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誰もがみんな共感されたい

前職、携帯ショップで働いていたときに学んだ「共感」の話。

携帯ショップでは携帯を売るのと同じくらい、修理受付も行う。わたしは正直販売よりもこのアフターサービスのほうが得意だった。

わたしは当時自尊心の低い、自己否定にあふれた状態で日々生きていたので
「ところで今おすすめのキャンペーンがありまして、今日機種変更と一緒にタブレットを買うとお安くなるんですよ」とかいうセリフを
(いやべつに安くならんし。月々の維持費があるから長い目で見たらなにも安くない…でも言えって言われてるからなあ)と内心想いながら口にするよりは
「そうですか、タッチパネルが反応しない…大変でしたね。なにもできなくなりますもんね」とか言ってるほうが気が楽だった。

もちろん故障は販売よりも相手のテンションは下がってるし、怒って来店する人も多いし、窓口では再現が取れなくて故障だと断定できなかったりもする。
実際販売時のミスで怒られたことより故障のことで理不尽に怒られたことのほうが多い。

故障や、操作方法の相談はショップで受け付けているけれど実際はほとんどお金にならない。故障はシステム投入をするので多少の手数料が入るが、操作なんてお客さんの端末で解決してしまうので0円だ。なにも儲けにならない。だから敬遠する人も多い。

だけど困っている人をその場で助けられるというわかりやすい成功体験があった。だから自尊意識の低いわたしには向いていたし、無碍にできなかった。

最初はうまくできなかったところもある。
特に端末の一時的な不具合であり故障ではない、ということを説明するのが下手だった。新人のころはまだスマートフォンが普及し始めたばかりだったから、再起動すれば直るような症状で故障だ! と駆け込んでくる人も多かった。(たぶん今もいるとは思う)

先輩には「バカ正直すぎる」といわれた。「故障だ!」と思っている人に正直に「いえ故障じゃないですよ」と正面切って言っても伝わらないこともあると。小手先ではあるけれど、相手は「なにか処置をしてもらった」という安心感がほしいのだから、それを汲み取りできることだけしてやればいいということだった。

マニュアルとしては正しくないから普通はしない。だけど完全に黒というわけではないなら、状況に応じて柔軟に対応する。そういったグレーゾーンの見極めを教えてもらった。

携帯電話の、故障の対応には本当にグレーゾーンが多い。
Aの場合はBをする。ということは書いてあるが、Cをしてはいけないとは書いていない。わりと自分と責任者の裁量に任されている部分がある。

この見極めに大切だったのが「共感」だ。

この人はどうしてほしいのか。それはこちらで処置できる範疇なのか。いろいろと想像して共感をしていた。
できることは親身に対応して、できないことは毅然と断ることができるようになった。
もともと涙もろいし笑いのツボも浅い。他人に感情移入しやすい性質なのも役に立った。
わたしが携帯ショップ店員として身につけたものは、営業販売の手法ではなくこの共感力だ。でもそれで結局苦しくなってしまった。

アフターサービスの研修でも共感については説明される。故障という不安で来店されたお客様に、まずは共感を示しましょうというもの。
逆に「優しすぎる」と咎められたこともある。
今でもいろんな状況で相手の状況を察しすぎたり、相手へ感情移入しすぎるあまり自分の問題なのか相手の問題なのかわからなくなってしまうこともある。

人間はつまるところ共感を求めているし、それは自分も相手も同じ。
たくさんの感情を共感できる相手と親しくなるし、もっと親しくなりたいと感じる。

ちなみにこの共感力はいまの仕事でもそれなりに役に立っている。
これはあくまで自分に身についた技術であるということと、どれだけ共感しても自分は自分、他人は他人であることを忘れないでいたい。

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