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君子は和して同ぜず、小人は同じて和せず

『論語』子路篇

●孔子のいった言葉で、
「君子は協調性に富むが、といって、無原則な妥協はしない。小人は反対に、やたらと妥協するが、協調性には欠けている」
というほどの意味である。

●孔子は紀元前521年に、山東省の曲阜に生まれた思想家である。紀元前六世紀から三世紀に至る約三百年のあいだ、中国では、俗に諸子百家といわれる多くの思想家や哲学者が輩出した。

●その中で、孔子は質的にも先駆的な存在であり、彼の唱えた儒学思想は、その後二千余年にわたって、中国では統治者のリーダーシップの原典となり、教育の根本思想となった。中国のみでなく、漢字文化圏では、思想形成に大きな影響を与えた。日本でも、孔子の思想は指導者階級のよりどころとなった。

●『論語』は孔子の言行、弟子との対話、弟子たちの言行などを記録した書である。いつごろ誰の手によって編集されたかは、明らかではない。学而(がくじ)から堯曰(ぎょうえつ)までの二十篇から成っている。およそ五百の小節があり、一小節ごとに一つのテーマを取り扱っている。この言葉は第十三篇子路の二十三番目に出てくる。

●協調性に富むがやたらに妥協しないために大成した人は多い。近代の名宰相といわれた周恩来は、この典型である。フランスに留学した時に入党して以来、周恩来は五十数年間、終始中国共産党を代表する指導者であり、党の顔ともいえる人物であった。

●だが、彼は常にナンバー2でがまんしていた。もし、彼がトップの座に執着しようとしたならば、必ずや唯我独尊の毛沢東と、血みどろの争いをひきおこしていたことだろう。また、文化大革命のときに、周恩来だけが失脚しなかったのは、やたらに妥協しないが協調性に富む彼にだけは、四人組も紅衛兵も、手が出せなかったからである。

●ビジネスマンは、例外なく組織の一員である。大事なことでは妥協せず、しかも、協調精神をもつことが肝要である。

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