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2022年間ベスト10+2

アルファベット順です。

Alvvays

Alvvays
Blue Rev
(Polyvinyl Record)

コロナの影響は元より、強盗などに遭い機材などを盗まれがらも、ようやく完成したという本作。大いに期待していた割に爆発力はなかったものの、アルバムとしての出来はとても素晴らしく、よく聴いた。以前のような歌を口ずさめるようなポップ加減は控えめながら、よりシューゲイザー的な音に寄っていった印象。個人的にはドラムの鳴りが若干抽象的になったかなと思っていて、homecomingsもラジオで、ポストパンク的な音になったと言っていたのが印象的だった。

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Fumiya Tanaka / 田中フミヤ

Fumiya Tanaka
One More Thing
(Sundance)

実はフミヤのDJは好きだけど、作品に対しての愛情はあまり深くなく、初期のシングルやフードラムなどは愛聴していたが、ハードミニマルやカチカチ系のミニマルの作品はそんなに好んで聴いてこなかった。Unknown Posibility Vol.2は素晴らしかったのだが。しかし、ここ最近のフミヤのトラックは凄まじく良い。きっと過去の作品が苦手だったのは、影響元が透けて見えてオリジナリティーに欠けているなと感じたからかなとぼんやり思うが、特に2015年あたり、アルバムで言うとPerlonからのYou Find The Keyあたりからの作品はオリジナリティーに溢れており、全てが素晴らしい。プリセット音を最良の配置にすることで超絶的なグルーヴを出しているというのが個人的な印象で、こんなことを言ったら怒られるかしら。

そして本作は、過去の音素材を、最近の手法で再構築したという連続リリースで、First PartとSecond Partの2種に分かれてリリースされた。とてつもなくしなやかなのにしっかりと体は動くという、凶器とは正反対の鞭のような音像はとても気持ちが良く、カラフトやフードラムでは見せていたコード感のようなものも曲には存在し、フミヤがこのような音に辿り着くとは、熱心なファンとは言えない自分には思えなかった。

Listen (First Part)
Listen (Second Part)


Hazy Sour Cherry

Hazy Sour Cherry
Strange World
(Damnably)

ファーストが素晴らしいと、セカンドには不安を覚えるもので、このバンドも同様にセカンドどうなのかなーとおっかなびっくりで針を落としたが、そんな不安は軽々と吹き飛ばされてしまう程の傑作を作ってきた。方向性が大きく変わったわけではないのだが、何故か圧倒的な自信を感じるポップ&ロックンロールなアルバムで、自分の音楽史上においてもとても重要な作品になった。悔やまれるのはまだ一度もライヴを体験できていないこと。スタジオアルバムはいいのに、ライヴは残念というバンドが多々あるので保証はできないものの、この音で飛んだり跳ねたり叫んだりするのは、相当に気持ちが良さそう。

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Jintana & Emeralds

Jintana & Emeralds
Emerald City Guide
(Pan Pacific Playa)

アルバム自体が出たのは、2021年なのだが、レコードが出たのが2022年で、自分もレコードが売られているのを見て知った。実はセカンドアルバムなので、自分の音楽感度も相当下がっているなと年齢を感じた。それはさておき、ドゥー・ワップのバンドとのことで、簡単に言うと、山下達郎がラジオでかけそうな、大瀧詠一が好きそうな、桑田佳祐の元ネタのような、ラッツ&スターのような音楽で、とても心地良い。Kashifのギターも効いている。Tracks BoysのXTALもバンドメンバー。3人のボーカルのうちの一人は一十三十一、リリースはPan Pacific Playaということで、海が似合う、でも暖かさがあり、エロさも感じるというメロー&スムースさで年中聴けるアルバム。買おうと思った一番のきっかけは、Los Retros君が参加しているからで、その曲もスイートソウル感満載でとても良かった。La'sのThere She Goesのカヴァーなんていうのもやっている。

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Jordana

Jordana
Face The Wall
(Grand Jury)

ファーストはもっと宅録っぽいフォーキーな印象で、それはそれで愛聴していた。セカンドはあまり好きでなく、スルーしようとしていたのだが、常盤響のニューレコードというラジオ番組でこのアルバムが流れて、その変貌ぶりに驚き購入した。よりダイナミックなバンドサウンドに化けており、リズムを聴く限り、恐らく相変わらず宅録なのかもしれないが、個人的な音というよりは、より大勢の人に向けた音のように感じた。その「化けた」というのが大きく、いきなりこれだけ聴いてもこれほど注目はしなかったかもしれない。

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Octo Octa

Octo Octa
She's Calling EP
(T4T LUV NRG)

しばらく、Phil Weeksを筆頭に跳ねる・走る系のハウスを聴いていたが、ここ最近はその熱もすっかり落ち着いていた。BPMも上がり始めており、好きな音を混ぜられるようになってきたなーと感じていた矢先に出会ったのがこのシングル。Octo OctaというニューヨークのトランスジェンダーDJの作品。このシングルを聴くまでは全く知らない人だったのだが、他の作品を聴くとどれも素晴らしい。ディープハウスというのだろうか、個人的にはデトロイト・テクノとも相性が良く、またブレイクビーツを効果的に使うことが多いため、ふと変わったグルーヴを産むのにも最適で、すっかり虜になってしまった。そんな中でも、自身のレーベルからのリリースである、このシングルはリバース音や声、エディットやスクラッチ音を効果的に使った、ジャッキン・ハウス系の曲も含んだ盛り上がり型シングル。リリースは去年らしいが、今年とにかくよく聴いたのでランクイン。

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Rosie From The Block

Rosie From The Block
Love Potions For Block Parties
(Vice City)

ベルギーの新興レーベルからのリリース。たまたまLight House Recordsで試聴して購入した。あまりこの手のブロークンビーツのようなトラックは聴かずに過ごしてきたこともあり、好きな人にとっては取るに足らないビートなのかもしれないが、自分はそのビートの斬新さに、本当にびっくり仰天してしまったのだ。作っているのは、Roselienという名前で歌手活動をしているベルギー人の女性で、このシングルでもその歌声は聴ける。全編通して歌い上げているわけではないが、プロの歌声だなと思う。その辿々しくもグルーヴ感のあるビートに、シンセの音が乗るというトラックはどれもが素晴らしい。それこそデトロイト・テクノ的な音にもとても混ぜやすいなと。レコードとダウンロード販売のみというのも潔い。

DJプレイがYouTubeで配信されているが、とてもとても楽しそうにDJする姿が微笑ましく今後が楽しみだ。ちなみにプレイスタイルはこの曲のようなビートものとハウスであった。

余談だが、マニュエル・ゲッチング(RIP)の愛した女性の名前はロージーであった。

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Say Sue Me


Say Sue Me
The Last Thing Left
(Damanably)

先日のクアトロのライヴも素晴らしかった、Say Sue Meの最新アルバムは、今回のリストの中でも最高位に位置するのではと思える程好きな作品。これまでYo La Tengoの影響というものをあまり感じてこなかったのだが、ライヴを観てようやく理解した。耳が潰れるのではないかと思えるギターノイズが随所に入るも、綺麗な楽曲とマッチしているという珍しい音楽体験であった。ただの素敵なインディーバンドではない、底力のようなものを感じた。メンバーも皆とても気持ちの良い方々だった。中でもギターのフレーズがどれも素晴らしく、上手い下手はあまりわからないが、ギターの方ばかり見てしまっていた。とは言え、素朴で歌いやすい歌メロディーも健在なので、とてつもなく聴きやすい。

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Shintaro Sakamoto / 坂本慎太郎

坂本慎太郎/Shintaro Sakamoto
物語のように/Like a Fable
(Zelone Records)

ファーストのインパクトが強過ぎて、その後の2枚のアルバムにはどうもはまれずにいたのだが、遂にファースト並みのインパクトを与えてくれるアルバムを作ってくれた。言ってしまえばファースト寄りということに過ぎないのかもしれないが、それくらいあの作品にはインパクトがあった。実は最初はもういいかなくらいに思っていたのだが、散歩中に聴いていたラジオで、Ego Wrappin' がこのアルバムからの曲を流し、立ち止まってしまう程見事にやられた。

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Superorganism

Superorganism
World Wide Pop
(Domino)

ファーストは、アンダーグラウンド志向なトラックにポップなメロディーというイメージであったが、今作はタイトル通り、トラックもポップさも増大しており、とてもうまくアップデートしたなと思った。ファーストの焼き直しだったらちょっと聴けなかったかもしれない。惜しむらくは、ライヴが地味なことか・・・フジロックの配信で見たのみだが、あの広さにあの人数であの動きには少々悲しさを覚えた。とても個性のあるダンスや楽しげな様子は、もっと小さなステージだともっともっと素敵なビジュアルになったような気がする。

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Vansire

Vansire
The Modern Western World
(Self-Released)

Spirit Gothを離れて、自主でのリリースになったサードアルバム。Vansireにいつも感じるのは、「田舎」感なのだが、今回もそれは健在。ミネアポリスというプリンスとフレディー・フレッシュの出身地という以外情報がない場所で、おそらく田舎なのだろうか。決して小馬鹿にした「田舎」イメージではなく、「疲れた日常を離れ、エンターテインメントは少ないかもしれないが、澄んだ空気と共に、自然と笑顔が漏れるような毎日、昼は寒くても夜は暖かく、ウノやスカウトで遊び、ウトウトし始めたらそろそろ寝ようかな」といったポジティヴな意味での田舎さを感じる。

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Wet Leg

Wet Leg
Wet Leg
(Domino)

きっとAlvvaysとWet Legは大勢の人が挙げるであろうから意外性がなくてつまらないかしらなどという邪な気持ちもよぎるが、やはり良いものは良いということで仕方ない。ワイト島の女の子2人組というステータスもあり、ハイプなのかもしれないが、20年前にThe Strokesを初めて聴いた時のような、本物っぽい乾いたロック感とポップネスを感じたのは確かであり、来年の来日もとても楽しみである。

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最後に

今年は山本アキヲ氏の死去という悲しいことがあり、改めて彼の過去作品をたくさん聴いていた。Akio Milan PaakやSpeakerのミニマルテクノも、Tarheelの狂ったリズムも、アキオ/オキヒデのアンビエントも、Hoodrumも、Autoraも、ライジング・ハイとサブライムからのタンツムジークのアルバムもどれもが素晴らしく、懐古的な意味合いなしに、今でも、もしかしたら今だからこそ燦然と輝く、コマーシャリズムなどとは無縁の、心から自由を感じる楽曲の数々に胸を打たれた。

Brian EnoのAmbient Kyotoに行った際に、だる満にてうどんを食したが、お世辞抜きで世界一美味しいうどんだと思った。出汁の仕業だとは思う。

その影響もあってか、イーノのアンビエントはよく聴いた。また、何故かBoards of Canadaブームが突然起こり、過去作をレコードで買い揃えたり、ちょっと近いものを感じる、シガー・ロスも買い揃えたりした。

そして、つい先日には、マニュエル・ゲッチングが逝去。New Age of EarthとE2E4。この2枚はアキヲ氏同様誰も超えることのできない唯一無二の作品として、未来永劫音楽好きたちに聴かれることを祈るばかり。来年もたくさんの音楽に出会えますように。


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