プラットフォームとしての会社
「なぜコーポレートデザインにこだわるようになったのか?」では、私の経営経歴と会社のコンセプトや会社設計にこだわるようになった背景を紹介しました。20代で上場会社の経営を経験し、M&A等によりたくさんの会社を見た結果として、「経営」「株主」「会社設計」の重要さを思い知った経緯を説明しました。
会社を捉えるモデルはいくつかあるとおもうのですが、(たとえば「指示命令系統の集合」というようなモデルなど)、私は、会社を「プラットフォーム」として、つまり「メンバーが活動するための基盤」のようなモデルとして捉えています。
コーポレートデザインが重要ということは、メンバーがどのように活動できるか、なにが許されるかという「プラットフォームの設計」にほかなりません。
というわけで、ここでは、「プラットフォームとしての会社とは何か」「プラットフォームの設計とは何か」についてお話ししたいと思います。
プラットフォームとは何か
プラットフォームとは何でしょうか。例えば、私たちが「SNSのプラットフォーム」と言及する場合について考えてみましょう。
X(Twitter)やInstagramでも、「どのようなものが好まれるか?」「どのようなものがNGか?」について、プラットフォーム側、運営側がその枠組みや方向性を決めています。実際にそのプラットフォーム側の意図どおりにユーザーが動くかどうかは分からないにしても、プラットフォーム側は、例えば、どのような投稿が表示されやすいかを決めたり、時には特殊なアカウントを凍結したりという設計をしています。
現在は、Xでは人気ツイートにリプライを返す「インプゾンビ」が増えていますが、これもプラットフォーム側の方針によって発生した現象でしょう。つまり、枠組みや方向性はプラットフォームが規定しているわけです。
とはいえ、プラットフォームはあくまでも「基盤」にすぎません。実際にその「基盤」の上において生じる活動は、ユーザーやメンバーの個々の意思や行動に依存せざるを得ません。プラットフォーム側は、その枠組みや方向性を規定し、行動を促すことはできますが、ユーザーやメンバーが実際にどう動くか、ということまで強制することはできないのです。
大抵のプラットフォームにおいては、ユーザーは気が進まなければサボることもできるし、気に入らなければ退出することも、参加するのをやめることも自由。プラットフォームでどのように活動するかは、個々のメンバーの自由裁量です。
ということはつまり、プラットフォーム上に生じる活動はユーザーやメンバーの意思や行動に依存しているわけで、プラットフォーム側ができることは、場を提供し、参加をしてもらい、インセンティヴを設定して、活動を促すことだと言えるでしょう。
会社とはプラットフォームである
以上のことをわかりやすく箇条書きにすると、
プラットフォーム側は、枠組みや方向性を規定し、メンバーの行動を促したり抑制したりする。
プラットフォーム上で生じる活動は、意思を持って動く個々のメンバーの活動に依存する。
とまとめることができます。このような意味で、私は、「会社はプラットフォームである」と考えています。
会社というプラットフォームが、メンバーの活動を促したり抑制したりする例として、「評価制度」「就業規則」があります。これらは、はっきりとした形で、枠組みや方向性を定めています。
より日常的な例では、褒められる、推奨される、指摘を受ける、仕事の仕方など、個々の場面で何が許されて何が期待されているのか?によって、メンバーの行動が強く方向づけされます。特に、経営者が何を言うか、何を大事にするか、何をNGとするかによって、メンバーの行動は大きく影響を受けます。
ここで、「会社は設計(コーポレートデザイン)が重要である」という話に戻ります。
会社にはプラットフォームとしての側面があり、会社がどのように動きどのように成長するかはメンバーの行動に依存しますが、個々のメンバーがどのように活動するかは、メンバーが参加している会社=プラットフォームの規定や方向性次第。
となれば、やはり、プラットフォーム=会社のデザインがいかに重要か、やはり実感できるのではないでしょうか。
どのようにプラットフォームを設計するか
では、会社というプラットフォームをどのように設計するべきでしょうか?
設計するにあたっては、経営者自身が、どこに向かいたいか、何をどうしたいのか、という「望みや好み」と密接に関係しています。
大きい会社にしたい、お金を稼ぎたい、世の中にインパクトを与えたい。そのためにはグレーな仕事も厭わない、グレーな仕事は絶対にやらない、こういう仕事がしたい、こういう仕事はやりたくない。すべて好みの問題です。会社としての正解は経営者の数だけ無数にあり、それは良い悪いではなく、単に個々人の選択の問題です。
私は、株式会社アーリーリフレクションというプラットフォームを、メンバーが積極的に学習し新しいことにトライできる場となるようデザインしていますが、弊社に合う人もいれば合わない人もいると考えています。
先ほど、プラットフォームは、個々のメンバーの行動を促すことしかできない、と書きました。メンバーは誰でも良いわけではなく、そのプラットフォームにマッチし、活躍できる人を選ぶ必要があるのです。
次回は、アーリーリフレクションがどのようなプラットフォームなのかを説明します。
次回の話:「アーリーリフレクションというプラットフォーム」
前回の話:「なぜコーポレートデザインにこだわるようになったのか?」
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