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算多きは勝ち、算少なきは勝たず

『孫子』計篇

●「算」とは、勝算である。勝算の多いほうが勝ち、少ないほうが敗れるというのだ。なんだ当たり前のことではないかというかもしれないが、これを実行するとなると、意外にむずかしい。

●とくに、われわれ日本人は、当たって砕けろ式の玉砕戦法を得意にしている。いい加減な作戦計画を立て計画の粗雑なところを兵士の勇戦敢闘によって補おうとする。これでは勝てない。

●むろん、戦いであるからには、兵士の敢闘精神に待つところが少なくない。問題なのは、それだけに期待をかけて、作戦計画の策定に手抜きをする態度である。われわれ日本人には、こういう傾向がないではない。これではリーダー失格である。

●リーダーの務めは、何よりもまずちゃんとした勝算を立てることである。

●彼我の戦力、周囲の情況を比較検討して、かりに五分五分の勝算しか立たなかったとする。これで戦いに突入すれば、どうしても一か八かの戦いにならざるをえない。そんな戦いは愚策以外のなにものでもないと『孫子』はいう。

●戦いをしようとするからには、少なくとも八分の勝算を立ててかからなければならない。その程度の勝算が立たなかったら、ひとまず戦いは見合わせて、次のチャンスを待ちながら、他の手段で解決をはかる必要がある。当たって砕けてしまったのでは、何にもならない。

●『孫子』のいう「算」とは、また計算の「算」でもある。つまり、確かな計算のうえに立って行動せよということだ。

●日本人は、ともすれば計算に強い人間を「計算高い」などといって嫌う。しかし、これはおかしい。だいいち、計算に弱かったら、ろくな人生設計もできないではないか。これでは、きびしい現代を生き残ることができないのである。

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