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ロリィタファッションに殺されないために 前

去年の夏のこと。
お出かけをするのに、クローゼットから大好きなAngelic Prettyのお洋服を出した。久しぶりに着てみたくて。
コーディネイトを考えて、実際に着てみて、鏡を見たとき「うわっ…似合わない!」という感情が出てきてしまったから本当に驚いた。

明確な理由があったわけじゃない。けれどお洋服に袖を通すのは本当に久しぶりだった。だから着ている自分を見るのも久しぶり。

どうしよう、と思ったけれどどうにもできず、誰にも言えなかった。単純に絶望だった。こんなことが本当にあるのかと、心底絶望した。

わたしはもう10年以上前からロリィタファッションに魅せられていて、大好きで大好きで着ることが幸せだった。
他人から「ふらみんちゃんは似合うから 」という言葉をかけられても、別に似合うから着ているわけじゃないと思っていた。

わたしは身長が163センチある。小学生の時点ですでにほぼこの身長だった。ひょろひょろと長い自分の背丈が本当に嫌いだった。やたら目立つし、大人はみんな「背が高いねえ」と声をかけた。なんにも嬉しくない。だからどうした? と思っていた。
自分で努力して手に入れたものでもない。背が高いことが有利になるスポーツもしていなかったし、背が高くてよかったことなんてない。望んでもいない。大人になれば特別高い身長でもないが、物心ついたころから忌み嫌っていたせいで今もあまり前向きになれずにいる。

ロリィタファッションは少女性を尖すぎるほどに強調したお洋服だ。
なんで身長の話をしたかというと、163センチの自分にはそもそも少女性のかたまりであるロリィタファッションが似合うわけがないと思っていたからだ。せめて155センチ、最高でも158センチまでで成長が止まってほしかった。

これはあくまでわたし自身のコンプレックスであり、思い込みの話だ。背の高いロリィタ愛好者さんを貶すつもりは毛頭ない。
わたしという存在が163センチである限り、そもそも似合うわけがないという自己否定の話だ。

話を戻して、そもそも似合うと思っていたわけではないけれど絶望的に「自分には似合わない」と感じてしまったあと。

今まではどうしてそれでも着ていたのかといわれると、どうしようもなく好きだったからとしか説明できない。
なんでもそうだ。わたしは自分自身がこれだと思ったものにはとことん命をかけてしまうし、どこまでも忠実に従属するのが喜びとして生きてしまう。
初めてAngelicPrettyのお洋服を見たとき、あまりのかわいさ素敵さにもう世界が変わるほど衝撃を受けて「わたしはこれを着なければならない」と勝手に使命を感じた。

好きならばそれだけでいい。
好きだから、好きでいさせてくれるならなんでもいい。好きでいさせもらえるだけで構わない。それ以上のことなんて求めない。
わたしがそれを好きだということだけが大切で、なによりも厳守することだ。

頭の片隅ではこんな自分が着るのは似合わないと思っていても、着てさえしまえばどうでもよかった。
わたしがどうだろうとお洋服はかわいい。お洋服に罪はない。わたしはただこのお洋服が好きで好きで、着させていただいているだけ。

だから鏡を見たときに、お洋服ではなく自分自身を見てしまったことがショックだった。
着ているはずなのに、お洋服が見えなかった。だから「似合わない!」という感情が出てきてしまった。

本当にこのことは誰にも言わなかった。他の誰に「そんなことないよ、似合うよ」といわれても慰めにもならないと理解していたから。

ショックだったのは、似合わないという事実を認識してしまったことより、好きなものを好きではなくなってしまったのでは? と思ったことだ。

冷めるという感覚がよくわからない。落ち着くことはあっても好きなものはずっと好きだ。
特にロリィタファッションほど情熱を燃やしたものを好きではなくなるなんて、そんなことあるのだろうか?と自分が信じられなくなった。

好き、という感情だけでは片付けられない。
わたしは明確に、ロリィタファッションに恋をしていた。
恋をしたものに対して、恋から覚めるようなことが本当にあるのだろうかと不安だった。
わたしにとって恋したものとは、モノでも人でもなにもかも一切例外なく死ぬまで好きなまま生きるものだ。
たとえ一般的に恋はいつか覚めるものであるといわれていようと。

もし、本当にそんなことが起こったのであれば、自分自身の在り方にも関わってくる大事件だ。

やめるときが来てしまったのだろうか、と思った。
ロリィタファッションをいつまで続けるのか、というのは愛好家にとって切っても切れない問題だろう。ネット上で10年以上、いろんな人が悩んでいるのを見てきた。
それでもわたしはやめないと思っていた。好きなものを好きでいることのなにが悪いの? と思っていた。そう断言できる強さがある人間だと思っていた。周りじゃなくて、自分がどうしたいかが大切だからと。

だけどあの日、わたしもロリィタファッションをやめるときが来てしまったの? とどうしようもなく不安になった。
とりあえずそのときはお洋服を脱いで、クローゼットに戻して、別の服を着た。悲しいくらいしっくりきた。わたしはいつのまに、こんな無難な服が似合うようになってしまったのだろう。

好きなものが好きだと言えなくなったら、死んだほうがマシだ。むしろ好きなものに殺してもらいたい。
忙しさにかまけて、いつからお洋服を着ていなかっただろう。ずっとクローゼットにしまわれていた、宝物たち。
この数年、なにをしていたんだと悔やんだ。好きでなくなってしまった仕事を続けて、ストレスをためて、やっと開放されたのに、そうしたら本当に好きだったものを好きだと言えなくなってしまった。

長くなりそうなので続きは明日書きます。

12/7追記 続きを書きました。

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