末まで見ると納得がいくけど、途中まで見てる状態だと疑問符がつく展開が結構あったと思っている。
 典型的な例が第36話における玉置の変身失敗である。予告編ではウイークエンドライバーを使って玉置が変身しようとするシーンが映し出されていたが、ベイルの妨害により変身に失敗し、代わりに夏木花が仮面ライダーアギレラに変身するという流れである。この後も第41話で量産型デモンズが配備された際、玉置が変身希望を訴えるもスルーされてしまう。
 私から見れば第36話の変身失敗も第41話の意見スルーも後の玉置変身の前フリとしか思わなかったし、現に第46話で玉置は牛島光からドライバーを託され二代目オーバーデモンズに変身した。
 しかし途中までの状態で内容を判断した一部の視聴者が「玉置が可哀想」「玉置イジメやめろ」と大合唱を始め出したのである。確かに今後の展開を想像せずに途中までの状態で判断すると、「玉置なんで変身しないの?」と思ってしまいがちである。
 また、ウイークエンドに拾われた牛島光や、デッドマンズに育てられた夏木花も、五十嵐三兄弟と同じく「ノアによりギフの遺伝子を埋め込まれた親から生まれてその親を殺された、ギフの遺伝子を持つ人間」なんじゃないかと私は予想していた。彼らが仮面ライダーオーバーデモンズや仮面ライダーアギレラに変身できたのも、ギフ遺伝子を持っているからなんじゃないかと思っていた。蓋を開けてみれば仮面ライダーオーバーデモンズも仮面ライダーアギレラも誰でも変身できるシステムで、残念と思った。
 しかし、誰でも変身できるシステムだったからこそ玉置が二代目オーバーデモンズに変身できたし、夏木花の過去についてはスピンオフで明かされるっぽいので、やはり最後まで見てみないとわからないと思った。
 ちなみに劇場版にも最後まで見ると納得するけど途中までの時点だと疑問符がつく描写もいくつかあり、リバイスらしいと思った。

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リバイスの魅力

 以上、リバイスのアクの強い特徴を語ってきたわけだが、アクの強さが魅力になっている点もあるので、語っていきたいと思う。

大所帯ながらほぼ全員に見せ場がある

 本作ではキャラ27名という大所帯ながら、ほぼ全員のそれぞれのキャラを大切にしているという印象が個人的にはあった。
 しあわせ湯はもちろんのこと、フェニックスやウイークエンド、デッドマンズそれぞれのメンバーについて(途中で大二をどうするかという迷いはあったにせよ)キャラを描写できていたと思う。その群像劇はまるで平成1期のアギトや555を見ているような感覚だった。
 特筆すべきは一歩間違えれば空気キャラになっていた牛島光だと思う。シリーズ後半でさくらや花の苦戦を目の当たりにし、自分にも戦う力が欲しいと願いオーバーデモンズに変身して冷静沈着に窮地を救うシーン以降、一挙に存在感が増してきたと思う。最終回でブルーバードに所属せず普通の高校生活を楽しむという着地点も、太助や公子を失い自らも激戦で一時戦闘不能になるほど戦い抜いた彼の心情を鑑みてのことだと思うと非常に尊い。
 途中で敵に倒された牛島太助や公子、朱美さんについても、ただ交通整理的に退場させたわけではなく、擬似家族のことを本物の家族のように思う牛島家の心情や、狡猾な赤石と彼に翻弄される大二のドラマを描いた結果としての退場なので、彼らをないがしろにしていたというわけではないという印象を持った。
 一挙に処分されたのはデッドマンズの弁護士とカウンセラーぐらいであり、彼らにも処分前に一輝とさくらとの絡みという見せ場があったと思う。新生デッドマンズでオルテカの側近だった本村香苗もギフスタンプを押されて退場したが、側近を気分次第で処分するオルテカの悪辣さが強烈に描写されていたと思う。

最後まで見ないとわからない面白さ

 先述の繰り返しになるかもしれないが、最後まで見ないと判断できない、途中描写の視聴者に疑問を持たせるような強烈さがなかなかクセになるところがあったと思う。
 玉置の変身失敗も劇場版も、途中まで見ていた状態だと「なんでこうなるんだろう・・・」と思いつつ、最後まで見て納得した時のカタルシスは他の作品でもなかなか味わえない、いい意味での珍味だと思った。

あっさり目のドラマ

 こちらも先述の繰り返しだが、本作は基本的に1~3話完結だったため、(中盤を除き)数話で決着がつく安心感というものがあったように思う。2022年8月現在、2時間ドラマが影を潜め、1話完結の科捜研の女や捜査一課長がいったんシリーズ終了し、1話完結の明快な作品が減少しつつあるこのご時世において、数話完結の本作は本当に貴重だったと思う。

ここは直してほしかったところ

 しかし、リバイスにも個人的にはここだけは直してほしかったという難点が2点あったので、以下に列挙する。

大二リンチ

 第15話でデッドマンズの本拠地を知っているカゲロウを召喚するため、さくらが大二を羽交い絞めにして一輝がライダーキックするシーンがあったが、どうもリンチとかイジメっぽくて正義の味方がやっていいこととは思えなかった。もう少しやりようがあったのではないかと思う。

過重労働問題

 本作ではプロデューサー補の方が過重労働について訴え、一時期話題になったことがあった。
 確かに映像作品の現場は長時間労働が多いという話を聞く上に、本作は50周年記念作品ということで力を入れていたように思える。
 しかし、何もわからなかった昔ならともかく、現代では長時間労働が労働者の心身に異常を及ぼすということは医学的に解明されている。また、人を大切にしない企業は社会的信頼を失い、健全な株主や視聴者が離れていき、反社会的勢力とつるむことでコンテンツが歪むことになってしまう。
 物語を充実させたい、東映特撮ファンクラブの会員数を増やしたい、スポンサーのグッズ販促を強化したいという気持ちはわかるが、スピンオフを作りすぎてスタッフに過負荷がかかっていやしないかと疑問に思った。
 個人的には外伝を描くなら仮面ライダーバスターみたく漫画という形で提供すれば負荷はだいぶ軽減できると思うし、東映特撮ファンクラブのほうもスピンオフを減らしてその分東映特撮Youtube Officialの無料配信を他の会社みたく人気作品についてはセレクション配信にして、全話見たい視聴者を東映特撮ファンクラブへ誘導するという仕掛けにすればいいのではないかと思う。

おわりに

 以上、仮面ライダーリバイスについて総括した。1年間いろんなことがあったが、楽しめる部分については楽しませていただいた。スタッフ・キャストの皆様、本当にお疲れさまでした+ありがとうございました。

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