木質素材の熱化学還元処理をわかりやすく解説しよう3

④水分除去(乾燥)では形状寸法を安定化出来なかったオイルパームの材組織をどのようにすれば固定できるのだろうか?“
前回、私の予想が当たって見事に形状・寸法安定化したオイルパーム材の写真をお見せしましたが、今回から、いよいよ熱化学還元処理の佳境に入っていきましょう。
木質材料の組織を物理化学的に固定する方法は、これまで色々の手法があります。物理的な方法としては、材をそのまま圧縮したり樹脂を含浸させてから圧縮する方法。化学的な手法では、アセチル化やホルマル化等化学修飾と呼ばれる技術があります。しかし、これらのいずれも天然の木材素材そのものの機能を損なうばかりか製造コストが上がるだけでなく、有害な薬品を使用するためおすすめできる手法ではありません。
最近話題になったケボニー化(黒檀の英名であるエボニーをもじって化学処理によって固化させるのでケボニーと名付けられたようです。)という木材を固化する手法も40年も以前に分かっていた技術ですが、フルフリルアルコールという物質を木材に含浸させ、材中でこれを重合させフラン樹脂を作るという技術です。フラン樹脂は優れた樹脂ですがこれを作るにはコストが掛かり過ぎるためこれまで使われることがありませんでした。カナダの研究者がこの技術を開発したそうですが、コストパフォーマンスで見るとほとんど合わないでしょう。
木材中に20%以上存在するヘミセルロースの仲間で、キシロースというものがあります。これを一連の脱水反応を起こさせることでフルフリルアルコールを経てフラン樹脂になることは図に示すように既知の事実です。
しかし、これは試験管の中での実験であって、木材中に含まれているキシロースをそのままフラン樹脂に変えるなどは今まで誰も考え付かなかったことです。
オイルパームの細胞組織を固めてしまわない限り、従来のような水分除去では収縮変形を起こすだろう。それならば、組織の中にヘミセルロースが存在した状態でこれを何らかの化学変化によって樹脂化すれば、組織は安定するのではないかと考えました。スポンジの材料は水を吸っても、乾燥しても寸法がほとんど変化しない化学組成で作られている網目構造です。オイルパームの細胞組織をスポンジのように固めてしまえば、スポンジの網目構造と同じように空隙に水が入り込むだけで、水が抜けても構造は変化しないはずです。その実験結果を前回でお見せしました。
次回で、ヘミセルロースが固定されたと考えてよい証拠と、その結果材組織の強度が明らかに増大するという実験結果をお見せしましょう。

図5


よろしければサポートをお願いします。我が国の林業のみならず世界の林業を活性化させ、地球環境の改善に役立たせる活動に使わせていただきます。